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家族ってね  作者: 宮原叶映
49/50

真実

長いです。四十九という数字に重点を置いて書いたので。



ヴーヴーヴー

 

 京介のスマホからバイブ音が鳴り響く。

 

「もしもし? 」

 

「京介、少しいいですか? 」

 

「あぁ、いいぞ」

 

「今日の紘季くんに起こったことについて、改めて連絡をと思いまして」

 

「うん」

 

 幸雅は、事細かく起こった出来ことを京介に伝えた。

 

大事(おおごと)になったな」

 

「はい」

 

「幸雅は、別に悪くないからな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「こっちからも報告がある」

 

「何ですか? 」

 

「紘季の声が戻ったんだ」

 

「えっ?!本当ですか? 」

 

「あぁ、悪魔のおかげでな」

 

「悪魔? 」

 

「空好きのお前なら、分かると思うぞ」

 

「なるほど。『他と違う二種の悩み』ですね」

 

「時々、お前が恐くなるわ」

 

「自分からヒントを出したんでしょうが」

 

「まぁな」

 

 幸雅は、彼女の本を全巻持っている。全て初版だ。空と悪魔の単語で正解を導き答えた。

 

「じゃあ、紘季くんの中学時の事故も? 」

 

「たぶん、そうだな。今思えばあの時も、誰もいないのに声は出てないけど話しているようなのを何度か見たんだ」

 

「そうなんですね。明日、学校はお休みですか? 」

 

「あぁ、念のために病院に行こうと思う」

 

「分かりました」

 

「本当は学校に行ってもいいって思ってる。でも、最近色々あったから息抜きが必要だからな」

 

「京介は、明日って非番なんですか?  」

 

「いや、朝から」

 

「透か空に行ってもらうんですか? 」

 

「あぁ、空がなんとか都合がいいって言ってたからな。空の仕事の息抜きもこみで、病院の後にドライブ行くって言ってたな」

 

「そうなんですね」

 

「声が戻ったから、取りあえず一歩前進だな」

 

「本当に良かったです。しかし、油断が出来ません」

 

「あぁ、匠くんたちが引っ越すからな。再会してバタバタだったようだし、もう一度話し合いの場を作る必要がある」

 

「はい」

 

「紘季に全部言わないとな」

 

「難しいですね」

 

「あぁ」

 

「今日はもう遅いので」

 

「あぁ、そうだな。俺から切るな。お休み」

 

「はい、お休みなさい」

 

 京介は、通話を終えると伸びをした。

 

「これからどうしようか」

 

 と、一人呟いた。当たり前だが、誰にも聞かれてない声は思い悩んでいた。

 

 

 誰もが思い悩んでも明日は、生きているみんなに等しく来るもんだ。

 京介は、毎日紘季たちのことで頭がいっぱいだった。いつ真実を言おうかと、それの期限(四十九日)はもうすぐそこまで迫っていた。

 

 紘季たちの両親の死の真実を大人たちは、知っていて遺族たち(紘季と双子)は知らない。後遺症のように心を壊しかけ、両親の死のことを触れられたら涙を流すのに。受け止めれずに嘘だと信じたいのに、日々現実にいないといる悲しみがあるのに。

 

 どんなに言いにくいことでも、それを言ってしまったら相手が傷付いて終りと決めつける。結果が最悪でも言ってしまえばお互いはスッキリするもんだ。

 京介たちは、これが分かっているのに出来ない。情がありすぎるから。相手のことをよく知り、想えば想うほど言えない。


 紘季の声は、元に戻った。心は少しずつ時間をかけて修復に近いことをする。これで一安心と思っていたときに、京介が心配していたことを紘季が聞いてきた。

 

「お母さんが助けた子供は、大丈夫だった? 」

 

 その質問の答えをどう答えたら良いのか分からなかった。普通に「大丈夫、元気だ」と答えるべきなのか、「実は……」と真実を話すべきなのか悩んだ。

 結局出した答えは、「同僚に聞くよ」だった。

 その時の京介の顔を見て、紘季は何を思ったのだろうか。何か勘づいているんでないのか。

 

 考え込む京介を二人のきょうだいが見守っていた。

 

 

 紘季は病院に行った次の日には、普通に学校に通うようになった。もう一度、会わせようと思っていた鍵原(かぎはら)兄弟は、祖父母の家に引っ越していった。

 当然紘季たちが通う学校には、もう現れることはなかった。鍵原匠は、紘季と連絡が取れないようにしていた。

 

