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王様の奴隷  作者: ぷー介さん
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不仲

ちょっと短いかもしれないです。

コンラッドの執務室に向かったエルは思わず『ゲゲッ』と声を漏らしていた。

エルの最近の悩みの種の一つに一人の騎士との関係があった。それは今ちょうどコンラッドがいる執務室にの前に立っている最近護衛になりたての騎士ブルーノの事である。

エルは溜め息を一つ吐いて執務室の扉の前に立った。


「陛下に呼ばれました。ここを通して下さい。」

エルは嫌々ながらも護衛騎士であるブルーノに声をかけた。


しかしブルーノはエルを蔑むように見下し、動かない。それどころが、迷惑だと言わんばかりに、舌打ちをした。


「ったく、ここは子供の遊び場じゃねえんだぞ。遊びたかったら外へでも行ってこい。」


ブルーノはシッシと手をふり、エルを入室させる気は無いようだ。

エルはバカにされている事に苛立ちを感じながらも、固く拳を握りしめ堪えながらもう一度護衛騎士に退くように言った。


「陛下に呼ばれているんです。ふざけてないで通して下さい。」

「陛下がお前のような子供を呼ぶ筈ないだろ。」


もちろん一回で素直に通してくれるとは思っていない。

ブルーノはエルに対してだけこのように意地が悪い。このブルーノという男は、最近メイドのルーに誘いをかけているらしいが、どうも良い返事をもらえないらしく、ルーと仲が良いエルが目障りなのだろうと、ミラが言っていた。つまり、片思いを拗らせた男のつまらない嫉妬なのだろう。


エルはわざとブルーノを馬鹿にするように鼻で嗤った。

「陛下には、貴男みたいな頭が軽い人間では図りきれない、お考えがあるのです。」

「なんだとコラっ!」


エルの挑発にのったブルーノはエルを睨みつけた。

その反応に、エルはもうひと押しだと確信し、口を開いた。


「さっさと退けよ、脳筋が」

「お前っ!さっきからおとなしく聞いてりゃ、調子に乗りやがって!」


エルの言葉に冷静さを欠いたブルーノは思わず剣を振り上げた。

その瞬間、エルは身をかがめると、ブルーノの背後に隠されていた執務室の扉に突進した。

エルはブルーノがカッとなり背後がガラ空きになる瞬間を狙っていたのだ。


振り下ろされるブルーノの剣をヒラリと躱しエルはそのまま執務室に転がるように飛び込んだ。


執務室で転がったエルはすぐさま立ち上がり、空を切りよろめいたブルーノの後ろ姿に中指を立て、執務室の扉を閉めた。




「随分と派手な入室の仕方だな」


エルが振り返ると、コンラッドが書類を眺めながら呆れていた。


「失礼致しました。護衛騎士になかなか扉を開けてもらえませんでしたので。」

「仲良くやっているようで何よりだ」


今のやりとりから、どうしてそんな事言えるのよ!

エルは若干の苛立ちを覚えながらも、一礼してコンラッドに近寄った。


「それで、どのような用件でしょうか。」

「あぁ、別に用というほどの事はないが、元気か?」

「いや、元気かと聞かれましても、毎日会っているではないですか。」

「いやまぁ…そうなんだが…なんというか…」


きっとコンラッドは喧嘩をして気まずいエルと仲直りをしたいのだろうということはエルにもすぐにわかった。

しかし、エルは今回の視察について未だに賛成していない。

そして、これは喧嘩の仲直りといった簡単な話でない。


「用がないのであれば私はもう行きますね。」

エルはため息を吐いて踵を返した。

「待ってくれ!その!昨日は悪かった!」


慌てて発したコンラッドの言葉にエルは足をとめ、振り返った。

そこには申し訳なさそうに佇むコンラッドがいた。

その姿にエルの心にチクリとしたものが刺さったが、エルはそれに気づかないふりをした。


「悪かったというのは、何に対しての謝罪でしょうか?」

「いや、その、昨日は一方的に話をしてしまって…」

「そんな事、別に怒っていないので謝罪の必要もないです。」

エルはコンラッドの言葉を否定すると、再び執務室を出ていこうとした。

しかし、コンラッドはエルが何に対して怒っているのかわからずオロオロとしながらもエルを引き止めるのに必死だ。


「エル!今だって怒っているじゃないか!」

「私が怒ってる?」


エルはコンラッドの言葉に反応し、足を止めた。その反応にコンラッドは必死に言葉を続けた。


「ではなんで怒っているんだ?教えてくれなければ謝罪も出来ない」

「何で怒ってるですって?そんなの昨日話したばかりじゃないですか。今回の視察を取りやめて欲しいだけです。」

「それは無理だ!」


今度はコンラッドがエルの言葉を即座に否定した。

「これからの国の命運が掛かっている。これは決行せねばならない。」

「であれば…」


エルはコンラッドの言葉を聞いて唇を噛み締めた。

不要な争いを止めることは出来ないのであれば。せめて、すぐ側で何か対策は出来ないだろうか。


「であれば、私を補佐として一緒に連れて行ってください。」

「それも出来ない。」


コンラッドの言葉にエルは拳を堅く握りしめた。

今は黙って国王の命に従うことしか出来ない自分に腹が立つ。



しばしの沈黙の後、先に口を開いたのはエルだった。

「視察もする、私が一緒に行くことも禁止。コンラッド様のお考えは私と違うとよぉくわかりました。それでは、やることがありますので、これで失礼致します。」

「ま、まてエル!」


待てと言われても、エルはそのまま足を進めることしか出来なかった。

己は何も出来ない無力な存在だと自覚させられただけだった。


そしてその夜、コンラッドがエルの部屋を訪ねたが、初めてエルは入室を拒否した。

そして、コンラッドが視察で出掛けるまで、エルはコンラッドと顔を合わせることはなかった。

評価してくださった方やブックマークしてくださった方に感謝しかありません。

これを励みに頑張ります( ´ ▽ ` )

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