同情と優しさと憑依と
前回の続き のチェンジ視点、言葉の統一が一部乱れておりますが
なんとなく 伝われば幸いです。
森の奥の小川で寂しそうに物思いにふけるジークが居た。
ボクの頭の中に聞こえる声が昨日アドバイスしてくれた時の様に
ギュッとしてあげれば少しは安らいでくれるだろう、そう思い近づこうとした中
『待って下さい、一人にしてあげた方がよいかもしれません』
(……そうなの?)
疑問に思いつつも仕方なく様子を見ることになった。
ジークは小川の水を飲んだ。
見ているとこっちも飲みたくなってきた。
「んっ……」
暫く見ていると、ジークは余計に不安になっているように伺えた。
やがて両手と両膝を地面についた。
その時だった。
『ジークを楽にさせたいですか?』
(そりゃ……ペットだし)
いつもと声質が僅かに違う気がした。
でもジークを心配している様子だったから不信には思わなかった。
『少しだけ体を私に委ねてくれませんか』
(へぇ……君ってそういうことまで出来るんだね)
『お褒めにあずかり光栄です、では……』
(うん)
『お待ちくださいっ!! 委ねては駄目です』
「へっ……?」
思わず声が出た、そして、ほとんど間もなく聞いた心の中に聞こえる声は確かに全然別物だった。
……。
『……この時をどれほど待ったときか……ぐふふ……』
(……あれ……身体が……キャンセル出来ない!?)
『っ……自己防衛、インテンション発動します。 自動スキルのため発動まで五分お待ちください』
(インテンション?)
『乗っ取られた精神を自己回復しますが、発動が間に合わなかったのでAUTOのため少し時間がかかります、その間少しでも自我を保って下さい』
(ぇ……? わかった)
「……誰か……俺を……嬲り殺して……」
『何も警戒することはない、死にたがっている奴を殺してやるだけだ、間違ったことではない、そうだろう?』
(そう……なのか?)
よくわからないがジークが死にたがっているのは本当らしい。
この謎の意識というか声に体をゆだねても別に大丈夫じゃないのか?
そう思った時だった。
右手が熱いほどに温かくなり魔気が動き何かが生成されるのを感じ取った。
『だ、ダメです、言葉を真に受けないで、乗っ取られてしまいます!』
『所で、貴方はジークのこと恨んでませんか? どうやら大事なご主人様と逸れさせられたようですが』
(……)
『言葉に耳を貸さないで! 気をしっかり持って』
(……ぐっ……)
気にしちゃダメと言われると何故か気にしてしまう。
確かにジークが居なければ今頃ご主人様とカルラと楽しく……。
『そうだろう? ジークは迷惑な存在だ、その迷惑な存在が死を望んでいる』
(……)
『しかし貴方はジークを多少なり愛している、殺す以外に助ける方法だって!』
問いかけられるたびに体の自由が奪われていく、気が付けば左手も小さく詠唱しはじめていた。
右手は、火傷しそうなぐらい膨大なマナを消費し何やら太い矢の様なものを作っているようだった。
「あっ、嗚呼……殺して……償わせて……俺が悪かった……レックも俺が殺したようなもんだ」
『ほら、死にたがってる、死を望んでいるのだから殺してあげれば良いじゃないか』
『……』
(……)
そして、熱いほどに魔気を凝縮させた矢を遠投のやり投げ要領で握り腕を振り上げる。
ジークは大事なペットだ。
ジークを多少なり愛している。
でもジークが居なければご主人様と離れることはなかった。
ジークは邪魔ものだ。
ジークは死を望んでいる。
やることは……つまり……。
(……分カッタ……)
「……分カッタ……」
……完全に乗っ取られた瞬間であった。
いつもの声も聞こえなくなった。
そして、矢を思いっきり投げつける。
「……へっ……」
ジークが振り向くよりも早く
『プスッ』
「ヴへッ……!!」
見事に背中から胸部を貫いたようだった。
『ジークを殺してあげよう? ね? 治すのも無理だよ、痛いの可愛そうじゃん?』
(……嗚呼、うん……)
死にたがっている人を殺してあげるのは優しさなのだろうか?
でも、死にかけの生き物が足掻くみたいに、ジークも何か足掻こうとしていた。
「ウッ……」
急に動きが止まった。 やっぱり死にたいのだろうか?
体の自由は効かないしどうすればいいのか分からない。
そう思った時だった。
今度は、左手の平を辺りに水をまき散らすみたいに振ると
四本の小さい矢がジークの両手目がけて飛んで行った。
『プスッ、プスッ、プス、プスッ』
左手と右手の甲を貫き、更なる激痛と同時にディスペルの効果か、魔気がかき消され。
更には、右手と左手の影に矢が刺さっていた。
(それた二本の矢は何? 外れただけ?)
