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家族ってね  作者: 宮原叶映
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距離の縮め方と慣れない寂しさ

今までと違うことをすれば、変化が起きる。

今まであったことが、突然なくなると慣れないのと寂しく感じる。


 紘季の呼び方が変わったある日の月曜日。

 

「透兄、ヒロロは? 」

 

「紘は、まだ部屋じゃないか」

 

「お前ら、早速慣れるために言ってんな」

 

「しょうがないだろ、こっちはお前と違って……」

 

 透は、途中で何て言ったらいいのか分からなくなってしまった。

 

「違って? 」

 

 京介は、わざと問い詰める。

 

「京兄と違って、空たちはヒロロとやっと距離が縮まったの。なれるようにっていうか、言えるようにってイメトレをしてるんよ」

 

 空は、早口の文句のようなたたみかけるように言う。

 

「す、すまん」

 

 

ガチャ

 

「みんな、おはよう!! 」

 

 と、藍李がリビングに入ってきた。西原きょうだいの名前を言うのが面倒くさいのか、まとめるという荒業を出してきた。

 これも、いつも通りで、みんなもわかって挨拶をする。

 一方の海李は、西原きょうだいのひとりひとりのところでペコリとする。朝が弱いので、極端にしゃべらないのだ。

 それを言ったら紘季で、彼の挨拶の仕方は斬新だ。紙に『おはようございます!』というのを書いて西原きょうだいに見せるやり方である。

 

 学校に行けるようになった紘季は、元々の双子の朝の準備の手伝いを再開した。

 空は藍李の着替えを手伝うと言ったが断った。双子も新しい環境になったからなのか、西原家に来てからの朝はスーッと起きれるようになった。ちょっとずつ自分で着替えれるので、手伝いもやることが減った。

 それもあるが、仕事を取られるかもという焦りと同時に、一緒にする人は亡き父親である時雨しかいないという想いもあるのだ。

 一緒にしてくれた時雨の姿がないことに、何度も泣きそうになる。それが慣れずに寂しく思う。



 京介らは食卓を囲むが、まだ食べはじめてはいない。少し雑談を挟んでから食べるのが恒例となっているのだ。



「紘季、今日は部活あるか? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「ヒロロ、藍李ちゃん達の迎えや遊び相手は、透兄がしてくれるからね。空は、締め切りが……ね? 」


「空、俺に聞くな」


「はーい」

 

「そうだぞ紘。久しぶりの部活だからって、時間を気にせずに頑張れよ! 」

 

 紘季は、嬉しそうに頷く。


「あれれ~おかしいぞ? 」

 

 と、藍李は突然普段言わなそうなことを言い始めた。最近好きで見ている名探偵なんのかの主人公の影響を受けたようで、言い方まで真似ていた。

 

「藍李、どうした? 」

 

「そらちゃんととおるくんがへんだよ。ひろにいのよびかたがね。そらちゃんは、ヒロロ。とおるくんは、ひろになってるよ」

 

「おっ、藍李名推理だな! 」

 

「えへへ! 」

 

「なんでなの? 」

 

 という双子の反応がかわいく思った京介は、ニヤッとして透たちに言うのだ。


「二人とも答えてやれ」

 

「何て言ったらいいんだろ?透兄が、教えてくれるよ」

 

「えっ?俺にフルのか。普通」

 

「まぁ、いいじゃん」

 

 透はため息をつくと話し出した。

 

「昨日な、紘と話して決めたんだ」

 

「そうなの? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「ぼくもね」

 

「ん?海李どうした? 」

 

「かえてほしいな」

 

「呼び方を変えてほしいのか? 」

 

「うん」

 

「海って、呼んでいいか? 」

 

「うん! 」

 

「海くんって、呼んでいい? 」

 

「うん! 」

 

「あいちゃんも!! 」

 

「おっと、仲間はずれするところだったな。ごめんな」

 

「じゃあ、何にしようかな? 」


「お前ら、朝ごはん食べながら決めな。じゃないと空以外は遅刻するぞ? 」

 

「ちょっと!京兄その言いかた無いんじゃないん? 」

 

「みんな手をあわせて」

 

「無視する気? 」

 

「事実だ。諦めな」

 

「「「「「いただきます! 」」」」」

 

 朝ごはんを食べながら藍李の呼び方を話した。結局、海李と同じように透からは藍で、空からは藍ちゃんと呼ぶことになった。

 バリエーションが少ない気もするなと思う京介だった。

 

 距離の縮め方には、呼び方を変えるのもひとつの手だ。いきなり変えるものではない。相手の許可を取ってから変える方が距離が縮まったと感じる。

 

「空、紘をいつものとこに送れるか? 」

 

「うん、送れるよ。締め切り前のリフレッシュに、ヒロロを送って行くよ。じゃないとやってられないもんね~」

 

「そのあと、逃亡するなよ? 」

 

「分かってるって! 」

 

「透が、藍李たちの保育所に送っていけよ? 」


「あぁ。藍と海、しばらくは俺が二人の送り迎えするからな」

 

「はーい」

 

 海李は、頷く。

 

「ごちそうさま」

 

 と、京介を筆頭にご飯を食べ終えた一行は、バタバタと慌ただく準備しに行った。

 

 

「行ってくるわ」

 

「行ってらっしゃい!おみやげよろしく! 」

 

「空、覚えてたらなんか買ってくるわ」

 

「了解!気を付けてね」

 

「おう! 」

 

 京介が先に、西原家を出た。

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい!おみやげよろしく! 」 

 

「京介と同じく」 

 

「はーい」

 

「「いってきまーす! 」」

 

「行ってらっしゃい!気を付けてね」

 

「うん! 」

 

 と、透に連れられ藍李と海李も家を出た。

 

「ヒロロ、そろそろ行こうか? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「行ってきます! 」

 

 と、二人は誰もいない室内に向かって言って家を出た。

 

 紘季は、見送ってくれる両親の姿がないのは、まだ当分慣れないなと思ったのだった。

 今回は、会話が多く分かりにくかったかもしれませんね。


 最後の方の空が『行ってらっしゃい。おみやげよろしく』というセリフは、僕の日常でよく言っています。そういう裏話でした。


読んでいただきありがとうございます。

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