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現役でダークヒロインになる方法  作者: おでん信用金庫
Episode1 刑法第168条違反
3/6

#3 この決断が4話以降の展開を左右するんだぜ



はい、ということで3話です。2話と3話の間でなんとか返事を用意したので、その返事を転校生のシーリン・ヘジテイトさんにしてみようと思う。



「頭大丈夫?」



結局これに尽きる。転校早々、屋上に生徒を呼び出して『ダークヒロインになりたい』と豪語してきたのだ。頭がおかしいと思うほかない。



「あら、何かおかしいことでも言ったかしら?」



おっと、自覚症状ナシだ。素で今の自分の異常さに気がついていないようだ。あ~あ重病患者が転校してきたよ。ICUに隔離推奨。



「なんでダークヒロインになりたいんだ?」



動機(モチベ)は大事だ。まずはここに至るまでの経緯をはっきりさせないと。



「ダークヒロインになりたいからよ」



『なんで山に登るの?』って言われて『そこに山があるから』って返す登山家の常套句みたいな返しがきた。ダークヒロインになりたい理由は、ダークヒロインになりたいからだそうだ。うん、面倒くせぇなこれ。もう教室帰ろうかな。うん、帰ろう。



「そうか、じゃあ頑張れ少女」



そう言い残し、俺はシーリンに背を向けた。貴重な休み時間をとんだクレイジーサイコパス野郎に費やしてしまった。あ~ぁ、もったいないもったいない。俺が『もったいないばあさん』だったら確実にキレてる。



「待ちなさい」



冷静な声で言うと、シーリンは俺にアルゼンチンバックブリーカーをかけてきた。え、アルゼンチンバックブリーカー?



(いた)



これまでの人生、アルゼンチンバックブリーカーをかけたこともなければ、かけられたこともない。アルゼンチンバックブリーカーとは縁遠い生活を送ってきた俺は、ここで生まれて初めてアルゼンチンバックブリーカーをかけられた。高校の屋上で、それも女子に。



「まだあなたの答えを聞いていないわ」



男子高校生にアルゼンチンバックブリーカーをかけながら、なんでこんな冷静にお話の続きをできるのか不思議だ。筋肉があるようにも思えないし、彼女の怪力はどこからくるのだろうか。う~ん痛い痛い。



「1回放してもらっていいか?」



俺が提案すると、彼女の技をかける力が強まった。暗黙の『ノー』の意思表示だ。果たして俺はアルゼンチンバックブリーカーをかけられるほど罪深いことをしたのだろうか。う~んまいったな、このままじゃ確実に背骨を持って行かれる。仕方無い、これだけは使いたくなかったのだが・・・



「えいっ」



「ぐっ・・・!?」



俺はスタンガンを取り出し、シーリンに食らわせた。ぴったり10万ボルト。ビリビリっと痺れたことにより、アルゼンチンバックブリーカーは解除された。よかった、護身用に持ってて。



「へえ、やるじゃない」



やりました。



「ますます気にいったわ。私に協力しなさい。悪いようにはしないわ」



信用できるか。どうあがいても悪いようにしかしないだろバックブリーカー女。



「じゃあ1つ聞こう。具体的にどう協力すればいいんだ」



一応聞いてみた。予想は『関節技の練習台(モルモット)



「それは、やっていけば分かるわ」



なんだその国会議員・アントニオみたいな理論。行けばわかるさ、とかいう先見性もへったくれもない突撃精神。古き悪しき文化だよそれ。温故知新(リスケ)しろ。



「俺にまったくメリットがなさそうなんだが、その辺はどうなんだ?」



その昔『ご恩と奉公』といってだな、見返りを求めて身を尽くす文化がこの日本にはあったのだ。その概念は今も引き継がれている。今回『シーリンがダークヒロインになるのを手伝う』にあたり、俺に対しどんな『ご恩』があるのかを聞いてみた。



「これじゃあ不満かしら?」



シーリンはそう言って、胸元から一枚の紙切れを取り出した。胸元っていっても、制服の裾から出したわけではなく、俗に言うおっぱいの間から出してきたのだ。不思議とエロさは微塵(みじん)も感じられなかった。



「なんだそれ」



()()()()()とでも言っておこうかしら」



「交渉決裂だ」



よりにもよってこの世でもっとも要らない紙類を『ご恩』に設定された。まともな見返りを期待したのが間違いだった。まぁ所詮こんなもんですわ、えぇ。



「あら、協力してくれないの?」



「まったくの赤の他人に肩を叩かれるほど、俺の肩は疲弊していない。その券はお前の母親にでも渡すんだな」



「ふっ、単純な子ね。かわいい」



心底悪寒(おかん)が走った。サンタさんの正体が自分の父親であるという真実を突きつけられた時ぶりの悪寒だ。なぜ同級生に上から目線で「かわいい」だなんて言われなければならんのだ。



「肩たたき券なんぞのために時間を無駄にするほど、俺は単純じゃないからな」



「誰も()()()()()だなんて断言していないけど?」



そう言ってシーリンは、俺の顔におっぱいの間から出した『肩たたき券』を近づけてきた。ん、あれっ。これ『肩たたき券』じゃねぇな・・・



「見ての通り、5()0()0()0()()()()()()よ。『肩たたき券』はその隠語。ミッションが全て終わったらあなたにプレゼントするわ。だから私に協力してくr」



「俺がお前を立派なダークヒロインにしてやる」



俺は食い気味に承諾した。5000万も貰えるというのに、断る理由などどこにあるというのか。世の中金だ。奉公するには十分すぎる『ご恩』だと、俺は理解した。


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