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SeaSideStory  作者: 結城ゆき
第二章
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第二章(1)

八月二日



 夏休みが始まり、あっという間に一週間が経った。

 俺はと言うと出された宿題をちょこちょこ消化し、二度、渚に勉強を見てもらっていた。

 渚の進路についての相談はまだ出来ていないが……。

 俺の方はサッカー推薦の夢はすぱっと諦め、徐々に受験モードに脳味噌のギアを入れ替え始めたのだが、未だにローのまま二速にすら入らずじまいである。

 そして今現在の時刻は六時を回った所。

 寝ぼけ眼を擦りながら覚醒しない脳を呼び覚ますように朝のコーヒーを入れる。

 普段なら当然ベッドで安眠を貪っている時間なのだが今日は少し違う。

 母方の実家に出かけると言う予定があったのだ。

 予定は二泊三日、親父は仕事があるので母さんと二人きりでの小旅行になる。

 以前その実家に行った時の事を思い出した所、小学校に入ったばかりの頃だったようだ。

 遠い親戚が亡くなり葬式のような記憶がかすかに存在する。

 ……めっちゃ暇でふらふらうろついていた記憶しかないが。

 などと記憶の深い底にある断片を引っ張り出してる内に、脳も半覚醒してきた、後は母さんの支度が終わるのをじっと待つとしよう。

 実家まで車で二時間くらいで着くらしいが、夏休みだし道も混んでいるだろうし、予定通りとはいかないだろう。

 ぼーっと椅子に座り、またうとうとし掛けた所で母さんの支度が整ったようだ。

 俺は結構な量の荷物を車に詰め込むと助手席で待つ。

 ……この時間でもエアコンの利いてない車内はあちぃ。

 キーを預かっていたのでエアコンを点けて、携帯に目をやる。



――新着メール一件。



 渚からだった、昨日は今日の為に早く寝てしまっていたので気付かなかったんだな。

 時刻は十一時半に着てたみたいだ。



――明日早いって言ってたからもう寝ちゃってるかな? 浩人がこっちに戻ってきたらパパ達に相談してみようと思うの、だから一緒に居てほしいなって。

そうそう、お母さんの実家だったよね? せっかくの夏休みなんだし、楽しんできてね。あ、後お土産忘れないでね!(笑)――



 お土産か、まぁ何か適当に選んで買っていくか。

 返事は後で着いた頃に送ればいいな、まだ朝も早いし。

「お待たせ、それじゃあ出発しましょ」



 走り出した車はすぐ近くのインターチェンジから高速へ。

 夏休みの混雑を予想していたがそんなに道路が混む事もなく、サービスエリアで1回の休憩を挟みほぼ予定通りの時刻に目的地へ到着した。

「すぅ……はぁ」



 山に囲まれ長閑な町並みは、普段住んでいる場所とは空気が違う。

 近くには果樹園があり、小川がせせらいでいる。

 不思議だな……周りに囲まれた山の根元は水没し水の中に、そして穏やかな流れのこの小川も、人工的に元の町を模倣して作られた物だと言う事。という事は下界には同じ小川が水の底にあるって言う事なのか。

 待てよ、水の中って事はそれはもう小川ではなく、小川の跡に水が流れている、と言う事か? なんだか頭が痛くなりそうだったので俺はそこで考えるのをやめた。

「ほら浩人荷物運ぶの手伝ってー」

「ああ、うん今行く」

 母さんに呼ばれ車から荷物を下ろし、お世話になる家のおばあさんに挨拶をする。

 大きくなったわねぇ等とテンプレ内容な会話をその場の流れで交わした。

 母さんは集まっていた他の親戚のおじさんやおばさんと仲むつまじ気に話している。

 俺はと言うとぼーっとそこら中に生えたクローバーの中から、四つ葉をを探していた。

 ……暗いな俺。

 その時遠くから母さんの声が聞こえた。

「浩人ー、ゆうくんと遊んであげてー」

 ゆう君って誰だ? きょとんとした俺の元へ、玄関からサッカーボールを両手に抱え走ってくる一人の男の子が居た。

「おにいちゃんサッカーやってるんでしょう? おばちゃんから聞いたよ! サッカー教えてよ!」

「ん? ああ、いいぜ、ちょっとまってな」



 持ってきたトレシューに履き替えてる間、軽くゆう君と話をした所、小学校四年生で町内のクラブチームに入ってるらしい。

 一番可愛い年頃じゃないか、もう少し経つと生意気で可愛気もなくなるんだよなぁ……と、自分を振り返ってみた。

 近くに丁度いい芝生の原っぱがあると言うので、二人でそこに移動し、軽くストレッチをした後、パス回しやシュートの練習をした。

 ここ数週間ボールに触れていなかったが、身体に染みついた動きはそれくらいのブランク、へでもなかった。


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