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家族ってね  作者: 宮原叶映
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絋季の心友

今回、長いです。

 紘季の熱も引いた頃。紘季は、外の世界が恐いと思った。両親を失った悲しみから、抜け出せなくなっていた。


 京介たちが用意した、紘季だけの新しい部屋。紘季にとっては、久しぶりの一人部屋だ。藍李たちが生まれる前までは、一人部屋だった。その部屋に、引きこもるようになった。京介は、引きこもり声が出せなくなった紘季に、こう言った。

 

「無理に声を出そうと、焦らなくていいからな。ゆっくりでいいからな。でも、今から言う二つの約束は、絶対守ること。一つ目は、辛くても生きること」

 

 京介はそこまで言うと、鞄の中から小さい箱を取り出して紘季に渡す。

 

「箱を開けてごらん」

 

 紘季はそう言われて、箱を開ける。中に入っていたのは、一つのハンドベルだ。

 

「紘季が、部屋にいるときにな。紘季に声をかけて俺たちが入ろうとしても、紘季からの返事がなかったら分からないから。紘季が、わざわざ部屋の戸を開けず、このベルを鳴らす。はいが、一回。いいえが二回。俺たちと面と向かってるときは、相づちや紙に言葉を書いて会話をしよう。これが、二つ目の約束だ」

 

 紘季は、頷く。

 

「よし! 」

 

 京介は、手を紘季の頭へとのばして頭を撫でる。

 

「あっ、もう一つ約束して欲しい」

 

 紘季は、なんだろうと首をかしげる。

 

「無理に外に出ようとしなくていいから。紘季の部屋でもいい。リビングでもいい。一人じゃなくて、誰かとご飯を食べよう。その方が、ご飯は美味しく感じるからな。それに、藍李たちが心配する」

 

 紘季は涙を流しながら、さっきよりも力強く頷く。こうして京介たちは、紘季と会話をするようになった。リビングで食べないときは、空が紘季の部屋に行って一緒に食べる。

 


 ある金曜日の朝。

 

「紘季くん。起きてる? 」

 

 ドア越しに、空が聞く。

 

リーン

 

「リビングで、食べる? 」

 

リーン

 

「うん。分かった。ゆっくりでいいからおいで」

 

リーン

 

 空は、返事を聞いて、紘季の部屋の前から離れリビングに行った。

 

「空、どうだった? 」

 

 透の質問に空が答える。

 

「こっちに来るって。ゆっくりでいいって言うと、リーンって」

 

「了解ってことだろ」

 

 京介は、透の言葉にホッとした。

 

「きょうくん、ひろにいくる? 」

 

 藍李は、もう元気になっている。


 藍李は、西原兄妹のことをこう呼んでいる。京介をきょうくん。透をとおるくん。空をそらちゃん。京介をきょうくんと呼んでるのは、理由がある。生前めぐみが、京介を京くんと呼んでたからだ

 

「あぁ。紘兄来るよ」

 

 藍李と少し眠たそうにしている海李も、嬉しそうにニコニコしてる。すると、リビングの戸が開く。

 

「「ひろにい!! 」」

 

 紘季は、パジャマのままリビングにやって来た。そんな紘季を見て、空が開口一番に言う。

 

「紘季くん。そろそろ、そのパジャマを洗いたいんだけどいい? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「うん。じゃあ、ご飯の後に出してくれる? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「「ひろにい、こっち! 」」

 

 藍李に、そう言われてた場所に座る。いつも、ご飯を食べるときは、藍李と海李の間で、食べていた。藍李たちは、紘季が食べに来なくても、紘季の食べる場所は必ず開けていた。

 

「はい、紘季くん。食べれるだけでいいからね」

 