 紘季は、高校一年生だ。大人になるまであと四年。それでも、何事でも考えれるようになる。

 もう真実を言ってもいいじゃないか。背負った重荷を下ろさないと、潰れてしまう。

 最愛の人であるめぐみと心友の時雨の死に囚われて、生きて行く人生から京介は楽になりたかった。

 自分が楽になりたいから、真実を言ってもいいのか不安で仕方がない。でも、彼らのために言わないと後悔をすると思った。


 めぐみと時雨は、俺を許してくれるのか。俺が会おう何て言わなかったから、お前らはこの世を去ることは無かった。

 二人を殺したのは、俺のせいと勝手に決めつけ、十字架を背負う俺を怒ってくれるのか?時雨だったら、口悪くて声をあらげて怒鳴り付けてくれるだろう。

 十字架を背負うといいながらも、どこかで救いを求め、そして楽になりたいとも願う俺は心底バカだと自分自身でもそう思った。

 

 鍵原兄弟も、いや兄の匠は、自分たちのせいで紘季の両親の命を奪ったんじゃないかと思っている。毎日のように、ある金曜日の夜の事故の夢を見てしまう。

 彼もまた、十字架を背負い、救われたいくて楽になりたい願う一人だった。

 

 人間誰しも、何かに対して楽になりたいと思う。楽になれないと気付いて、それが過去の存在になってしまうことも忘れてはいけない。


「なぁ、紘季。今度の金曜日の夜に、話したいことがあるけどいいか? 」

 

 と、月曜日の夜になって突然京介が言った。何かを察したかのように、紘季は「うん」と答えた。



 紘季たちが眠りについた頃のこと。京介たちはリビングで話し合いをしていた。

 

「京介、言うのか? 」

 

「一人で真実をヒロロに言える? 」

 

「あぁ」

 

 京介は、机に突っ伏し、両腕に顔を埋めるようにして返事をする。

 

「嘘つけ、言えないだろう」

 

「……」

 

「恐いから逃げて。今まで言い訳して言わなかっただろう」

 

「……」

 

「一人で背負うな。俺たちにまだ言ってないことあるんだろ? 」

 

「ヒロロがまた死のうとするんじゃないかって、心配して言わなかったんでしょ? 」

 

「そうなのか? 」

 

「……」

 

 京介は、何も答えなかった。自分には、大好きな人が遺した忘れ形見の子供たちに出来ること何かと考えていた。

 

「京介。答えなくていいから聞け」

 

「透兄? 」

 

「絋たちをいつまで、ここで育てるかって聞かれたことないけど。勝手に答えるからな」

 

 透は、珍しく真面目顔をして話し始めた。

 

「行きたいとこがあったら進学させる。高校卒業して、ここを出て一人で双子を育てながら仕事をするって言ったら止める。まだ、子供なのにそんなの出来ない。決めつけるのもいけないが、絋のことだ。無理をして、何も言わずに身体を壊して死ぬと思う」

 

「……透兄」

 

 透は、重く残酷なことを言った。それに対して、空は異論をしなかった。彼の拳が震えていたからだ。

 

「それに、金がすごくかかるから空の印税や京介の給料から出したら、進学や双子の養育費に学費にって使いたい放題だ」

 

「「おい! 」」

 

 空と京介は思わずガバッと頭をあげてからの怒りの返事。

 

「透兄は、何で出す気がないの? 」

 

「言ってなかったか?俺は、生活費に食費に三等分だけど家賃を出しているし、もろもろの絋たちの手続きもやってるぞ。一家の大黒柱が、お仕事で忙しいからな。あとは、三人共有の口座からいい感じに出して紘の小遣いの足しにしてる」

 

「あっ、そうか」

 

 空は、気が付いてしまった。実は、透が出来る男だということを。そして、時雨たちの両親や親戚にお金のことを頼んでいないことを思い出した。

 

「それに、高卒でも仕事は大変だったからな。みんなどこそこの有名な大学出身や親のコネがどうかと、陰口とか見下しがすごかったぞ。めっちゃくちゃなことを言ってくるからな。俺が定時でその日の業務が終わって帰ろとした時ににな。まぁ、部署ないで高卒は俺だけだったから標的にされたな」

 

「「えっ!? 」」

 

 京介と空は、その話を初めて聞いたから驚いた。透が苦労していたのは知っていたが、そんなことがあったのは知らなかった。それを笑って話す透にも驚いたが、痛々しさがあった。

