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第46話「放課後なのじゃ」

 リスタ王国 学府エリア 教授通り ──


 授業の終ったレオンたちは、皆で教授通りに遊びに出掛けることになった。発案者はカミラで、アイシャも是非行ってみたいということになったのだ。


 レオンを中心にシャルロットとカミラが左右で挟み、アイシャとジェニスが後についていく形で始まった散策だったが、アイシャが珍しい物を見るたびにフラフラと動き回るため、結局レオンたちもそれに引っ張られる形になっていた。


「ちょっとアイシャさん!? そんなに動き回ると迷子になってしまいます」


 カミラが動き回るアイシャに向かって叫ぶと、彼女は目を輝かせながら振り返ると


「ごめんなさい。でも……すごく楽しそうなものが沢山あるので!」


 と興味深々に雑貨屋のショーウインドウを眺めている。


「アイシャさん、何か欲しい物でもあったかい?」


 レオンがそう尋ねると、アイシャは微笑みながら答えた。


「いいえ……でも、こんな風に店に並んでるのを見るのは初めてで楽しいわ」

「お店に並んでるのをみたことないって、どんなお嬢様よ」


 カミラが呆れたように言うと、横からジェニスが割り込んできた。


「フェザー家と言えば、大陸有数の大貴族だからね。少々世間知らずでも仕方ないのではないかな?」

「あら、ジェニスさまはアイシャさんの味方みたいね?」


 カミラにからかうように言われたジェニスは、少し慌てながら首を横に振った。


「そ、そんなつもりはないんだけど……」


 そんな話をしている間に、アイシャは次の店に向かってしまっていた。


「ちょっと待っててば!」


 カミラたちは慌ててアイシャを追いかけるのだった。



◇◇◆◇◇



 リスタ王国 教授通り 白毛玉(ラビッツネスト) ──


 アイシャは白毛玉のショーウインドウに、飾られていたドレスを見て目を輝かせると


「素敵なお店ね!」


 と言って店内に入ってしまった。続いてレオンたちも店の中に入っていくと、店内は煌びやかな内装や衣装が飾られていたが、なぜか店員は疲れたような表情をしていた。


「いらっしゃいませ……あら、シャルちゃんじゃない」

「あ、メアリーおば……いたたた」


 メアリーはシャルロットの頭を掴むと、ギリギリと締め上げている。


「お姉さん! それかメアリーさんと呼びなさい」

「いたたた……わかった、わかりました!」


 メアリーがパッと手を離すと、シャルロットは涙目を浮かべている。メアリーはシャルロットと一緒に来たメンバーの中にレオンを見つけた。


「あれ? よく見たらレオン王子じゃない、お久しぶりね」

「お久しぶりです、メアリーさん。皆、こちらはメアリーさん、母様のご友人でよく王城にいらっしゃるんだ」


 レオンがメアリーの紹介をすると、一同は憧れの表情を浮かべていた。メアリーは少し照れながら


「ちょ、そんなに注目されても、ただのお茶飲み友達よ、私は!」

「ところでメアリーお姉ちゃん、なんでそんなに疲れた顔をしてるの?」


 先ほどから気になっていたシャルロットが尋ねると、メアリーは大きくため息をついた。


「はぁ……ほら、この前の学園祭の時に、陛下が突然入学条件の枠組みを広げたでしょ? あれのせいで滑りこみの制服注文が殺到してね。皆で朝から夜中まで何日もかけて制服を作ってたのよ。それから交代で休みを取ってるんだけど、全然疲れが取れなくって……」

「それって……老化? キャァ」


 再び頭を締め付けられて悲鳴を上げるシャルロットだったが、今度はレオンが間に入って何とか諌めた。


「まぁまぁ、メアリーさん」

「まったく……口の利き方には気をつけなさいよね」


 メアリーがシャルロットを解放すると、彼女は涙目を浮かべながら抗議した。


「もうレオンさまの前でやめてよねっ!」

「あらあら、シャルちゃんは乙女ね~……って、そこの貴女! 凄い美人ね」


 ようやくアイシャの存在に気がついたのか、メアリーはジロジロと見定めるようにアイシャを見つめる。


「貴女、ちょっと服を着ていかない?」

「えぇ!?」




 アイシャは、そのまま更衣室の前まで連れて行かれると、メアリーに待ってるように言われてキョロキョロと辺りを窺っている。


 その後、メアリーはいくつかの箱を抱えて戻ってきて


「さぁ、これを着て頂戴!」


 と言いながら、アイシャを更衣室の中に押し込んでしまった。




 しばらくして、アイシャが更衣室から出てくると、淡い色のワンピースを着ており、彼女の整ったプロポーションと顔立ち、綺麗で長い髪にマッチしてアイシャ自体が輝いて見えていた。


