ユージとフクロウと
筆の調子がすこぶる良い。
毎回宣伝お疲れ様です! と言われそうですが
男が書いた真面目BL小説『それが故に君が好きで』を宜しくお願いします。
ではでは、いよいよカルラさんの心境後編ですぞっ!
最後まで見守ってやって下さい!
……ユージ……。
真っ暗闇の中私は感傷に浸る。
私は、魔物が嫌いだ。
それでも……それをひっくり返すぐらいユージが好きだ。
初めて出来た友達で……初めて出来た……。
その感傷に浸るのを邪魔する何者かの気配が感じられた。 今は洞窟中部ぐらいだろうか?
水採取のクエストだろうか?
「はぁ……面倒、早く帰ってくれるといいな」
ため息が出て苛立った、でも、それは、一瞬のことだった。
やがて近づいてくる気配は、何かを呼びながらこちらにむかっていた。
その声は、苛立ちの象徴フクロウだった。
「……ねぇー? 居ないのかな? ご飯持ってきたんだけどー……」
「……?」
神聖な洞窟だと昨日ギルド(支部)で確認しただろう? ここに魔物は居ないんだぞ?アホなのか?アイツは
とりあえず、ステルス上級の魔法を唱え、様子を見ることにした。
「いたら返事して!」
(魔物は誰もいないっつーの)
それとも冒険者でも探しているのか? その冒険者にご飯? 転生者如きが?
意味がわからない、 苛立ちを通り越して呆れの感情になった。
でも、その馬鹿っぽさが、初対面のユージと重なった。
私は、隠れたまま様子をうかがうことにした。
照光石を使うフクロウもまた、最初の頃のユージと重なってしまった。
そして、案の定フクロウは奇妙な行動にでた。
「会いたかったなぁ……置いとけば帰って食べに来るかな?」
と言って、転生者からしたらけして安くない干し肉を2枚、笹の皮で包まれたままおいたのだ。
私は、あらゆる可能性を考えながら、フクロウを監視した。
泉の水を飲んで、あまりの美味しさにか喜ぶフクロウに、私もつられて、クスっと笑い声が漏れた。
そして、備えた干し肉に一例をしてフクロウはその場を去ろうとした。
やはり、何かが居たのか、何かにあったのか、どちらかは可能性としてあるようだ。
だから私は、切れ味の悪いナイフを持ち、フクロウに問いかけると同時に
ナイフを首元に突きつけたのだ。
「動くな、貴様、ここで何を見た? いや 何にあった?」
「へっ……」
「か、カルラさん? い、いつから?」
……はっと我に返る、切れ味が悪いナイフとはいえ、首もとを傷つけてしまうことに変わりはない。
慌てて、しまってから改めてフクロウに問いかける。
「……動くなはやりすぎたか、すまん、で、オマエは何を見た?」
「え……?」
何かを誤魔化そうと必死に考えるフクロウ、そして、フクロウの持っていた照光石がテカテカしはじめた。
しかたなく私は、光の魔法を唱え、光体を手の上に召喚した。
その様子に、フクロウは、状況を忘れ、食い入るように見入っていた。
それから、問かけ直すと、フクロウは、どこから見ていたかを三度聞いてきたので
私はしぶしぶこたえることにした。
言動がオカシイ理由として、干し肉を置いて帰ろうとしたことをといつめ
ギクリと目線をそらすフクロウだった。
それから、お互い物を言わず、2分ほど沈黙の時間が過ぎていった。
しびれを切らし沈黙を破ったのは私だった。
「フクロウ、どうしても言えないのか?」
……その問いかけにフクロウは、寂しそうに、あの日のユージの様に一言発した。
その一言は、完全にユージと重なってしまった。
「カ、カルラさんは……沢山の魔物を殺してきたんだよね?……」
「……ぁ……ぁっ……」
その発言の意味は、今の私には考える術はなかった。
それは、ユージと出会って日が浅く、討伐クエストを受けようとした時だった。
それまで討伐クエストはそれなりに数をこなしていた。
採取クエストより報酬がいいし、何より経験値としても効率がいいからだ。
「一緒に頑張ろうよ」そう上機嫌に問いかけようとした。
あの時の想像がまさに実現するような気がして嬉しかった。
「カルラさん、ヒールするからちょっとの間待ってて!」
「分かったユージ、時間稼ぐわ!」
みたいな、ようやく冒険者らしいことが出来るかな
そう思ったのだが、私のテンションとは打って変わって、元気のないユージがそこにはいた。
「カ、カルラさんは……沢山の魔物を殺してきたんだね?……」
「……へっ?……」
それからだった、ユージが争いを好まない平和主義者だということと、争いをなくし魔物と共存する世界を
ちっぽけでもいいから作りたいと夢を聞いた。
馬鹿げているかに思えたのだが、ユージの顔を見ていると、そんな否定的なことを言えなかった。
ユージは魔物との共存を目指しているのだ。
大事なパートナーがそれを目指すなら、私もそれを目指さないといけない。
魔物を殺しちゃダメというのは凄く制限があるが
ここ数日、ユージと冒険して本当に楽しかった。
そして、ユージの決意は固いものだった。
そして、そういうのも悪くないかもと説得される自分が居た。
「うん、分かった、ユージが居る限り魔物を殺さないよ!」
「本当? あ、ありがとう」
その時のユージの笑顔が、ほんの少しだけ、銀貨をプレゼントしたあの時のフクロウと似ていた。
「ウッ……ウッ……」
こいつはユージではないのは分かっている、ユージはあの日死んだ。
だから私は殺戮者になるのだ。
でも、フクロウはユージと同じ綺麗な目をしている。
そして、こんな時に、暇な時に1度だけ、途中までやった女性の一人エッチの刺激がジワリジワリと、局部から、全身に広
がった。
違う! こいつはユージじゃない……目はユージと似ているかもしれないが
ユージじゃない、散れ! 散れ! 雑念散れっ!
