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家族ってね  作者: 宮原叶映
21/50

結局ね

 空の涙や紘季と口を裏合わせをしたおかげで、透とれんかは京介から怒らなかったっていうわけにもいかなかった。


 二人には、一時間の説教タイムが待っていた。昔から変わらない京介の説教は、大人になった今でも背筋が震えるぐらい 恐い。

 〇〇警察署のエースだ。日々、凶悪犯や難事件で培われた睨みとまるで取り調べをされているよう感覚がする言葉の数々……。

 

 その数時間のことだ。時間も時間なので、晩御飯を食べることにした。海李は、さみしがり屋だ。一人でご飯を食べるのを嫌がるので、紘季と藍李は子供部屋でご飯を食べることにした。

 なぜか、大人五人が 食卓を囲っていた。メンバーは、西原きょうだいとれんかと幸雅だ。

 

「何で、お前いるんだっけ? 」

 

 透は、唐突に幸雅に問いかける。

 

「透の記憶力は、大丈夫ですか? 」

 

 幸雅は、軽く透をディスってから話を続ける。

 

「それはですね。僕は、明日から学校に来る紘季くんの様子を見に来ました。宝くんからは様子を聞いていたのですが、自分の目で確かめたかったので」

 

「あぁ、思い出した。じゃなくて、俺をディスルのやめろ」

 

 幸雅は、透を無視して続ける。

 

「あの事も、ありましたので……。少しは、安心しました。宝くんに渡すように頼んだ授業の全てのプリント類を出来ていましたし、紘季くんは頭がいいですから。明日からの授業には問題なのそうです」

 

 あの事とは、ソイツが時雨たちの事故の真実を教室で言いかけたことだ。

 幸雅が心配したのは、紘季の精神面についてである。まだ、紘季の声は出ない。しかし、意思の疎通には問題がなく、思ったよりもしっかりしていた。


 紘季のクラスは、ソイツが問題を起こしてから少しの間不穏な空気はあった。

 だか、幸雅やたかのおかげでそれは次第になくなった。それでも、学校全体は変わっていないなかった。

 

「幸ちゃん、どうぞ」

 

「いつもありがとう、空」

 

 幸雅は、ココアを味わう。西原家には一応ジュースや紅茶もあるが、幸雅は必ずココアを飲む。いつも、空が幸雅が言う前にそれを入れてやる。西原家でコーヒーを飲むのは、透しかいない。つまり、透以外のメンバーは、ほぼ甘党だ。

 しかも透は、コーヒーのこだわり強い。勝手に誰かに 飲まれるのも嫌がるし、誰かにコーヒーをいれることもない。

 

「何で、お前ら昔からそうなんだ? 」

 

 透は、その理由が気になったので唐突に言葉の足りないなり二人に聞いてみた。

  

「「なんとなく」」

 

 と、語彙力の優れている二人はハモって即答してみせた。透は、ひょっとしたら両片想いじゃないかと思った。理由は、それだけじゃないが……。

 

「透、いきなり何を聞いてくるかと思いましたよ。ねぇ、空? 」

 

「そうだね、幸ちゃん。透兄、そんなこと聞いてどうしたの? 」

 

「本当だぞ。大事な話の途中だったのにな? 」

 

 さっきまで、難しい顔をしていた京介までも透を問い詰めてくる。

 

「なんとなく」

 

 空と幸雅と全く同じ回答をする透に、一同は呆れたようにため息をする。

 

「透」

 

「……」

 

「あとで、説教な」

 

「……」

 

 透は、まだ答えない。そんな彼に一撃を食らわすものがいた。

 

「痛い。空、やめろ」

 

 透の足をおもいっきり踏む。

 

「透兄。それ毎回聞いるよね? 」

 

「そうか? 」

 

 透は、とぼける。こうなるとだんだん彼は面倒くさくなる。

 

「話の続きをしますね」

 

 幸雅は、無理やり話を戻した。

 

「クラス事態は問題がありませんが、学校の一部ではあの事を言うものもいます。学校としては、この事を重く受け止めてます。さらに、二次被害にならないようにSNSに投稿しないように強く呼び掛けてます」

