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家族ってね  作者: 宮原叶映
10/50

今回は、ショッピングモールに行来ません。

楽しみにしていた方、すみません。

今回と次回は、過去編のような感じのお話です。

 これは時雨とめぐみの事故から三日後の月曜日の話。


 紘季とたかは同じ高校に通い、二人は同じクラスだ。たかは紘季の席が空いてるのを辛そうに、見つめていた。


 紘季とは、中学から一緒だったふたり組の男子が話していた。

 

「最近、紘季来てないよな」

 

「お前、知らないのか? 」

 

「何が? 」

 

「紘季のお父さんとお母さん、あの交差点で事故で亡くなったんだよ」

 

「えっ?何で、お前が知ってんの? 」

 

「ニュースで、やってたぞ。まぁ名前は、でてなかったけどな。母ちゃんが、教えてくれたんた」

 

「俺、見てなかった…」

 

「しょうがないよ。お前、その日熱で休んで、土日も寝込んでたんだろ」

 

「あぁ……。紘季のことだからな。しばらく、休むんだろうな。大丈夫なんかな? 」

 

「大丈夫じゃないだろ。今は、そっとしとこう」

 

「あぁ。そうだな」

 

 その二人に、高校から一緒になった男子が話に入ってきた。

 ソイツは、クラスの嫌われもの。デリカシーのない人だ。

 

「なっ!俺さ、その事故の真実を知ってんだ! 」

 

 その言葉に、たかは耳を傾ける。いや、少し反応した。

 

「はぁ?何言っての? 」

 

「真実って?不幸の事故じゃないのか? 」

 

 二人組の男子は、当然ながら疑いの眼差しを向ける。

 

「違うね!だって、俺見たんだもん! 」

 

 と、大きい声で言い始めた。クラス全員が注目する。

 

「隣のクラスの鍵原(かぎはら)が、あの場所にいたんだよ! 」

 

 クラス全員は、どよめく。

 

「えっ?どういうこと? 」

 

「あの事故って、五歳の子供が飛び出したんでしょ……」


「何言ってのあいつ? 」

 

「でも鍵原って、紘季と仲良かったよな? 」

 

 みんなは口々に言う。

 

「みんな、聞けよ! 」

 

 その言葉に、シーンとなる。そしてソイツは、また大声を出す。

 

「鍵原にはさ」

 

ガラガラ…バンッ!

 

 と、教室の扉の音がソイツの声をかき消した。一斉に、教室の扉を見る。


 そこには、担任の矢野幸雅がいた。彼の登場に、一番安心したのはたかだった。矢野が来なかったら、自分が何をするか分からなかったからだ。

 

「君の声が、廊下まで響いてました。鍵原くんが、いたからどうしたんですか? 」

 

 と、教師の顔を作り言う。矢野の顔と声は、とても怖い。彼は聞いているが、答えさせないような雰囲気を作る。再び教室は、シーンとなる。

 

 その沈黙を破ったのは、ソイツだったが。

 

「だって、アイツが……いや、何でもありません」

 

 さすがのソイツも、大人しくなる。その後、矢野に職員室に連れていかれた。教室は、再びシーンとなる。

 

キーンコーンカーンコーンーキーンコーン……

 

 教室は、三度目シーンとなった教室に、授業の始まりを知らせるチャイムの音が響きわたる。

 

 ガラガラ…バンッ

 

 と、再び教室の扉が開く。矢野ではない、別の先生が教室に入ってきた。

 

「矢野先生が、急遽用事が出来たそうです。ちょうど、僕の授業が遅れていたので、矢野先生と僕の授業を入れ換えました。はい、教科書とノートを出して……」

 

 そのまま授業は進んだが、明らかに教室内のテーションはかなり低い。

 

キーンコーンカーンコーンーキーンコーン…

 

 授業が終わり、休み時間になった。まだ、ソイツは戻ってきてない。


 ソイツは、かなりデリケートな問題を言ったのだから。校長、教頭、担任との話し合いがおかれているのかもしれない。

 

「そういえば、鍵原って今日休んでるだろ」

 

 と、クラスメイトの誰かが言う。その声から、電線するように、また誰かが言う。

 

「アイツに、きょうだいいたっけ?隣のクラスの友たちに、聞くか? 」

 

「もし、きょうだいがいたらさ。どういうことになるの? 」


「鍵原が、目を放した隙に妹か弟かが飛び出したとか? 」


「それだったら、あんなに騒がないだろ」


「じゃあ、もしかして? 」


 みんな、あることないことを言う。

 

 ガタッ!