今スグ殺したい。 そしたら今までの私に戻れる。そんな気さえする。
そうだ、殺して、処分して、この村から去ろう。
……。
そう思った時、脳裏に浮かんだのは、ギルド支部の受付嬢とモンロウだった。
もし、殺したら、蔑まれるだろうか?
その思いが、コンマ五秒さえあれば殺せる、私を混乱させている張本人を殺すことを躊躇わせてくれた。
わかんない、ユージ教えてよ……。
「だ、大丈夫?」
ユージ?…… 一瞬ユージの声かと思った。
でもそれは、ぼやけた視界に映るフクロウで
その次に発せられた言葉で、私は戦意を喪失した。
「……ごめん! 変なこと言った?……えーと……」
なんで謝るの?貴方は悪くない……。
でも、謝ったのはユージではなく、フクロウだった。
そっか、そっくりまではないが、声質までユージに似ていたのか……。
「えっと……えっと……」
慌てるフクロウ、まるで自分が悪いことをしたかのように
悪いのはどう考えても私だ、殺そうとまで思っていたのだから
そして、ユージが死んでから、目の前で命を絶っていく、奪ってしまった魔物たちが走馬灯のように一瞬で頭をよぎった。
苦しそうにうめいたり、泣きわめきながら死んで行ったり
どうして私はあんなに冷酷なことが出来たのだろう?
『グェッ……クッショォ、クッッショォォ……』
記憶に新しいゴブリンの断末魔、脳内に鮮明に響く。
今本当に悪いことをしてしまったということに気づく。
もう私には謝ることしかできなかった。
フクロウ(ユージ)にどんなに思われも、ユージにちょっとでも許してもらえるならと……。
「ごめんなさい……ごめんなさい……いっぱい……いっぱい殺しちゃった……約束破っちゃった……ごめんなさい……ごめん
なさい」
フクロウ宛ではなく、ユージ宛に言った言葉、『ごめんね』ではなく『ごめんなさい』が何度も言葉として出てきた。
手遅れなのもわかってるし、ユージが知ったら私に対して絶望すると思う。
それでも今は、『ごめんなさい』としか言えなかった。
そして、何度も謝ってからようやく……。
「……ごめんね……ユージ……ゥグッ……グッ……」
視界は涙でぼやけて、もうフクロウをユージとしか思えなかった。
フクロウ、ごめんね……蔑んだって、皆に言いふらしたっていい、それだけ私は重罪を犯してしまったのだから。
何も言わず、フクロウ(ユージ)は私を抱きしめてくれた。
それは、あったかく、気持よく思わず声が漏れた。
「んっ……」
優しくしてもらう資格なんて私にはないのに、でも抗う力もないし、フクロウの優しさを受け入れたくてしょうがなかった
。
そしてフクロウ(ユージ)から帰ってきた言葉は私を罰するものでも、蔑むものでもなく。
「大丈夫……大丈夫だから」
フクロウは、ビクビクしながら私を抱きしめてくれていた。
願わくば、髪の毛や背中を優しく撫でて欲しかったが、今のフクロウにはそれが手一杯のようだった。
そして、今まで抑えていた気持ちがそっと口から漏れた。
「ねぇ……ユージ……」
「……」
間を空けるが、フクロウは、返事をしてくれなかった、それでも抑えていた気持ちは、もう止まらなかった。
「ずっと好きだったんだよ?」
「……」
数秒沈黙になった。
それでも
「……ありがとう」
フクロウは、ユージは私を受け入れてくれた。
受け入れてくれて私は、嬉しくて、幸せでしかたなかった。
そして、体が初めて女の子になっている感覚を感じた。
フクロウになら……ユージになら……どうされても良いと……。
だから、疼く体で声が漏れそうなのを堪えながら私は言った。
「……いっぱい叱ってね……でも、ユージといるなら誰も殺さないから……本当だよ?」
言い終わってから、フクロウの、ユージの顔を見た。
「……うん」
その言葉だけで私は満足だった。
そして、ユージが死んでから、味わったことのない安息感で
私は意識が朦朧としていることに気づいた。
それでも、最後に言いたかった。
「ユージ……大好き……」
……
「うん」という返事は貰えただろうか?
わがままを言えばその返事を聞くまで気を失いたくなかったのだが
私は、数年ぶりに安息感に浸り、いい夢を見れた。
フクロウが……ユージが……大好きだ。
リア充爆は…… 末永く幸せにな!
とイイたくなるようなぐらい 少しは心理描写さえたかなと思います。
余裕があれば カルラがユージを好きになった話とかも書きたいのですが
まだもう一人の主役が出てきてないので
とりあえず シナリオ進行を優先させてもらいます!