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第一章 野口

野口親生のぐちちかおはある日突然何かの間違いで人の頭上にともし火が点いて見えるようになってしまった。

初めは何が起こったのかまるで分らなかった。暫くするとこれがオカルト話でよくある”人の余命が見える目”

なのだろうかと考えるようになった。

そしてそれを裏付ける出来事が野口の目の前で起こってしまう。


その日野口は大学へ行くため朝の通学路を歩いていた。

信号を待っている野口のすぐ真横に小学生の女の子が立っていた。

野口は何気なくその子を一瞥する。

このくらいの年の子なら煌々と光っているはずのともし火が何故か今にも消えそうなくらい弱っていた。

野口は身の毛もよだつ悪寒がした。


「危ないッ!!」

信号が青に替わり女の子が歩き出した瞬間反射的に野口はその子を抱えて歩道に倒れ込んでいた。

野口はダンプカーが突っ込んで来る直前すれすれで女の子を助けることができた。


「大丈夫!?」と野口は慌てて女の子に怪我はないか確認する。


幸いどこも負傷していなかったものの

女の子はきょとんとした顔で放心状態になっていた。



数年後、野口はその時の彼女の呆然とした表情の意味を知ることになる。


野口が無事社会人となり数年前の出来事も忘れかけていた頃「その子」は現れた。


その子は高校の制服姿で野口に向かって深々と礼をすると

「野口親男さん。初めまして・・・・じゃないですよね」

と言って微笑んだが野口がなんのことやらと解せない顔をしているのを見て


「数年前にダンプに轢かれそうになった時助けてくれましたよね」

「私あの時のことはっきり覚えています」


ここでようやく野口が「ああ・・君はあの時の・・!」と口を開く。


野口がそのことを忘れかけていたのには理由があった。

人の頭上にみえていたともし火があの日以来嘘のように見えなくなったのだ。

野口はすっかり普通の人間として社会に溶け込んでいた。


――――この子と再会するが来るまでは。


彼女はすがるような目つきで野口に言った。

「明日、野口さんの身に何かが起こります。」


「えっ」

突然の警告とも言えるような言葉に野口は唖然として聞き返す。

「それってどういうこと・・?」


「これ以上は言えないんです。すいません」

彼女は申し訳なさそうに謝罪の意を表す。


その後、野口は何とも言えない気持ちのまま家に帰り、

取りあえず疲れたので今日はもう寝ようと思い

寝室にある鏡で自分の顔を確認するとある異変が起こっていることに気付いた。


数年前のあの日を境に見えなくなったはずの火の玉があろうことが自分の頭上に写っていたのである。


しかもその火は弱々しく今にも消えてしまいそうなのだ。


野口は昼間あの子に言われた言葉を思い出す。


明日、”野口さんの身に何かが起こります”


(もしかしてあの子は―――


僕の死期が近いことを知っていたのか!?)


野口はあまりのショックに一睡も出来ないまま次の日を迎えた。


今日が人生最後の日だと思うと食事がのどを通らなかった。


野口は無表情なままあの子は何故僕の死期を予知出来たのだろうと考えた。


そう思うとやはり彼女にも火の玉がみえるのだろうと考えるのが自然だった。


しかし腑に落ちない点がある。彼女はあの時「これ以上は言えない」といった

僕が自分が死ぬと知ってショックを受けるのを心配してそういったのだろうか?


それとも・・・・・・・・・


野口は取りあえず会社を休み散歩に出かけることにした。


これは最後の日くらい自由に過ごしてもいいだろうという半ば諦め気味の発想であった。


その辺をぶらぶらしていると突然遠くの方から呼ぶ声がした。

「野口さん!!」

声の主は数年前野口が助けた少女だった。


「昨日はすいません」

「あ、あの・・今日は全てお話しようと思って来たんです」


野口は公園のベンチに座り、隣に座った女の子の話に聞き入った。

彼女の頭上にみえるともし火はあの時とは違って存分に長生きするほどの火力を保っていた。


彼女は自分に予知能力があり数年前のあの日自分が死ぬことを予知していたと話した。

しかしあの日野口が自分を助けるということまでは予知していなかったことも話した。


「私はあの時諦めていたんです」

「自分が死ぬと分かっていても運命は変えられないのだと思ってました」


「でもそうじゃなかった。あの時、野口さんが助けてくれて本当にびっくりしました」


「それと同時に、自分の予知が100%全てが分かるものではないということも、分かったんです。」


「昨日全てを言えなかったのは私の私情で未来を改変してはいけないと考えたからなんです・・

でも野口さんは命の恩人だから。。どうしても助けたくて」


野口はどこか腑に落ちない表情で

「ところで・・君の予知では僕はどんな死に方をすることになってるんだ?」

と尋ねる。

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