 空は、開けてある場所に紘季の朝ごはんを置く。


 紘季は、亡き時雨たちとの朝の様子と、全然違っていることに複雑な感情が襲っていた。


 時雨と一緒に、藍李たちを起こすことも、めぐみの作る朝ごはんも食べることが出来ない。


 もう、朝ごはんを食べているとき、時雨が毎回喉をつまらせるのを見ない。なにもかも違う。


 紘季は、朝ごはんになかなか手をつけれない。


 京介は、朝ごはんを食べ終えて、時計を見た。そして、全く急ぐ様子もなく言う。続けて、透も言う。

 

「ヤベェ。急がないと遅刻する」

 

「俺もだ」

 

「何で、そう言いながら冷静なの? 」

 

 空の問いを無視して、京介は言う。

 

「空、藍李たちを頼む」

 

「ハイハイ。さっさと準備して行ってね、お兄ちゃんたち」

 

 紘季たちからは、死角になるところで、二人の兄に睨めをきかす空だった。毎度、二人の兄はその目に毎度びびる。

 

「ひろにい、あーん」

 

 いきなり藍李がそう言って、紘季の朝ごはんの白ご飯を自分のスプーンですくい、紘季の口に近付ける。


 紘季は驚きながらも、パクッと食べる。紘季は、お礼にと、藍李の頭を撫でる。それに喜ぶ藍李に、負けじと海李も同じことをする。紘季も、同じことをする。


 (なご)やかな時間が流れたが、空と紘季以外は、保育所や仕事に遅刻しそうなので、その時間もすぐに終わった。


 そのあと、京介と透はバタバタと家を飛び出した。京介が、出る直前何かをしていた。

 

「紘季くん、ごはんを食べれそうだったら食べていいし、食べれなかったら、そのままでいいよ。それと食べ終わったら、パジャマを洗面所のとこのかごに入れてね」

 

 紘季は、頷く。

 

「行ってくるからね。すぐに戻るけど、何かあったらすぐに連絡すること」

 

 紘季は、頷く。

 

「「「いってきます!! 」」」

 

 空と藍李と海李は、紘季を残して家を出た。


 一人残された紘季は、白ご飯と卵焼きとリンゴを少しずつ食べ、牛乳を飲んだ。紘季の朝ごはんは、そこで終了した。


 その後の彼の動きは、空に言われたことをしただけだ。部屋に戻り、部屋着に着替えた。洗面所に行き、パジャマをかごにいれた。どこにも行かないが、軽く身支度を整える。


 そういえば、テレビが着いていたのを思い出してリビングに戻る。ニュース番組が流れてた。

 

「続いてのニュースです。今日で、あの事故から一週間が経ちました。信号のない交差点に、子供が飛び出し車を運転して……」

 

「ただいま!紘季くん」

 

 テレビの音だけが、少し開いたリビングのドアから漏れている。空は、その内容にハッとした。玄関からリビングまで続く廊下を思い切り走り、素早くテレビのリモコンを手にとってテレビの電源を切る。

 

「テレビ、消し忘れてごめんね」 

 

 空は、そう言って紘季を抱きしめる。紘季は、涙を流すこともなく呆然とたっていた。

 

「大丈夫だからね」

 

 空は、しばらく紘季を抱きしめる。紘季は、声を出すことはないが、体はガクガク震えていた。


「紘季くん、ソファに座ろう? 」

 

 空は、震える紘季の手を握りって、優しく言う。紘季は、ソファに座ったが震えは止まらない。その背中を優しく撫でる。

 しばらくすると、紘季の震えが止まった。空は、大丈夫かなと思いそっと紘季を見た。


 紘季は、落ち着いた寝息をたてていた。安心したのだろうか。空は動こうと思ったが、紘季にたれ掛かられているので動けなかった。

 

 時刻は、十一時半。


 いつの間にか、空も寝てしまっていた。正しくいうと、爆睡をしていた。空は体に重さを感じないことに、気付き飛び起きる。飛び起きたときに何かがハラリと落ちた。タオルケットだ。紘季が、かけてくれたのだろうが、その本人がリビングにいない。


 すぐに、紘季の部屋に向かう。空は、一度深呼吸をしてから部屋の戸をノックしようとしたが、その手を止めた。


 なぜかというと(わず)かに、声が聞こえたからだ。空は、紘季の声を聞いたことがないが、直感で違うと思った。

 