 

「大変だっ」

 

「でもさ、秒速で終わらせて言ってきた人の机に書類を叩きつけたりメールを送ってやったりした時のそいつらの顔は面白かったな」


「慰めようと思ったけど。透兄、楽しそうだね」

 

 空は、慰めようとした自分がバカだったと思った。でも、透がしたことは出来る人だからのこそのなせる技だ。

 

「まっ、社長と幹部が丸々変わる事件を起こして、会社の雰囲気とか良くなったから。仕事がやり易くなって、今の責任がある位にもなれた」

 

「えっ、ちょっと待て!? 」

 

「そんなことあったのか? 」

 

 またしても驚く二人に、透は何も言わずにニッコリと笑うだけだった。

 もしも、透が言ったことが真実なら、ニュースや新聞に載る可能がある。そして、透の口振りからして彼が勤める会社はブラックでそれをホワイトにしたと言ってるようでもある。

 それを軽く言える透も透で、敵に回したら怖い存在になったかもしれない。

 

「俺と事故の真実って違うようで同じだ。抱えるものが違っても、最後は楽になれる。最初は、苦しくて辛くて死んでしまおうって想っても、もがいたぶんあとから笑えるんだ」

 

「透兄の真実って? 」

 

「とりあえず、俺の現在までの仕事事情だな」

 

「そうなんだ。今まで言わなかったのは、空たちに心配かけないため? 」

 

「それもあるけど」

 

「あるけど? 」

 

「カッコつけたかったからだ。男は、みんなカッコつけるもんだ~」

 

 と、生き生きと話す。

 

「お前らだって、何度も死を感じたことがあるだろ? 」

 

 そういう透も、京介と一緒に死を感じた数日間を過ごしたことがある。死を一番感じたのは、仕事柄京介だろう。

 

「「うん、ある」」

 

 二人は、答えた。空は、進路や両親の起こした事件で周りからの攻撃で毎日のように悩み苦しんだ。

 だからこそ、紘季が一度死のうとしたことを怒る気になれなかった。悪魔が本人の記憶を奪ったんだったら、こっちからわざわざ言う必要もない。

 

「死の恐怖を体験してるからこそ、紘が無茶したときは必死に止める。そうじゃないと、また大切な人を失うなんてのは、もう嫌だからな」

 

「そうだな」

 

 三人は沈黙し、それぞれの愛用のグラスで喉を潤した。

 

「さなえちゃんがね。この前に会ったときに言ってたの」

 

 そう沈黙を破った空は、さなえの真似をしながら話し出した。

 

『死ってこの世で一番恐ろしいもので、幸福なもので一種の救いなの。大好きな人が亡くなっても、またどこかで誰かにとって大好きな人が生まれる』

 

「その言葉は、すごく重くて恐ろしいかったの。空の中では、一番その事を知ってるのがさなえちゃんだと思うの」

 

「あの子は、旦那さんのことで苦労したからな」

 

「うん」

 

 さなえの旦那は、何年も前に病気で亡くなっている。さなえは彼が亡くなるまで支え続けた。

 空の話を聞いて、京介はまた考えた。もし、真実を話せるなら、背負ったものが軽くなるのだろうか。

 

 

 数日が流れ、金曜日がやって来た。その日は、めぐみと時雨の四十九日だ。法要を一通り済ませ、やがて夜になった。

 

 リビングには、西原きょうだいと紘季と幸雅がダイニングテーブルを囲っていた。藍李と海李は、れんかと一緒に子供部屋で遊んでいる。

 幸雅は紘季の担任でもあるし、時雨やめぐみと親しく京介らも同じ関係で、何かあったときのための中立な立場としてこの場にいてもらった。

 

「紘季、この日に話していいのか迷ったんだ」

 

 と、しばらく沈黙していたのを破ったのは京介だった。

 

「うん。僕は、大丈夫だよ」

 

「何があっても受け入れるか? 」

 

「内容にもよるけど、少しずつは」

 

「それでいい」

 

 京介は、目を閉じて深呼吸をして心を落ち着けた。

 

「あの日、俺がめぐみと時雨をご飯に誘ったんだ。ちょうどその日は非番だったから、いつも花を送ってたのをやめて直接贈ることにした」

 

 京介は、どこか考えていることを整理するように、あの日のことを少しずつ話すことにした。

 

