野口と命の章
妖魔との争いも終焉を迎えた頃に野口と命はかつて命が妖魔に連れ去られた公園に来ていた。
ベンチに腰掛け少しの沈黙が流れた後先に口を開いたのは野口の方だった。
「今日は君に言わなきゃならないことがある」
「・・・はい」
野口の真摯な態度に命も何かを察したように頷いた。
「僕は江戸時代に生まれて無実の罪で殺されて以来妖魔として長いことこの世界をさまよってきた。」
「人間だったころの愛なんてすっかり忘れる程にね」
「だけど君を助けたあの日から僕の中に何かが芽生え始めていた」
「いつもその気持ちは変わらなかったけどそれを言って君を失うのが怖いから、」
「だから言えなかった。」
「だけど今日は言わせて欲しいんだ。僕の役目もそろそろ終わりのようだから。」
「僕はずっと命ちゃんのことが・・、」
「野口さん・・・」
「そういうことは言わない約束です。」
「えっ」
「野口さんも覚の力があるならわかってたはずですよね」
「わかってたって、何を?」
肝心なところで鈍感な野口がそう聞き返すと、
「それは言いませんw私は野口さんの恋人じゃないですから。」
「まあそれはそうだけど・・・・???」
「そうだ、これ、野口さんにあげます。」
そういって命はお守りを渡した。
「あ、ありがと。」
野口はそういってお守りを受け取ると、
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。・・・また何処かで会おう。」
「はーいw」
2人は思い思いのことを考えながら帰り道を歩いていった。
(きっとこのお守りは命ちゃんの心なんだ)
(命ちゃんは言葉じゃなくて心をそのまま渡してくれた)
―――――野口がお守りの中身を開けてみるとそこには
「野口さんありがとう」
と書かれたおみくじが入っていた。
野口はその時はじめて命も自分のことを好きだったと気付いたのだった。(おしまい)