「紘季くん、いる? 」

 

リーン

 

 中から、ベルの音がした。

 

「入るよ? 」

 

リーン

 

 戸を開けると、紘季と見知らぬ少年がいた。その少年は、紘季と年が変わらないようだ。

 

「すいません。勝手に、部屋に上がってしまって」

 

「紘季くんが、部屋に入れたんでしょ」

 

「はい」

 

「それだったら、いいの。君の名前を教えてくれる? 」

 

「あ、はい。俺の名前は、桃瀬宝(ももせたから)です。紘とは、幼馴染みです。俺のことは、たかと呼んでください。紘には、たかって呼ばれているので」

 

「分かったわ。私の名前は、西原空です。紘季くんたちを引き取った西原京介の妹です。好きに呼んでくれて大丈夫よ」

 

「空さんって、呼びますね」

 

「うん。分かったわ」

 

「今日来たのは、紘の様子をみるのと休んでいる間のプリントやノートのコピーを届けに来たんです。この時間なのは学校が早く終わって、紘に連絡したらいいということだったので。おやすみ中、すみません」

 

「気にしなくて、いいよ。こっちこそ、恥ずかしい姿見せてごめんね。来てくれて、嬉しいよ」


 空が桃瀬宝に対する印象は、真面目でしっかりしているだった。紘季の性格は、京介に聞いてた。だから、似た性格で仲が良いんだと思った。

 

「たかくん。もし、お昼ごはんを食べてなかったら作るよ」

 

「そ、そんな申し訳ないです」

 

「お昼ごはん、食べたの? 」

 

「食べてないです。家にかえっても誰もいないので、このあとコンビニ寄って帰ろうと思っています」

 

「気にしなくていいの。それに、紘季くんもその方が嬉しいと思うよ」

 

「そうですか? 」

 

「ほら、紘季くんを見なさいよ」

 

 空に言われて、たかは紘季を見る。そこには、紘季が、「帰らないで」と紙に書いて、たかに見せつけている。それを見て、たかは参ったなと苦笑いをする。

 

「分かりました。お言葉に甘えます」

 

「うん!出来るのに、時間がかかるけど大丈夫? 」

 

「はい!大丈夫です。その間、紘と勉強します」


「了解!出来たら、呼ぶわね。何かあったらすぐに呼んでね」


 空はドアノブに手をかけようとしたが、それをやめて振り返って言う。


「あっ、何か飲み物いる? 」

 

「お構い無く。大丈夫です。」

 

「そう?紘季くんは、飲み物いる? 」

 

 紘季は頷く。空は、少し強引に言う。

 

「分かったわ。ついでに、たかくんのも入れてくるわね」

 

「ありがとうございます」

 

「あとで、来るわね」

 

 そう言って空は、今度こそ部屋を出て行った。


「紘。空さん、優しそうな人だね」

 

 紘季は、頷く。その表情は柔らかい。

 

「その顔を見て安心したよ」

 

 えっ?と、言う顔をする。

 

「だってさ、紘たちを引き取る人が悪い人だったら、どうしようって不安だったぞ。紘は、俺にとっても大切な家族なんだ。紘が、いやいや引き取られたら、俺がガツンと言わないとって思ったんだ。京介さんのところだから。嫌なことはされないとも思ったけどな。紘は自分の意志で、京介さんのところにいったのか? 」 

 

 紘季は、強く頷く。

 

「良かった。じゃあ、勉強の続きするか? 」

 

 紘季は頷く。ちょうど、そのときにコンコンと、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 

「はい、開けますね」

 

 そう言って、たかはドアを開ける。 

 

「ありがとう。たかくん」

 

 紘季は、急いで机の教科書やノートを片付けようとする。

 

「紘季くん。そんなに、急がなくていいよ」

 