「本当なら、ゆっくりとご飯を食べて、話そうと思っていた。でも、めぐみが「子供たちに晩御飯までに帰るって言ったからそろそろ帰るね」と言い始めた。俺は、ご飯を用意しているなら紘季が温めて藍李と海李と一緒に食べるから大丈夫だろっと言った」

 

 京介は、あの日のことを思い出しながら話す。

 

「そうしたら、時雨が「紘季はテスト期間で無理しないか心配だし、子供たちがご飯を食べる姿が好きだから帰りてぇ」って言うんだ。俺は、元々その事を知ってたから、別れてしまったんだ。俺は、気を付けて帰れよ。帰ったら連絡しろって言うとめぐみが「分かった。京ちゃんもね。またね」って話したのが最期だった」

 

 京介は話ながら、涙を流さないように必死に堪えていた。

 

「コンビニで買い物してたら、電話が鳴って、あれ、もう着いたのかって思ったら安堂さんだった。嫌な予感がした。それが的中して、しばらくその場から動けなくなった。どれぐらいたったのか分からないけど、また電話が鳴った。また安堂さんだった。紘季と電話して、切られたから連れてきて欲しいって頼まれて、二人が事故にあったのは嘘だと思いながら紘季たちを迎えに行った」

 

 京介の話をみんな黙って聞いていた。

 

「紘季たちを病院に連れていって、元々安堂さんから話を聞いて、それも嘘だと思いながら紘季に話した。さっきまで話していためぐみが、もういないのが信じれなかった。時雨と最後に話した時も、姿を見て辛かったけど生きてるのが嬉しかった。でも、見ても分かるぐらいに、弱っていてもう死ぬって感じた」

 

 京介の瞳から、涙がこぼれた。

 

「そのときに、俺が紘季たちを守るって誓った。時雨たちが亡くなったのも、紘季の声が出なくなったのも、俺のせいだと思った」

 

 京介は、もう一度深呼吸をしてハンカチで涙を拭き取った。

 

「事故のことを安堂さんから、教えてもらって自分でも調べた。めぐみが飛び出した子供に気がついて、それを庇ったための正真正銘の事故。でも、何かおかしいって思った。その子供が飛び出した時の様子が気になった。そんなときに、たかくんから一人のクラスメイトを紹介された」

 

「えっ? 」

 

 その事を知らなかった、紘季だけが驚いた。

 

「彼は、めぐみたちの事故現場の近くにいて目撃者でもあった。話を聞いて、何かが繋がった気がした」

 

「それって? 」

 

「ちょっと待って、ちゃんと話すから」

 

「うん」

 

 紘季は、すみませんとみんなに謝って黙った。

 

「鍵原匠とその弟の一颯(いぶき)が、逃げている時に事故が起こった。正確に言うと、二人は虐待を受けていた。死の危険を感じてそこから走って逃げるときに、一颯が飛び出した。車の窓を開けていたから、弟を止めようとした兄の声に気がついためぐみが……これ以上は言わなくていいよな」

 

 紘季は頷き、涙を流した。

 この事故はまるで、鍵原兄弟の二人ぶんの命を死神が斧で刈り取る前に、運命を変えるめぐみとその隣でいた時雨の命を斧で刈り取ったようだった。その事故で失う命は、二人だけだと言っているようでもある。

 

 しばらくの間、その場は沈黙と泣き声とグラスを傾ける音しかしなかった。

 

 れんかは、双子と遊んで風呂に入れて、寝かしつけてからリビングに向かった。本当は双子と遊ぶだけだったが、長くなりそうだから双子と一緒に風呂に入って泊まっていけと透からライミが届いた。

 

 コンコンと、れんかがリビングのドアを叩く。


「れんか、入ってこい」

 

「うん」

 

 中では、紘季が泣いていてみんなで慰めていた。

 

「……ど……したら」

 

「ん?紘季どうした? 」


 紘季の耳を澄まさないと聞こえない声に、京介が気がついた。

 

「どうしたらいいの?お母さんたちの事故って、誰を責めたらいいの。お母さんが悪いの?誰を恨めばいいだんよ。匠たちを恨めばいいの?わかんないよ」

 

 紘季は、今までたまっていたものを心からの叫びを吐き出した。

 

「紘季、落ち着け」

 

「なんで、お母さんたちは死んだの?みんな、僕たちに黙ってたの?なんで?匠が転校したのも、クラスのみんなの接し方も少し変だったのも僕のせいなの? 」

 