「ど、どうでしょうか?」

「いいよ、いいよ! ただでさえ綺麗なのに魅力がグンッと上がったよ。ねぇ、男の子たちもそう思うでしょ?」


 メアリーは問いかけたが、レオンとジェニスはボーっとアイシャを見つめていた。そんな二人の肩にポンッと手を置いて、メアリーはニマニマと笑う。


「ほら、二人とも感想! もう聞くまでもない感じだけどねぇ」

「き……綺麗です」


 レオンとジェニスが見とれながらもそう呟くと、アイシャもさすがに少し照れた表情を浮かべた。それに反発したのがシャルロットとカミラたちである。


「ちょっと、メアリーお姉ちゃん!」

「アイシャさんだけ、ずるいですわ。私たちも着飾りたいですっ!」


 その要望にメアリーはクスッと笑うと、待ってるように伝えると衣装を取りに店の奥へ向かった。


「私たちだって、綺麗な服を着れば!」


 すぐに箱を二つ持ってきたメアリーは、それぞれをシャルロットとカミラに差し出した。二人は我先にと箱を受け取ると更衣室に駆け込むのだった。




 まず出てきたのはシャルロットだった。


 黒と白のノースリーブワンピースにリボンをあしらった、可愛らしい姿をしたシャルロットは恥ずかしそうにレオンたちの前に立つと、スカートを少しだけ持ち上げてポーズを取る。


「ど、どうかな?」


 それを見たレオンは、ウンウンと頷きながらジェニスに尋ねる。


「とても可愛いよね、ジェニス?」

「えっ、あ、うん、そうだね」


 ジェニスは、シャルロットに見とれながら少し顔を赤くして頷く。レオンに褒められたシャルロットは満面の笑みを浮かべると、続くカミラが出てくるのを待った。




 そして、カミラは少し恥ずかしそうに更衣室から出てきた。


 彼女は、ゴシック調の派手な装飾が施された濃い紫の服を着ており、彼女の髪の色とマッチして大人っぽいイメージの中に可愛らしさを演出したものになっていた。


「やっぱり似合ってるわ、貴女はこういうのが合うと思ったのよ!」

「そ、そう? 私ならどんな服でも似合うと思うけど、そうね。この服は気に入ったわ」


 メアリーに褒められて、カミラは満更でもないという顔で上機嫌になりながら、レオンたちの方を見る。


「カミラさんも似合ってますね」

「皆、可愛らしいわ」

「け、結構似合ってるじゃない!」


 そのような賞賛の言葉が贈られると、カミラはにっこりと微笑むのだった。


「さぁさぁ、衣装ならまだまだあるわよ!」


 可愛らしい衣装の女の子たちに、メアリーも楽しくなってきたのか、再びいくつかの箱を持ってきた。


 その後も彼女たちはいくつかの衣装に着替えることになり、ちょっとしたファッションショーのような状態になったが、それぞれ楽しい放課後を過ごしたようだった。





◆◆◆◆◆





 『交代』


 アイシャたちが校舎を出た時、校舎側から彼女を見守っていた人影が一つ増えていた。


「ラッツ、交代よ。皇女殿下の様子はどうだったの?」

「あぁ、マリー。殿下は運動神経がいいようだ。周りの子たちとも馴染んでいるが。あのレオン殿下の周りにいる二人が、牽制しているように見えるね」


 マリーがそちらを見ると、納得したように頷いた。


「一人は知らない子だけど、もう一人はシャルロット嬢ね。確かレオン殿下に好意を抱いているとか」

「なるほどね。まぁ害意はないようなので大丈夫だろう。それじゃ後は頼むよ、マリー」

「えぇ、任せて」


 二人は軽く抱き合うと二言三言交わしてから離れた。そして、ラッツが離れながら


「出来るだけ早く帰るよ」


 と伝えて、その場を後にするのだった。


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