気になって問いかける。
『影縫いをさせてもらいました、早くとどめを刺しに行きましょう』
疑問には答えてくれた。 悪い人じゃないかもしれない。
ジークが痛みに悶えながらこちらを振り向いた。
……。
(……)
複雑な気分だった。
笑顔のジークと重なると自分が何をやっているのか分からなくなった。
いつもの声に救ってもらえたら、もう少し体を動かせるかもしれないけども……。
『貴方はご主人と逸れさせたジークが憎いでしょう?』
(……嗚呼、そういえば憎い……でもジークは大事……)
『だったら望んでいる通り殺して差し上げましょう。』
ゆっくりと歩み近寄っていく。
ジークの顔がだんだん恐怖に染まるが、どこか寂しそうな一面も僅かにある気がした。
(アノネ、じーく、おいらヤッパリ御主人様ニ危害ヲ加エタ、君ヲ許セナイ……)
「アノネ、じーく、おいらヤッパリ御主人様ニ危害ヲ加エタ、君ヲ許セナイ……」
(でも、大好きだし、短い間楽しかったよ)
伝えたかった本心、伝えれば安心してくれるような気がした。お別れになるのは寂しいけど……。
「……」
しかし、その言葉を発してはくれなかった。
『怯えていますが大丈夫です、本望通り殺してあげるだけですから、彼のためなのです』
(……アノサ、セメテ安心サセテアゲテヨ、怯エテルヨ?)
彼のためなら安心する今の一言を伝えてほしい。憎んでるけどそれと同じぐらい大好きだって。
その問いかけに反応はない。
再び詠唱を始める。本能的に何を作っているのかは思考の共有と感覚によりわかる。
今度はどうやら少し大きめのナイフを作っているみたいだった。
『やっと殺せる……ウヘ……ウヘヘ……惨殺してやりたいけどよぉ、早めに片付けないと制御が解けるみたいだしよ……』
(……)
ようやく事態を把握する、ジークを恨む思念の塊にどうやら体を乗っ取られたようだった。
「オ・ヤ・ス・ミ……」
(ヤメロ!)
……
ゆっくりと近づいていく。
五メートル程あった距離は、徐々に詰められ、もう半メートルに満たない距離まで詰めてきた。
ジークは、痛みと出血でぐったりとしていた。
(ヤメロ、ヤメロ、殺シタクナイ、殺シタクナイ……)
先ほどの矢より何倍も太い魔法のナイフを持ってどこかに狙いを定めているようだった。
怖くて、見たくない現実で目を閉じたかった。
しかし、目を閉じようにも、視界も制御され、見たくないのに見せられていた。
そして……。
……。
グシャリッ……。
気のせいか目に映る光景が歪んだ気がした。
そして、ナイフは左わき腹を貫いていた。
とんでもないことをしたことを叫んでしまいたいが声は出なかった。
出せないのだ。
(……殺すのなんて救済じゃない、ボクはジークを助けたい……。本当は優しいジークを)
そんな時だった。
「レックゥ……チェンジ……ありがと……」
仲良くなって初めて呼び捨てで呼んでくれた。
辛くて、悲しくて、気が付けば視界がぼやけていた。
間違ったことをしたのに、何故お礼を言われたのか分からなかった。
可能なら今すぐ治療したい、抱きしめたい。
(助けて……)
体の自由は効かなくても涙はずっとこぼれていた。
ジークの意識が薄れゆくのを本能で感じた。
(助けてよ…………ボクの体返して!!)
「五月蠅いな、狙いが外れたんだ、確実に死んだら返してやるよ」
『……後二分お待ちください』
(二分?…… そんなに待ったらジーク死んじゃうよ!!)
『大丈夫です』
(何を根拠に!……)
不満をぶつけようとしたその時だった。
バシャリと水しぶきがかかった。
水温は多分20度~30度だと思われるが、その水がかかった分がほんのり温かかった。
優しく包み込まれるようなそんな感覚だった。
「な、何者だ!?」
自分の意思とは関係なく水をかけられた方向を見る。
そこに居たのは……
「……幽霊だか思念だかに名乗る名前はないね、ただ一言言うなら、ジークは私が死なせないから安心して、チェンジ」
(カルラ!!)
次回はいよいよ最難関の戦闘描写……? たった2~3分間ですが 少しでもハラハラさせられるような内容になるよう頑張ります!