「絋、落ち着け」


「紘季!恨むなら俺にしろ」


 紘季は涙でいっぱいにした目で京介を見るが、彼は何か言おうとして止めた。


「僕がダメで心配をかけなかったら、お母さんたちは無理して帰ることも死ぬこともないよね。だから、みんな黙ってたのは、僕のせいでしょ」


「ヒロロ、落ち着こう」


 もう誰が止めても、紘季の口から言葉が溢れて出してしまう。

 

「僕のようなクズは、誰を信用したらいいの?! 」



 紘季は、椅子から立ち上がって部屋を出ていこうとした。

 

「紘季、待て! 」

 

 京介は紘季を呼び止めるが、彼は部屋を出ていった。



 みんなで話し合った結果、中立な立場の幸雅が紘季の部屋に行った。

 

「紘季くん、いますか? 」

 

リーン

 

 と、いつだったか京介があげたハンドベルの音がした。

 

「先生と話しましょう」

 

リーン

 

 と、またハンドベルの音が聞こえた。それを肯定と捉えて幸雅は、紘季の部屋に入ると部屋は、真っ暗だった。

 

「紘季くん、電気をつけてもいいですか? 」

 

リーン

 

「では、電気をつけるので一度、目を閉じて光に慣れたら目を開けてください」

 

リーン

 

 幸雅は、ハンドベルで会話をする紘季のことを気にせずに、部屋の電気をつけた。紘季は、ベッドにいてタオルケットにくるまっていた。

 

「紘季、そのままでいいので僕と話しましょう」

 

リーン

 

 紘季は、手をタオルケットから出して鳴らしているようだ。

 

「僕たちは、紘季くんを騙したわけじゃないです。あなたのことを大切に想ってしたのことが、かえって苦しめてるんですよね」

 

「……」

 

「時雨とめぐみちゃんは、何も悪くないです。匠くんも一颯くんも。紘季くんは、何か原因があって、誰かのせいにしないと、堪えれないですよね」

 

「……」

 

「京介が時雨たちを誘わなければ事故が起こらなかったから恨めって、言われたときに何かを言おうとしたのをやめたのですか?京介のせいだって言えばいいじゃないですか。僕だったら言いますよ」


「……」

 

「誰かを恨めばいい、誰かを責めなければと悩みながらも自分が悪いと言う紘季くんは強いです。一方の京介は、自分を恨み苦しんでいる。匠くんも同じです。でも、それを誰が望んでますか? 」

 

「……僕だって……」

 

「はい」

 

「望んでないよ。分かってる。誰も悪くなって、悪者を見つけるのって、いけないことだって」

 

「はい」

 

「ただ、受け止めたくないって思って……。だってまだお母さんたちが生きてるって思ってしまうんだ」

 

「そうですね。僕もそう思います」

 

 幸雅は、ポケットからハンカチを出し、部屋に置いていたティッシュの箱ごと紘季に渡す。紘季は、瞳から流れた涙を拭く。


「紘季くん、落ち着きましたか? 」


「はい、ありがとうございます」


「お礼を言われることはしていませんよ」


「先生も辛いのにすみません。僕よりも、お父さんたちと付き合いが長いのに」

 

「子供は、考えなくていいんです。付き合いが長いか短いで天秤にかける必要もありません」

 

「はい」

 

「そして、最後にこれだけ言います」 

 

「はい」 

 

「紘季くんは、クズではありません。優しい人です」

 

「ありがとうございます」 

 

 二人は少ししてから、部屋を出てリビングに戻った。

 

「紘季、ご」

 

「京介、待ってください」

 

 幸雅の意図を察した京介は黙った。

 

「紘季くん」

 

 紘季は、頷いた。

 

「みんな、さっきはごめんなさい。僕たちのことを思ってくれたのに、自分のことしか考えてなくて……」

 

「ヒロロは、悪くないからね」

 

「うん」

 

「そうだぞ、紘! 」

 

「紘季、俺たちの優しさが裏目に出ただけだ」

 

「京介の言う通りです」

 

 紘季は、また涙を流した。

 

「いつになるか分からないけど、匠くんたちに会わしてやるからな」

 

「うん、ありがとう」

 

 その後は、もう遅いからとお開きになったのだ。ちなみに、幸雅も西原家に泊まるということにもなった。


 その日の夜に、紘季と藍李と海李は夢の中で時雨とめぐみに会ったことはまた別の話である。

読んでいただきありがとうございます。

死神は、魂を予定した人数分集めればそれでいいのか?




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