 

 幸雅の言う二次被害とは、紘季の心を傷付けることになることや話が大きくならないようにすることなどだ。

 

「実は生徒に呼びかけた方が、もう一人いらっしゃいます」

 

「それって、まさか? 」

 

「さすがですね」

 

 幸雅は、京介の方を見る。

 

「はい、校長です」

 

 幸雅は、一度目を閉じ深呼吸をしてから話し出した。



 校長は、体育館のステージに置かれた演壇で生徒に話しかけた。

 

「世の中には、仲が良かったりそうではなかったりと、様々な家族がいます。言い方が悪いかもしれませんが、ひとりひとり違う人間と暮しているのだから当たり前です」

 

 と、校長は前置きをする。

 

「少し暗い話をします。実は、私の家族もそうでした。父親が酒飲みでして、よく母や兄や私に酔った勢いで暴力を振るってきました。怪我をして学校に行く度に、嫌な顔をされたりいじめられたりもされました」

 

 と、校長は当時を思い出したのか辛い表情をした。

 

「兄は高校に上がるとグレて不良になり荒れて、母親は病気なり入院しました。父親と兄は、殴り合いの喧嘩をして父親が家から出ていったんです。それは近所や学校に広まり、余計に外に出ることが出来なくなりました。そんなときに、担任が言ってくれたのです」

 

 校長は、懐かしむように言う。


『よし。お前の味方は、先生がなる』

 

「そう言ってくれました。そして、こうも言ってました」

 

 校長、ひとりひとり生徒を見る。

 

『なんか辛いことや嫌なことをされたら、こう大声で言ってやればいい』

 

 そこまでいって区切ると、

 

『お前が、同じことをされてもいいんだな。同じことをされても、傷付かない無いんだな』

 

 と、校長は大声を出す。校長以外は、予想してなかったことに驚いた。

 

「驚かしてすみません。当時の私も、同じように驚きました」

 

 校長は、申し訳なさそうに謝る。そして、話を続ける。

 

『そうすれば、相手はビビってしなくなるぞ。先生も昔それやったら効果あったぞ』

 

「その言葉を信じて、勇気を振り絞って学校に行くと、変わらず嫌なことをしてくる人がいたのです。そのため、担任教えられたことを実行すると、最初は驚かれて次には謝られました。やはり効果がありました」

 

 校長は、またひとりひとり生徒を見る。

 

「自分の言った言葉や行動で相手が傷付いたのに、自分が逆の立場なったらどんな気持ちになりますか?文句を言いますか?周りに傷付いてる人がいれば見て見ぬふりをしますか? 」


 校長の言葉は、重い。しかし、どれも大事なことだ。これは、一種のいじめに対する言葉でもある。

 その校長のお話の後から、学校は徐々に元に戻っていったという。幸雅は、校長以外のある人物についての話もしたのだった。

 




 幸雅の話を聞いた一同は、少しの間シーンと静まる。それ破る人物がいた。

 

「幸雅、ありがとう。情報の協力に感謝する」

 

「いえいえ。これは、紘季くんたちの為ですから」

 

 幸雅は、教師の顔をした。幸雅にとっては、たとえ学生時代を共にした亡き仲間の子供であろうとも、紘季のことを一人の生徒だ。自分に出来ることで、彼のために尽くそうと想った。

 

 数時間後、幸雅とれんかは自宅に帰った。リビングには、西原きょうだいしかいない。

 

「透兄」

 

 空の冷たい声が、リビングに響く。

 

「何度言ったら分かるの?やめるって言ってたの、嘘なの?結局、空と幸ちゃんとのことを勘ぐることやめないんだね。空たちは、そんな関係じゃないから! 」

 

 透の返答を聞く前に、いや言いたいことを言って空はリビングから勢いよく出ていった。その後、透は本日二度目の京介による説教を受けるはめになるのだった。


 長い一日が終わり、いよいよ明日から紘季が学校に登校することになる。

読んでいただきありがとうございます。

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