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SeaSideStory  作者: 結城ゆき
第六章
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第六章(1)

「要さん、俺……強くなりたいです。今日みたいな事があっても、空の事を守れるくらいに……だから俺の事、強くしてください!」

 俺は今日起こった事を事細かく要さんに説明した。相手が能力者である事。どんな能力を使ってくるか。それに対して自分が何を出来たのか。その上で俺が求めてる強さとは何なのか。

「ふーむ……強くね。まぁ僕も専門家だから能力については教えてあげる事くらいは出来るよ。でもね君みたいな一般人が強さを求めるのは余りお勧めできないなあ」

「……でも俺、強くならないと……もう今日みたいな思いはしたくないんです」

「君は兵士ではない、学生だろう? 例え君が強くなったとしよう。それが原因で危険な事に巻き込まれるのだとしたら? 君はまだ若い。そんな危険な道にわざわざ進む必要はないと思うよ」

「俺は……俺は、空の事を守りたいです。この考えだけは……曲げられません」

「うーむ……ちょっと失礼」

 そう言うと要さんはデバイスでどこかへ電話をかけ始めた。

「――ああ、もしもし僕だけど。ちょっと頼みたい事があってね。一人面倒を見てほしい子が居るんだが……。ああ、大丈夫かい? そうか、なら早速明日から頼むよ。ああ。わかった。それじゃあよろしく頼むね」

「あ、あの……?」

「ああ、君が望むものが手に入るかはわからないが、一人心当たりがあってね。明日から来てくれる事になったから」

 状況が呑み込めなかったが会話の内容からして、誰かを俺の為に呼んでくれたのだろう。

「すいません……ありがとうございます。俺やれる事をやりたいんです」

「ハハハ。いやあ、本当に君は真っすぐだね。僕も若い頃を思い出すよ。君にとっては辛い事になるかもしれない。それだけは覚悟しておいてくれよ」

「はい! 俺頑張ります。空の為にも……自分の為にも」

 それから俺たちは空の作ってくれた夕飯を食べた。その後俺は疲れが溜まっていたのかベッドに横になると朝まで寝てしまっていた。

 軽く朝食を済ませ、要さんの知り合いを待っていると、その人はやってきた。

「やあやあ悪いね。急に呼んでしまって」

「気にすんなって、俺とお前の仲だろ? はっはっは」

 その人は軽く百九十センチメートルを超える身長にがっしりとた体系のいかにもな感じの人だった。

「お、君が要の言っていた子かい?」

「あ、はい。えっと俺、楠 浩人といいます。よろしくお願いします」

「おいおい、そんなにかしこまらないでくれよ。俺は相沢 弘樹だ。よろしくな」

 相沢さんは俺の肩をぽんぽん叩いてくる。身体もさることながら手もめちゃくちゃでかい。この人に教わったら本当に強くなれる、そんな気がした。

「ここのフロアじゃ狭いだろう、屋上を使ってくれよ。飯は出来たら呼びに行くから。弘樹、後は任せるよ」

「おーっし、早速だが行くとするかー!」

 俺は相沢さんに連れられ早速屋上へと場所を変える。相沢さんは大きなリュックを背負い段ボールを抱えているが、一体中には何が入っているんだろうか。

「さってと、実はよー俺、五日後から仕事が入っちまっててな、あんまり時間が取れないんだわ。それでも大丈夫か?」

「教えていただけるだけでありがたいですよ。俺……強くなりたいんです」

「おうおう、それなんだがな。漠然に強くなりたいって言っても色々あるもんだよな。浩人くんだっけか、君はどう強くなりたいんだ?」

 俺は昨日の戦闘を思い出した。俺が武器として扱ったのは空から渡された氷の剣。今後も空と一緒に行動するとしたらやはり剣技を教えてもらうべきだろう。

「あの俺、剣での戦闘技術を教えてほしいんです」

「剣、かあ……俺は銃が専門なんだよな。まあ剣も使えない事はないが、剣の種類とか何がいいんだ?」

「剣の種類……えーと……多分普通の剣です。少し長い」

 俺がそう伝えると相沢さんは持ってきた段ボール箱の中をごそごそと漁っている。そして中から取り出した鞘の付いた剣を手渡してきた。

「その剣は模造刀だが、稽古する分には十分だろう。もし銃を使いたくなったらすぐに言ってくれよ! どんな技術でも仕込んでやるぜ! はっはっは」

 ……なんだか面白い人だな。そんなこんなで俺と相沢さんの剣術訓練が始まった。まずは剣の持ち方構え方から。そして素振りだ。俺は言われた通りにひたすら剣を振った。そして動きを頭に叩き込む」

「はっ! はぁっ!」

「ほらもっと踏み込むんだ!」

 何度も剣を振って行くうちに自然と身体が動きを覚え始めた。最初はふらついて真っすぐに振れなかったのが徐々に形になって行くのが自分でもわかる。

「よーし、少し休むか。ほれ」

 俺は相沢さんから水のペットボトルを受け取ると一気に呷った。真夏の太陽の日差しは今日も燦々と降り注ぎ、全身から汗が噴き出していた。ゴクゴクと喉に落ちていく水が全身に染みわたるような感覚に襲われる。

「ふはあぁ……水うめえ……」

「素振りは大分形になってきたな! その形を忘れるなよ。きっちり覚え込むまで毎日欠かさずやるんだぞ」

「はい!」

 初日はひたすら剣の扱い方を学ぶだけで終了した。相沢さんの稽古はサッカー部の練習の何倍もきつかった……。初日でこれだからな、今後はもっときつくなるんだろう。覚悟しておかないとな。稽古が終わった後俺はその場にぶっ倒れてしまった。

「はぁ……はぁ……」

「おいおい大丈夫かあ? この程度でへこたれちまったら身体が持たんぞ?」

「うわああ!? だ、大丈夫です、全然っ!」

 相沢さんは頭から水をじゃぶじゃぶと浴びせてきた。びっしょびしょの頭を犬みたいにブンブン振り回してると、要さんがやってきた。

「お、特訓は終わったかい? もう飯の準備が出来たんだが」

「おうおう、丁度終わった所だぜ、俺もう腹減っちまってよー、よーし浩人起きろ! 飯だ飯!」

「う、うっす」

 俺はくたくたの身体を無理矢理起こし、疲労で食欲のない身体に飯を流し込みそのままシャワーを浴びて死んだように眠りについた。

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