と、たかは椅子から立ち上がる。

 

「やめてよ。紘の気持ちを考えろよ! 」

 

 たかの叫びに、四度目のシーンとなる。この教室では、今日だけで何度シーンとならないといけないのだろうか。

 

「ごめんな。悪気は、ないんだ」

 

「そうだよな。紘の気持ちを考えないといけないよな」

 

 と、さっき言った誰かが謝る。みんなは、たかが紘季の幼馴染みで心友だということを知っている。

 そして、みんなのために頑張る紘季のことが、好きだった。


 そのためソイツが戻っても、その話はしなくなった。


 このクラスはしなくても、別のクラスがしていた。その原因がやはりある。ソイツが、発言したのが休み時間のことだ。

 他のクラスの人が、混じっていた。その人が、自分のクラスで話す。

 こうして、噂が静かに広まった。そして、決定付けるのがあるにはあった。


 最初は、噂が流れてれても誰も信用は、しなかったのだろう。しかし、ソイツは(さいわ)いに職員室に連れていかれた。


 そうすると噂は、本当なのかもしれないとみんなが思った。

 紘季と鍵原が、ずっと休んでいること。鍵原に弟がいたことだ。


 ニュースでは、なぜ子供が飛び出したのかを調べているという内容が流れている。


 時間も時間なのに、五歳児の子供が一人でいるのはおかしい。


 じゃあ、もしかして?と、みんなが考えるようになった。


 言い方はおかしいが、紘季のクラスを除いて学校中がこの噂について盛り上がっている。

 

 紘季の両親を失った事故のニュースが、一週間たって流れてしまった。


 昼休み。ソイツが、たかに話しかけた。

 

「なぁ。桃瀬」

 

 たかは、無視をした。しかしソイツは、しつこく彼に話しかける。

 

「なぁ!たか!無視すんなよ! 」

 

 たかは、無視をして、椅子から立ち上がる。ソイツがいないかのような素振りで、教室の出入口に向かう。

 

「待てよ!桃瀬! 」

 

 と、ソイツはたかの腕をつかむ。

 

「痛い」

 

 たかは、顔を歪める。

 

「だったら、話を聞けよ!聞いてくれるなら、離すから」

 

 ソイツは月曜日と違って、真剣な顔をしていた。

 

「分かった。場所を移動していいか? 」

 

「あぁ」

 

 二人は、静かな空き教室に移動した。

 

「月曜の時は、ごめん」

 

 ソイツは、いきなり謝る。たかは、訳も分からない。ソイツが、どういう意図をもって、謝っているのか分からなかった。

 

「急に、なに? 」

 

「それは、あのあとクラスのみんなに聞いたんだよ。お前が、立花の幼馴染みで心友って。俺がなんで、あんなことを言ったか分かる? 」

 

 たかは、分からないと首を横に振る。

 

「だって俺、立花と鍵原のことが嫌いだから」

 

「だからって! 」

 

 たかは、拳を握る。ソイツはというと、偉そうに机の上にドカッと座り、たかの目をまっすぐに見て言う。

 

「アイツらが、困ればいいって思ったんだ。アイツら、勉強もサッカーも俺よりうまいし、みんなアイツらにちやほしてんのが、羨ましかったんだ」

 

「だからって!言って良いことと、悪いことがあるだろ! 」

 

「俺が、悪かったんだ。人の悪口を言ってさ、自分は努力しない。俺は、クズだ! 」

 

