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家族ってね  作者: 宮原叶映
12/50

明日もいきたい!

やっと、今回から本編に戻ります。

 透、れんか、紘季、藍李、海李は、ショッピングモールにいる。

 賑わう店内、どこもかしこも親子連れだ。(はた)から見たら、四人を親子連れだと勘違いされるだろう。つまり、溶け込んでいる。いや、違うことがある。

 それは、透とれんかに対する呼び方だ。父親や母親を意味する呼び方が違う。


 決定付けるのは、二人に少しも似ていないことだ。

 

「とおるくん。きょうは、なにするんだっけ? 」

 

 紘季のに手を繋がれている藍李が聞く。

 

「今日は、紘季くんと藍李ちゃんと海李くんの服を買うよ。他にも、必要な物を買ってからね。お昼ご飯を食べるよ」

 

「ふく!やったー! 」

 

 藍李が喜ぶのには理由がある。立花家に、一度だけ必要なものを取りには行った。何着か衣類は、持ってきてはいる。でも、サイズが合わなのが多くある。れんかと紘季のアドバイスで、双子の服が決めっていった。

 

「本屋があるな。行きたい人、頷いてくれるか? 」

 

 紘季と海李が、頷く。

 

「藍李ちゃんは? 」

 

 れんかが、聞く。

 

「あいちゃんは、あっちにいきたい! 」

 

 あっちというのは、この本屋の隣に文房具屋がある。どうやら、画材をみたいらしい。


 見事に別れた。

 

「じゃあ、藍ちゃん。私と文房具屋さんに行こう? 」

 

「うん! 」

 

 れんかの提案で、男性陣と女性陣で別行動をすることにした。

 

「俺は、海李と絵本コーナーに行ってるよ。紘季は、自由にしていいからな」


 紘季は頷く。


「またあとで」


 と、言って透は海李と絵本コーナーに行った。紘季は、一人になりある場所に向かう。その場所とは、様々な小説の新刊が平積みに陳列しているコーナーだ。


 紘季のお目当ての作家の新刊は、他のに比べて少ない。それは人気ということを現している。


 その小説のタイトルは、『瞳』だ。


 紘季がその小説を手に取り、一度その場から離れる。すると、その小説を台車に乗せて店員がやって来たり店員は、素早く小説を追加して立ち去った。 

 もう一度戻ってみると、かなりの量が積まれていた。それでも、その小説を求める客は多く、瞬く間(またたくま)に減っていく。

 

「あれ?紘? 」

 

 その聞き覚えている声が、聞こえた。そこには、たかがその小説を手に取っていた。

 

「紘も、その本買いに来たのか? 」

 

 紘季は、頷く。

 

「俺もなんだ!実は、あれからな。空さんの小説を買って読んだんだ。そうしたら、ドハマりして、気づけばファンになってた! 」

 

 たかは、少し照れた顔をして言った。

 

「紘季は、元々読んでたんだよな? 」

 

 紘季は、頷く。空の小説を読み始めたのは中学生だった。前回言ったように紘季の声が出なくなったことがあった。


 そのとき、生前時雨が小説を渡した。

 

「紘季、これ読んでみろ。父さんの心友の妹が、書いた本だ。なかなか良い作品だよ。今の紘季を救うと思うんだ」

 

 それから、ずっと読んでいた。


 なぜか、空の小説から勇気をもらう気がするのだ。小説の世界観がリアルに感じ、まるで登場人物になった気分にもなる。

 もし、今の紘季が声が出るとしたら。何時間でも語れるだろう。


 たかは、頷いたときの紘季の顔を見れば、自分よりも小説の大ファンということが改めて分かった。

 いつか、紘季の声が出るときに、二人で語り合いたいと思った。

 

「紘って、空さんにそのこと言ってるのか? 」

 

 紘季は、首をふる。

 

「あっ、言うのが恥ずかしいの? 」

 

 紘季の顔が、少し赤くなる。

 

「言ったらいいのに。空さん、すごく喜んでくれるだろうな! 」

 

 紘季は、少しムッとした顔をする。

 

「ごめん、ごめんな」

 

 紘季は、頷く。

 

「そうだ。紘のおすすめの空さんの小説教えてくれん?あっちに、空さんの小説がズラリと並んでるから」

 

 紘季は、頷く。それから、二人で新刊コーナーの奥にある棚のところに向かう。


 まだ、単行本になっているものもあれば、文庫本になってないものがある。


 それでも、かなりの部数だ。紘季の選んだのは、一冊でそれを渡した。

 

「『明日もいきたい!』か。まだ、明日は読めてないな」

 

『明日もいきたい!』自分の環境が嫌な少女。家、学校は、本当の自分になれない。


 やりたいことをしても、バカにされる。親、友たちも、嫌で孤立をしていく。

 小中高と、いじめられる。何度も、死のうとも思った。明日をいきるのさえ嫌になった。

 でも、出来なかった。それは、彼女に何かを繋ぎ止めるものがあった。

 地元じゃ生きられないと、思った。高校三年だったので、県外の自分に合いそうな大学を受験し合格する。

 そして大学進学のために、地元を離れることになる。


 その場所で出会う友たちや教師、恋人と楽しく充実した生活を送っていた。


 しかし、長く続かなかった…。物語の最後に彼女は、明日もいきたい!と言う。

 そこで物語は、終わる。次のページは、あとがきや解説などに、なっている。

 


「すすめてくれて、ありがとうな!新刊と一緒にこれも、買うよ」

 

 紘季は、頷く。


 『明日いきたい』は、時雨が紘季に渡した空の小説だった。本当に救われた。


 この小説を読むと、時雨のことを想い出して辛くなる。そう思ったから、読めていない。それだけ、思い入れのある作品だ。

 

 二人は再び新刊コーナーの方に戻り、その前にあるレジへと並ぶ。紘季が会計を済まして、レジの外に行く。たかは、先にレジが終わったようだ。


 そこには、既に紘季以外のメンバーが、揃っていた。

 

「紘。これから、みんなでお昼ごはん食べるんだって。俺は、親二人とも家にいないから。また、一緒にお昼ごはん食べるよ」

 

 紘季は、とても嬉しそうに頷く。

 

「大人数には、もってこいのいい店があるから。俺に、着いてこいよ」

 

 透は、みんなをつれてその店に行くのだった。

いつも、読んでいただきありがとうございます!


明日もいきたい!のあらすじの内容は、少し作者の実体験が含まれています。どこかというのは、ご想像までに。


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