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王様の奴隷  作者: ぷー介さん
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召集

ずいぶんお待たせいたしました。

「おー、きちんと自主トレしてたな!偉い偉い!」

会議が終わりロジェットが訓練場にくると、訓練場はカオスだった。


「オルァ!覚悟しろ!」

「テメェ!やんのかコラァ」

「いてまうぞワレェ」

「ふっざけんじゃねえぞ!」


訓練場の各地からは怒号のような喧嘩のような、まるで戦場のようだ。

「おーい!集合!!」

ロジェットが大きな声で候補生達に呼び掛けるが、もちろん血気盛んな荒くれもの達の耳には届くはずもなく、乱戦は続いている。どうしてこうなったかというと、エル達の打ち合いを見て、体力をもて余した候補生達がいてもたってもいられなくなったようだ。

あれから、エルは寸でのところでアンソニーをかわして倒し、それを見た他の候補生たちも我先にとエルに戦いを挑み続けた結果、結局エルは戦い続ける羽目になった。そして奇跡的に誰にも倒されずなんとか勝ち抜いている。


「お前ら、自主トレは終わりだぞー集合しろー!」

ロジェットは穏やかに声を掛けるが、誰一人反応を見せない。

なぎ倒された血気盛んな候補生達はまだ血が収まらないのか、一人の相手と終えると、また別の近くの相手と打ち合いを始めるという乱闘騒ぎだ。

そんな候補生たちは目の前の敵しか見えておらず、ロジェットが来た事に一向に気づく者は誰もいない。


「ぶっ潰してやる!」

「調子のるなよ!」




「…。」

全く反応を見せない候補生達を見てヤレヤレと溜め息を吐いたロジェットは首を左右に振りポキポキと音を鳴らすと、深呼吸をした。



「貴様らいい加減しろ!この◯◯◯◯(ピーピーピーピー)野郎ども!誰が俺の命令を無視しろと言った!貴様らはまだ雌豚以下だ!言うこと聞けない奴は□□□□□□□ピーピーピーピーピーピーピー!」


シーン…


ロジェットの教官として有難いお言葉のお陰で、ようやく訓練場は静まり返った。

そしてロジェットは満足したのか、掛け声をかけた。


「よし、集合!」


候補生達は慌ててロジェットの元へ走ると、すぐさま整列した。


「自主トレはうまく行ったようだな。」

うんうん、とロジェットは傷だらけの候補生達の顔を見て満足そうに頷いているが、候補生の中には顔が青い者もいる。恐らく先程のロジェットの怒号もとい有難いお言葉を間近で聞いた者達だろう。

そして、ロジェットはそれに気にせず坦々と話を続けた。


「ここに来るのが遅れたのは、貴様らも既に聞いていると思うが、会議があった。その会議では3日後に陛下が北部に視察に向かわれる。その事についてだ。」


『視察』

きっと昨晩コンラッド様が言ってた事だ。

エルは昨晩の出来事を思い出し気が重くなった。


「そこで、視察だが、我々候補生も荷物番としてついていくことになった。」


ロジェットがそう言うと、候補生達はざわついた。多くの候補生達は騎士団に所属し訓練を始めて約2ヶ月、始めての出兵となるのだ。

候補生のうちから実戦を積めるのは良い経験となる。ロジェットの言葉に候補生達は興味津々だった。

「今回は国境付近、モーガン伯領の視察になる。視察とはいえ、郊外はまだ治安が安定していない。心しておけ。」

「「はい!」」


ロジェットの言葉に候補生達の顔が引き締まる。騎士団に所属しているとはいえ、まだほとんどが10歳から16歳程で、まだ少年達と呼べる年齢だ。

物事がうまく運べば良いけど…。

エルは一人祈った。



「そしたら本日の訓練を始める!訓練場10周!」

ロジェットの掛け声と共にまた今日も過酷な訓練が始まった。




――――――――――


「今日の訓練は以上だ。そしたら、三日後の視察までは訓練は休みとする。十分に鋭気を養っておくように。解散!」

「ありがとうございました!!」



エルは訓練を終え一人王宮へ帰ろうとしたところ、ロジェットが声を掛けてきた。

「エル、そういえば確認したいんだがちょっと良いか?」

「はい」


ロジェットに呼ばれ、エルは駆け足でロジェットのもとへ駆け寄った。

「戻るところ悪かったな。エルは今回の視察には、陛下の従者として付いていく予定とかあるか?もしそれなら隊員の人数報告を変更しておくが」


ロジェットの言葉にエルは辛い訓練で忘れていた現実を思い出した。

そして、今回の視察に着いていけないと思っていたので思わぬ朗報だった。

「いえ、今回は従者としては着いていかないです。フリーです!候補生として一緒に行けます!是非行かせて下さい!」

エルは思わずロジェットに前のめりで返事をした。

「お、おぉぅ。そしたらそのままの人数で報告しておく。帰るところ悪かったな。」


ロジェットと別れを告げ、エルは王宮へと足を進めた。


視察という名の挙兵。私に出来ることは無いかもしれないが、それでも近くにいることで被害を最小限に抑えるような働きをする機会があるかもしれない。


エルは舞い込んできたチャンスを逃さないよう、コンラッドにはなんとしてもバレないよう黙っておこうと決心したのだった。






「エールぅ!お疲れサマ!」


王宮に戻り、使用人の手伝いに来たエルに、ルーが抱きついてきた。

「ルーもお疲れ様。何か手伝う事はあるかい?」

エルは訓練後、機会があれば使用人達の仕事を手伝うようにしている。そしてエルはやんわりと、ルーの絡み付いてきた腕を外した。


「エル、いつもありがとう!でも今日は大丈夫みたいよ。」

「りょーかい!じゃあ私は部屋に戻るよ。」

「あ、そうえいばエルは今度の火曜日は空いてる?ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど」


次の火曜日…

きっと視察からはまだ帰って来れないだろう。

エルは申し訳なさそうにルーに向き合った。


「ごめん、三日後に陛下の視察があって私も同行するから、多分火曜日までには帰って来れないと思う。」

「そっかぁ…残念」

ルーはがっかりして肩を落とした。


「でも、明日はお休み貰えたから、明日はどうだろう?」

「本当に!?嬉しい!じゃあ、明日一緒に買い物に行きましょ!そうとわかれば急いでお休み貰ってくるわね!」


一度は悲しそうな顔をしたルーは、エルの提案に顔を煌めかせて嬉しそうに去っていった。

そんなルーの後ろ姿を見送り、エルは自室に戻ろうと踵を返すと、ちょうどハンクがこちらに来たところだった。


「ちょうど良いところにいましたね、エル。陛下がお呼びです。私は少々用事がありますので、先に一人で行って下さい。」


ハンクの言葉にエルはげんなりした。コンラッドとはあれ以来会っておらず、何を話せば良いのか不安が浮かんでは消えていく。

しかし、王から呼ばれては、断るわけにも行かない。


エルは重い足取りでコンラッドの執務室に向かった。








待っててくださった皆様に感謝です。

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