 分かったというように頷く。たかも一緒に片付けた。空は、片付けられた机の上に、飲み物を置く。飲み物と一緒に、小さい和紙に包まれた丸い和三盆も置いた。

 

「私はね、和三盆を食べると気分が落ち着くの。頑張っている二人にも、食べてもらいたいの」

 

「ありがとうございます」

 

 紘季は紙に「ありがとうございます」と書いて、空に見せる。

 

「どういたしまして!あと、二十分から三十分したらお昼ご飯ね」

 

「分かりました」

 

 その後の二人は、飲んだり、和三盆を食べたりしながら、勉強をする。

 

「俺、本当は喉が渇いてたから。一気に飲んじゃった…。空さんに、おかわりをもらいに行こうかな。紘は、いる? 」

 

 紘季のコップを見ると、まだ飲み物が残っていた。

 

「じゃあ、俺だけもらってくるから。今の調子で問題を解いてて。()()()()で、いいからな」

 

 紘季は、頷く。そして、たかは部屋を出て行った。キッチンで三人ぶんの昼御飯を作る空に、たかは話しかけた。

 

「空さん、飲み物のおかわりをいただいていいですか? 」

 

「いいよ」

 

 そう言って、空はたかのコップにおかわりをつぐ。そして、コップをたかに渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 たかは、コップを受け取ったが、動こうとしない。


 空は、最初だけ不思議に思った。あとから、そういうことかと思った。


 空の職業は、売れっ子小説家だ。職業柄、人間観察をしている。たくさん、ドラマを見たり本を読んだりしている。


 それに、三十歳を過ぎた大人だ。年頃の子供が、何を言いたいのか手に取るように分かる。空は、たかが自分から話すのを待つことにした。あえて、違う話をする。

 

「お昼ご飯は、ナポリタンだよ。お口に合うか分からないけどね。あとは、盛り付けとサラダを作るだけかな。さっきも言ったけど。まだできるまで時間があるからね」

 

 空は、「まだできるまで時間があるから」という言葉の裏には、二つの意味が隠されている。

 西原きょうだいでもはや口癖になりつつある「ゆっくりでいいよ」という言葉。焦らずに、自分のタイミングで言ったらいいという想い。

 たかは、なんとなくその言葉の意味を理解して、ゆっくり深呼吸してから。こう話を切り出した。

 

「紘のことなんですけど」

 

「うん」

 

「今の紘のことは、実は京介さんに教えてもらったんです」

 

「えっ?京兄に? 」

 

「はい。何度か、紘と一緒に遊んでもらったことがあるんです。今回のことがあったので心配で…。葬儀のあとに京介さんが、連絡先を教えてくれました。それで、何度かやり取りはしてます。でも、紘に会うまで不安でした。京介さんが、今日来たら?と連絡があったので来ました」

 

「ちょっと、待ってよ。京兄が、今日来たらて連絡が来たのはいつ? 」

 

「今日の朝です」

 

 たかは、そう言って、空にスマホの画面を見せる。

 

『今から、出勤だけど。学校が、終わったら今日来たら?妹の空がいるし、紘季の体調もいいからとのことで。家は、前に伝えたとこで。』

 

 空の反応を見て、たかは、不安そうに聞く。

 

「もしかして、空さんは京介さんから連絡がなかったんですか? 」

 

「そうだよ。今から出勤って……。確か、家を飛び出す前にスマホいじってた。もう、なんで私にすぐ言わないの!京兄のバカ」

 

 

 その頃の京介は、捜査会議中

 

ハクション!

