夢のなかで
偶然?必然?最近よくそういう出来事に遭遇する。示し合わせたようになにかがカチリ、とはまってゆく。
私は起きて支度をしていた。普段はつけないようにしている香水は、個人的に気に入っていて気合を入れるための手段のひとつだ。
ふと、ベッドの下にきらめくものを見つけた。寝る前にはなにもなかったはずなのに。
覗き込むとそれは手鏡で、手に取ってみるとみるみるうちに私は小さくなってしまった。童話みたいだ。
そう、これは夢だ。
今は手鏡にすっぽり全身が映しだせてしまう。途端に部屋が広く大きく感じる。こうしてみると、かわいいと言って集めていた様々なグッズやぬいぐるみが、自分と同じかそれ以上の質量で、見下ろしている。
キッチンつきのワンルームが別世界のようだ。私は面白がる。しかしそれを許さなかったのは、回収間近のゴミ袋の山である。ちいさくなってしまった分、嗅覚は増したようだ。そこはそのままでもよかったのに。
夢のなかでも真面目な部分が抜けない自分にわらってしまう。とても臆病なはずなのに。
もうそこまでするんだったら、いっそ会社に休みの連絡を入れることにしよう。そう思って、ベッドまでスーツ姿でよじのぼり、汗だくでスマホをいじる。音ゲーをやってる気分である。画面が大きい。繋げると、何やら怪しげな画面が出てきて、吸い込まれてしまった。
はっ、と目を覚ました時見えたのは、天井だ。またこれも夢ではないのかとどきどきしながら、何事も起こらないことを確認し、支度をした。
身に着けた香水は、やっぱり、よい香りがした。