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家族ってね  作者: 宮原叶映
34/50

いつものこと

 ある月曜日の学校。テストの返却が始まった。

 

「紘、テストどうだった? 」

 

 たかが、聞いた。

 

「俺も気になる!紘季、頭ええからな。俺は、毎回欠点じゃないかビビってるわ」

 

 と、同中の一人が言った。

 

「お前な。高校で欠点はまずいぞ」

 

 と、同中のもう一人が言った。

 

「じゃあ、そっちはどうなんや? 」

 

「へい。お前のは、どうなん? 」

 

 同中の一人が、自分のテストを渡す。

 

「七十って、すごいわ。俺は、今回頑張ったから欠点取ってなかったわ。よかった」

 

「おい。そっちのも見せろよ。欠点は、とってないしか情報がきてないんだけど」

 

「まぁ、そういうなよ」

 

「それで、紘。テストどうだった? 」

 

 同中二人組を無視して、たかは紘季にもう一度聞いた。

 

 紘季は、テストの解答用紙を見せた。

 

「えっ?満点!すごい! 」

 

「たか、それ本当?見せて! 」

 

「俺も見る! 」

 

 紘季は、たかと同中二人組にぐるりと囲まれた。教科は、国語だ。

 

 

「はい。皆さん、席に着いてください」

 

 幸雅はの呼びかけに席を立っていた生徒は、急いで着席をした。

 

「今回のテストの最高点は、満点です。欠点は、一人もいませんでした。では、答えを黒板に書きます」

 

 幸雅は、黒板に答えを書いていく。紘季自身、テストで満点をとれるとは思ってなかった。

 

 両親の事故後に、一週間引きこもっていた。何もしないよりは、何か紛らわすものがなければ壊れてしまう。

 それが、テスト勉強だった。たかや幸雅が、家に来て勉強をみてくれたおかげもある。

  その後の紘季の返却されたテストは、どれも九十点を越えていた。

 

「紘は、すごいね。今回も学年一位じゃないかな? 」

 

 紘季は、首を傾げる。そうなのかな?と言うように。

 

「絶対そうだよ! 」

 

 と、同中のもう一人が言った。

 

「あれ?あそこに落ち込んでいる人がいるんだけど」

 

 と、たかは同中の一人とソイツに指をさした。

 

「あぁ~。あいつらは、欠点とったんだ」

 

 同中のもう一人が言う。

 

「たか、言うてやんな」


「何も言ってないぞ? 」


「顔が言ってんの」


 たかの表情は、心配というよりもなんで欠点とるの?とバカにしているようだ。

 

「そう? 」

 

「うん」

 

 同中のもう一人と紘季が頷く。

 

「たか、紘季にも言われてるぞ」

 

 たかは、ガクッと落ち込む。

 

 ソイツは紘季の両親の事故のことも関わっているので、色々考えてしまった影響があった。

 同中の一人は、元々頭が悪かった。今回は頑張ったけど、一教科だけ欠点を取った。

 


 

 放課後。

 

「立花。ちょっと、いい? 」

 

 ソイツが、紘季に話しかけた。紘季は、いつものメンバーで、欠点を取った同中の一人を慰めてあげていた。

 

 紘季は、頷いた。

 

「ここで、話しても大丈夫な話題? 」

 

 たかは、真剣な顔をしてソイツに聞く。同中二人組もさっきまでと違って真剣な表情をしていた。


 

「あぁ」

 

「じゃあ、話して」

 

 と、たかが言った。

 

「立花。俺が、お前にサッカーで勝負を挑んだことなんだけど。ごめん、出来んわ」

 

 紘季は、首をかしげた。

 

「提出物をあんま出してなかったし、欠点取ったからな」

 

 紘季は、納得した。

 

「だから、俺が部活出れるようになったら勝負してくれん? 」

 

 紘季は、笑顔で頷いた。

 

「良かった」

 

 ソイツは、安心したようだ。

 

「じゃあ、また明日な」

 

 と、言ってソイツは教室から出ていった。

 

「何、したかったんだろうな? 」

 

 と、同中のもう一人が言った。

 

「それよりさ、俺も欠点取ったから部活出来ない? 」

 

 と、同中の一人が言った。

 

 それに答えようとメモ張に何かを書いた。

 