 そいつは、開き直るように言う。たかは、ソイツに、つかみかかって殴ろうとする。


 でも、寸前のとこで止めた。紘季の悲しむ顔を浮かんだから。拳を下ろす。

 

「殴らないのか? 」

 

「殴らないよ」

 

 と、たかは低い声で言う。

 

「あの事故は、ただの事故じゃないんだ」

 

「前も、似たようなこといってたね。それ、どういうこと?警察に言ったの? 」

 

「質問づめだな」

 

「いいから、早く教えて」

 

「怒るなよ。言うから」

 

 ソイツは事故現場にいないと分からないこと、警察には一部分しか話してないことも語る。

 

 二人しかいない教室がシーンとなる。そこに、たかの声が響く。

 

「今更だけど。なんで、俺に? 」

 

 ソイツは、辛そうな顔をする。

 

「お前が……桃瀬が立花との関係を知ったから。俺の口から、立花に言えないと思った。代わりに、立花に言って欲しいんだ」


 どこか、自分を責めているような表情だ。それは、あのときの京介の顔と同じだった。


「俺があの時止めたら、こんなことにならなかったんじゃないかって」

 

「それは、そうかもしれないけど。仕方が……」

 

「ないじゃない!その言葉で、終わらせたらいけないんだ!お前が、それを言ったらいけないだろ! 」

 

「じゃあ、どう言ったらいいんだよ! 」


 たかの叫び。ソイツ自身も、どう言って欲しいのかも分からない。

 

「ごめん。俺さ、どうしようもないやつだからさ。自分が、どうしたらいいのも分からなくて。ずっと後悔しているんだ。償い方が、分からなくなって。警察に言わなかったのは、警察に信じてもらえないと思ったから。月曜日に、あんなことした本当の理由は、俺を責めて欲しかったからだ。なぁ、俺って無茶苦茶だろ」

 

 ソイツは、クラスの嫌われものだ。でも、紘季の両親の事故で、自分自身を責めている人でもあった。

 

 あの事故は、ただの事故でない。それは確かだ。京介も調べている。それを決定付ける証拠が欲しいのだ。

 

 京介はあの事故の捜査からはずされているが、勝手に調べている。

 

「あぁ、そうだな。じゃあ、助けてやる」

 

「助けてやる? 」

 

「その苦しみから、助けてやる。紘季なら、そうすると思ったから」

 

「お前は、そればっかりだな」

 

 ソイツは、少しだけ表情が柔らかくなった。


「うるさい」

 

「助けてやらないぞ? 」

 

「ごめん」

 

 たかは、京介のことを話した。

 

「その人に、桃瀬が話してくれるってことか? 」

 

「違う」

 

「どういうことだ? 」

 

「お前も話すんだ。俺もできることはするけど。お前が、責任もって言えるように、京介さんに掛け合うってこと」

 

「そうだな。ありがとう」

 

 こうして、たかは、紘季のいる西原家に行ったのだ。

 その後、京介に全てを話しにソイツは警察に行った。

 そこでも、ソイツはもう一度証言をしたのだった。


 京介はその噂で本当に、ただの事故でないという確証を得た。自分で調べるには、限界があった。救ってくれたのは、たかとソイツだった。


 ソイツが、噂になるようなことをしなければ良かったとも思う。

 しかし、しなければ原因が分かる証言は少しはあったが証拠を得られなかった。

 京介は、いくつもの事件事故を担当した。しかし、心友夫婦になると今までと気持ちが違う。

 どうしても、情がはいる。だから、捜査から外されたのだ。


 二人の事故は処理されそうになった。でも、違うと思った。


 鍵原兄弟は、何かを隠している。兄弟だけじゃない。その親たちも何かを隠している。


 証拠はないが、刑事の勘だ。本当に、ただの事故でなかった。原因が原因だけに、京介は心の整理が出来ない。


 それでも、明日を生きなければならない。

読んでいただきありがとうございます!

これからも、読んでいただけるとうれしいです!

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