 

 大きなくしゃみをしていた……。そのあとは、言わなくても分かるだろうが言おう。

 

「西原さん、風邪ですか? 」

 

「すいません。誰か俺の噂を言ってるのだと思います。心当たりは、数えられないですが……」

 

 空の叫びは、京介に届いたということだ。

 

 

 空とたかに戻どろう。

 

「すみません」

 

「たかくんは、謝らなくていいよ。うちのバカ兄が、悪いんだから」

 

 たかは、なぜか少しその言葉に安心した。さっきまでと違って、真剣な顔をする。

 

「空さん、あと一つお話をしたいことがあります」 

 

「うん」

 

「紘のご両親の事故についてなんですが。学校である問題が起こっていて……」

 

 たかの話に、考え込む空。京介に、話さなければいけないと思った。

 

「分かったわ。バカ兄に、伝えておくからね。たかくんは、変わらずこれからも遊びに来ていいからね。その方が、私も嬉しい」

 

「そうですか? 」

 

「そうよ」

 

 空は、話しながら盛り付けとサラダを作り終えた。たかは、空が次に何を言うかを察して言う。

 

「紘に、聞いてきますね」

 

「ありがとう」

 

 たかは、紘季の部屋の戸をノックする。

 

「紘。入っていい? 」

 

リーン

 

 たかは、紘季の部屋に入った。紘季は、たかに言われたところをすべてやり終えていた。

 

「紘。もう、こんなに出来るようになったのか!?俺は、なかなか解けなかったこの問題を…」

 

 紘季は、紙にごめんと書く。

 

「謝らなくていいよ」

 

 紘季は、頷く。

 

「紘。昼御飯を食べよう? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「紘季の部屋かリビングのどっちで食べる? 」

 

 紘季は、紙にリビングと書く。

 

「分かった!じゃあ、行こうか」

 

 二人は、リビングに向かう。

 

「紘季くん、ナポリタン好き? 」

 

 紘季は、頷く。そして、机の上を見て少し驚く。ダイニングテーブルの上には、三人ぶんの昼御飯が並べられていたのだ。 空は、紘季がリビングで食べると分かっていた。三人は、席に着き手を合わせる。

 

「「いただきます! 」」

 

 最初は、静かだった。それを破ったのはたかだ。

 

「空さん。気になることがあるのですが、いいですか? 」

 

「うん?いいよ」

 

「小説を書くときの作家名って、本名かペンネームのどっちですか? 」

 

 空は、小説関係のことを聞かれると思ってなかった。少し驚いたものの、真剣にその質問に答える。


「あぁ。それは、半々かな」

 

「半々? 」

 

 と、たかは、首をかしげる。

 

星時空(ほしときそら)っていう、ペンネームだよ」

 

「その由来とかってあるんですか? 」

 

「由来か…。改めて聞かれると照れるね」

 

 空は、お茶を一口飲む。

 

「私が、生まれた時は、星空が綺麗だったんだって、お兄ちゃんたちが言ってたの。とても優しい顔でね。私が生まれて二人は、辛かったって思うんだけどね。私が、小説家になりたいって言ったときも、星空が綺麗だったんだ。二人は、反対することもなく、とても嬉しそうで応援してくれた。そのときのことを忘れてたくなくて、それに空っていう名前が好きだから、そのままにして星時空にしたの」

 

「素敵な由来ですね」

 

「ありがとう!!嬉しいわ。名前っていうものは、たくさんの想いを込めてくれる贈り物で、大切にしないといけないの。どんな人からくれた名前でもね。その人が、いなくなっても名前は残るの。だから、紘季くん、たかくんも自分の名前を大切にして生きるんだよ」

 

「ありがとうございます! 」

 

 紘季は、嬉しそうに頷く。こうして、和やかにお昼ご飯は終わった。

 少ししてから、たかは家に帰ることになった。玄関まで、空と紘季はたかを見送りにいった。

 

「じゃあ、紘。また来るからな!藍ちゃんと海くんに、また遊ぼうって、言ってくれよ」

 

 紘季は、嬉しそうに頷く。でも、少し寂しそうにしている。

 

「いつでもいいから、連絡してくれたらいいからな! 」

 

 紘季は、うんと頷く。

 

「空さん。ごちそうさまでした。とても、美味しかったです」

 

「こちらこそ、来てくれてありがとう」

 

 たかは、玄関の扉を開く。

 

「では、お邪魔しました」

 

 そう言って、たかは玄関の扉を閉じた。

読んでいただきありがとうございます!

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