「一点差で欠点を取ったんだったら。提出物で免れるんじゃないかな? 」

 

 それを読んだ同中の一人。

 

「そうだよ!俺は、提出物をちゃんと出してるから大丈夫だよな? 」

 

 紘季は、頷いた。

 

「教えてくれてありがとうな! 」

 

 紘季は、頷いた。


「お前って、本当に単純だよな」


「君、何か言ったかね? 」


「何も? 」


「とぼけ……」

 

パンッ


 たかが手を叩くと、同中二人組のじゃれあいがピタリと止んだ。



「まぁまあその辺にして、俺たちもそろそろ帰ろ」

 

 

「ご、ごめんな、たか」


「す、すまん。たか」


 紘季には分からないだろうが、たかのニッコリした顔は、幸雅に近いものを感じする。

 その微笑みは、明るいもの以外の感情が出ているのだ。彼の場合は、早く帰りたいがあったに違いがない。

 そして、一同は教室を出たのだった。

 

 

 ソイツは、廊下を歩いた。ふと見ると、ほとんどの生徒が用のない空き教室に電気が着き、しかも教室のドアには隙間があった。ソイツは興味がわき、そっと中を覗く。

 そこには、幸雅と隣のクラスの担任とある人物が話をしていた。

 

「アイツ…… 」

 

 と、ソイツはボソッと言うとその場から離れ帰って行った。



 

 それをたかと同中のもう一人が、トイレの前で見ていた。

 

「何してんだろうな? 」

 

 と、同中のもう一人が言った。


「さぁ、なんだろう」


 と、たかは言った。

 紘季と同中の一人がトイレにいったので、二人は廊下で待っていたのだ。


 

「二人とも、お待たせ!帰ろ! 」

 

「うん。帰ろ」

 

 と、同中のもう一人が言った。

 

「紘、どうした? 」

 

 紘季は、たかをじっと見て何か言いたげにしていた。そして、メモ張とペンを取り出して何かを書いてたかに渡した。


『たか、何かあった?大丈夫?無理するなよ』

 

 たかは、その言葉に驚いた。平然を装っているつもりで、さっきと何か違和感があった。紘季が幼馴染みで心友には、分かるんだと思った。

 

 その理由は、ソイツの表情が苦しそうだったからだ。ソイツの言葉が指しているものが分かっていた。それは、ある人物のことだと思った。ソイツとある人物の事情を知っているのは、この中ではたかだけだった。

 たかは、ソイツのことを毛嫌いしている部分もあるが、憎めないとこもあった。なんだが、たかは辛かった。

 

「ありがとう。大丈夫」

 

 紘季は、頷く。


「なんかあった? 」

 

 と、二人のやり取りに疑問に思った同中の一人が聞く。


「何にもないよ」

 

 と、なぜか同中のもう一人が答えた。実は、たかの変化に気がついていたからだ。

 でも、自分が言ってはいけない気がした。それを紘季が、言ってくれたことにホッとしていた。

 

「何で、お前が言うんだ? 」

 

 と、同中の一人が言った。


「何でだろうね」

 

 と、なぜかたかが言った。

 

「まぁ、いいや」

 

 と、同中の一人が言ったと思ったら、突然廊下を走り出した。


 同中のもう一人は何かに気づく。

 

「この野郎」

 

 と、言ったと思ったら、こっちも走り出す。


 そして、勝負と言わんばかりの走りを両者がし出した。

 誰も走るなら運動場でしろとは、言わなかった。ツッコミ不足だ。


 

「紘、行こうか」

 

 紘季は、頷く。


 しかし、真面目な二人はツッコミも走りもせずに歩いた。


 

「こら!お前ら廊下を走るな!何度言ったら分かるんや! 」

 

 と、廊下の向こうで同中二人組はたまたま歩いていた生徒指導の教師に怒られていたのだった。

 

 二人は、こんなことになるのを予測していたのかもしれない。いや、いつものことだと思ったからだ。

 同中のもう一人がこの野郎と言って走り出した原因が判明した。それは、同中の一人が彼の生徒手帳を盗んだからだ。それが幸雅に伝わり、テストの欠点と一緒に話し合いがあったのは、また別の話。


 そんなこんながあって、四人は学校を後にしたのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!

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