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家族ってね  作者: 宮原叶映
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死者を想う気持ち (後編)

 空は、友人の葬儀のために家を出ることを透にライミで伝えた。そのあとすぐに家を出て行った。


 一方その頃、透は双子を保育所に迎えに行った帰りに買い物に行っていた。

 

「海と藍、なに食べたい? 」

 

「うーん? 」

 

 藍李は、悩んでいた。


「ハンバーグ」


 その反対に、海李は決まっていた。

 

「海は、ハンバーグが食べたいんだね? 」

 

「うん! 」

 

 ハンバーグが、よっぽど好きなのか嬉しそうに言う。


「藍は? 」

 

「あいちゃんもハンバーグたべたい! 」

 

 どうやら、藍李もハンバーグが好きみたいだ。目を見たら分かる。


「ご飯の時間遅くなるけど。手作りしようか。手伝ってくれる人はいるか? 」

 

「「はーい! 」」

 

 と、二人は手をあげる。

 

「よし、ハンバーグに決まりだな」

 

「何人ぶん作ろうか……? 」

 

「ろくにん」


 海李は、あまり文章で言わない。しかし、これでもマシな方だ。

 

「海、そうだな。でも、空は用事で外で食べるからな。で、京介はいるときといらんときがあるから。ちょっと、連絡するからお菓子売り場にいてくれるか?すぐ近くにいるから」

 

「うん!! 」

 

 三人は、お菓子売り場に移動をする。透は、京介にライミで連絡をする。

 

「京介、ハンバーグいるか? 」


 すぐに既読が着いた。どうやら、休憩中のようだ。

 

「今日の晩御飯、ハンバーグなのか。空の手作り? 」

 

「葬儀に行っている」

 

「誰の? 」

 

「高校の時の友達だそうだ」

 

「そうか……」

 

「俺と藍と海で作る」

 

「ハンバーグをか? 」

 

「他に何がある? 」

 

「すまん」

 

 京介は、めんどくさいと思ったのかとりあえず謝る。そうすると、向こうは何も言ってこないからだ。

 

「分かればいい」

 

「うん」

 

「で、いるか? 」

 

「今さら、それを聞くか? 」

 

「いるか?いらないか? 」

 

「いる」

 

「五人ぶん用意しとくわ」

 

「待て、紘季は部活で運動して帰るから少し多めに作っとけ。俺は仕事が終わり次第連絡するから、遅くなりそうだったら先に食べろ」

 

「了解」

 

 と、ライミでポチポチとやり取りをした。

 

 三人は、家に帰りにハンバーグを作った。紘季が帰ってきたらご飯を食べることになった。

 時刻は、十九時を過ぎようとしていた。まだ、紘季と京介は帰ってこず連絡もない。

 

「とおるくん」

 

「藍、どうした? 」

 

「ひろにい、かえってくるよね? 」

 

 藍李は、今にも泣き出しそうだ。なぜなら、両親が帰宅時間になっても二度と家に帰ってくることはなかった。

 

「あぁ、帰ってくるよ」

 

 そう言いながらも、双子に気付かれないようにスマホを盗み見る。着信は、何もなかった。

 

ヴーヴーヴー

 

 誰かから電話がかかってきたようだ。スマホのディスプレイを見ると、幸雅の名が表示された。透は、何かに察して双子には遊んでもらって自室に行った。

 

「もしもし? 」

 

「もしもし、僕です」

 

「何のようだ? 」

 

 このタイミングで、幸雅から電話かかってくるということは何か嫌な予感がしていた。


「紘季君のことです」

 

「部活で何かあったのか? 」

 

「何もありません」

 

「はぁ? 」

 

 幸雅の何もないと言うのに、電話をかけるなんてどういうことか意味が分からない。そんな幸雅を置いてけぼりに、幸雅は話を進めた。


「しばらく停学していた生徒がいました。その生徒は、優しい性格をしているのですが、言葉よりも先に手が出てしまいます。今日その生徒が復学して学校に来たので、紘季くんの事情には詳しくありませんでした。放課後のことです。彼は、友人とあることについて会話をしました」

 

『こないだの金曜だっけ、俺の家の近くで事故があったんだ』

 

『あったな。その話はやめろ』

 

『何で? 』

 

『何でも』


『ニュースでもやってたやつだよ。でも、あんなとこで今まで事故ってなかったんだ』

 

『やめろって』

 

『悪い話じゃない。最後まで聞け』

 

『分かった』

 

『この事故で、残された家族が悲しんでいる気持ち分かるから。俺はな、毎日その場所に花をお供えするんだ。まぁ、停学食らって暇だしな』

 

『そうか、確かお前のとこも……』

 

『うん』

 

『なんか、ごめんな』


『謝んなよ』


『うん』


『普通さ、知らない人に花をお供えしないだろ? 』


『そうだな』


『俺は、その場所に亡くなった魂がいて誰に見えないから寂しくて悲しいと思うんだ。生きている人も似たような状況だったら、誰かに会いに来て欲しいんじゃん。その魂が落ち着いたら、供えるの止める。何度もそうして来たんだ』


『うん。お前って、霊感あるもんな』


『あるって言うても、弱いけどな。感じるっていう程度だ』


『それでもすごいよ』


『そうだろ! 』


『でもさ、お前は性格がいいのにすぐ手が出るから惜しいよな』


『うるせぇ』 


「ただそれだけのことを彼らは廊下で話していたんです。しかし運が悪いことに、窓の開いた教室の廊下側で友人たちと話していた紘季くんが聞いてしまいました」

 

「えっ?紘は、大丈夫か? 」

 

「すぐ近くに友人たちがいたので、大きなことにはなりませんでした。少し精神的な発作と涙を流していました。それなのに、紘季くんは必死に教室から出てその生徒を追いかけました。本人は、ありがとうと言いたかったそうです。話せない彼に、その生徒は察してくれたようです」

 

『大丈夫、気にするな。大変だったな。俺も事故で家族を亡くしたから気持ちが分かるんだ。何かあったら言えよ』

 

「と、紘季君に優しく言ってくれました。彼は心が落ち着いたのか、そのまま気絶をしました」

 

「えっ? 」


 まさかの展開に、透は驚いた。

 

「部活には行けずに、先程まで寝ていました。この時間帯と体調面が心配で、一人で帰らすのも……。僕が送ろうと思えば送れるのですが、立場と残業で出来そうにないです」

 

「で、冒頭の迎えに来いだな。分かったけど、すぐにいけないかもな」

 

「それは、どういうことですか? 」

 

「空は葬儀に行っていて、京介はいつ帰ってくるか分からん」

 

「なるほど。では、可能でしたら藍李ちゃんたちを連れてきてください」

 

「分かった。準備したら行くわ」


「了解しました」



「お前に、差し入れでココア持って行ってやるからな」

 

 透はそう言うと、幸雅の返事を待たずに電話を切った。それから家を出る準備して再びリビングに戻る。

 

「二人とも、紘を迎えに行くぞ! 」

 

「「はーい! 」」

 

 三人は、紘季を迎えに学校に行くのであった。

読んでいただきありがとうございます!

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