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神々の黄昏へと至る聖戦  作者: ray
2 始まった聖戦
9/9

 本編ともいえるものが始まります。

 予定ではけっこう長くなる予定なので気長に見ていただけるとうれしいです。


 これより始まるものこそ本当の聖戦。

 半端者は愛のために、流浪人は自由のために、求道者は安息のために、偽悪者は平和のために、支配者は誇りのために、探求者は取り戻すために、監視人は秩序のために、その力をかけてしのぎを削る。


 ―――善を望みつつ悪を為す。悪こそが善を引き起こすものだと信じて……。

 勝利の栄光は誰にこそふさわしいのか、それは誰にも分からない。






「―――さあ、聖戦を始めよう。

 もう後悔はない。これで世界が救われるか、滅びるか、神の裁定を見ようじゃないか!!!」


 この台詞とともに、アッシュはまるで自分を縛るものが無くなっていくような感覚を覚えた。

 それは身体的なものではない。精神的なものだ。

 ―――彼は抑えてきた。

 善悪という基準によって制限されるこの思いを、この考えを。

 偽善では人を救えない。偽善で救えるのは自身の正義感だけだ。

 偽善で救えないならば、偽悪を持ってみんなを救う。

 悪と言われることが本当の意味で人にとって害しかないかといわれれば、そうでもない。

 悪人は早々に死ぬべきだし、善人はその苦労に見合うだけの幸せを手にしなければ世の中は不公平である。

 だがそれでいい。公平とは目指す地点であり、人では届かない地点である。

 彼にとって公平というのはありえないもの、よく言われる“みんな最後には死ぬということだけが平等だ”というものもあるが、大きく違う。

 生まれてから死ぬまでの期間が違う。生まれた瞬間に死ぬ命と、百年を越して生きた命、同じかと問われれば違うだろう。

 ―――故に、この世に平等といわれるものはない。時でさえ、速度の元には不平等に成り下がる。

 平和を謳い、現状を何も見ずに媚びへつらい、手遅れになってから対策本部を設置し、攻められてから守り、平等という蜜を吸わせながら裏で不平等という毒を飲ませ続け、それが露見したときに民衆を纏め上げるだけの器も無い。

 そんなものは認めない。後始末ができないのにやりたいほうだいするのはまさしく幼稚な子供の行動。国のトップがやる行動ではない。民衆がまとまらないのならば、それによって全体に不利益が生じるのであれば、全てに対する悪を用意し、その悪に立ち向かうという共通の命題を用意して民衆を統制し、その悪を用意し続けることで対抗する善を強く大きく纏め上げる。

 ―――そのためならば、自分の名誉も何も要らない。この身はただ全てのもののために絶対悪として君臨し続けよう。



 歪みきったその思想を真に否定することのできるものは恐らく少ないだろう。

 違うからという理由で否定するのは否定になっていない、ただの拒否だ。理由が伴わない拒否はただの“わがまま”でしかない。

 ―――そう、この思想は歪んでいる。だが、それを説明するときに絶対に“今の常識ではやってはいけないものだから”といった理由が登場するのは考えるまでも無い。

 与えられた価値観を持ってこれを否定するのは簡単だ。『それは今の常識では考えられないことだ』といえばいい。『わざわざ悪を増やす行動はよくない。それは悪を容認する言い訳にしかならない』などでもいいだろう。だが、あくまでもそれは大前提に“悪を撲滅することができる”というものがつく。

 わざわざ言う必要もないだろうから省くが、悪と言うものがなくなるはずが無い。人が善性のみで存在できるはずが無い。故にその前提は破綻している。よって教育によって教え込まれた価値観は大きく間違っている。ならば今まで与えられてきた常識も疑うべきだろう。

 殺し、盗み、犯す。何故いけないのか、それを考えるべきだ。また、それを完全に否定していいのかも考えるべきだ。だが誰も考えない。考える必要はないし、考えるまでも無いからだ。全ては価値観によって邪魔された人の惰性の賜物だ。

 だが、この責任は全てこの世の中にある。

 だからこそ、その幾重にも重ねた価値観という鎧を脱ぎ、その中にある本当に正しいと思うことのみを選択して着なければならない。余計な装飾などいらない。重いだけの部分もいらない。

 ―――装う無かれ、本当にそれは汝の信念か?




 地に落ちた覇龍も後数分したら“停止”が解けてしまうだろう。そうしたらまた不利になる。

 次の的は先ほどに比べてはるかに小さいが、アッシュにとっては十分な大きさだった。

 一呼吸の間に加速した身体は停止の力を載せた短剣を12本投げ、それと同時にさらに加速し背後に回りこんでさらに5本投げる。

 ―――反作用のダメージは大きいが時を戻すことでそれらは無かったことにする。だが、あの痛みの記憶だけはなくならないし、脳に刻まれていく。

 覇龍という最大の障害は落としたのだ。周囲を見渡し、敵の姿を発見し、すぐにそのもとへと向かい、切り殺そうとしてその姿を見失った。

 ふと殺気を感じ、加速してその場を離れる。

 ―――姿を隠す魔術があると聞くが、恐らくはそれを使ったのだろう。そういった知識面において、俺が圧倒的に劣っているのはわかっている。

 先ほどまでいた場所に土煙と地面に亀裂が入る。

 その瞬間にそこにダークを1本だけ投げる。

「―――当たらないか」

 ダークは地面をえぐるも何か生物を攻撃した様子はない。当たってはいないのだろう。

 お互いに手詰まりだった。アッシュは相手の位置を相手の攻撃と気配でしか探れず、リンダはアッシュのスピードを追えない。

 ―――そう、先ほどまでと同じ状態だったなら。その認識で間違ってはいなかっただろう。

「リンダ、当たり前のことだが第四柱が何を意味しているか、知っているだろう」

 答えを求めてでもなく、近くにリンダがいるからという理由でもなく、ただそううたうように告げる。

「改めて言うまでもないが、第四柱の加護は時と空間。俺の場合は元々時に関してはほとんど加護と変わらないレベルで持っていたから勘違いしているようだが、第四柱が誰からも狙われるのは時による支援と空間という絶対性から来る」

 そういう間もそれなりのスピードで動き続ける。

 気配で大まかな位置はわかっているためそこまで不意打ちは怖くない。

「つまり、やろうと思えばこういうこともできるということだ」

 鮮血、魔術も同時に解けたのか、リンダの姿が浮かび上がる。

 右腕が飛んでおり、血こそすでに止まっているが右腕は戻っていない。さすがに欠損まではどうにもできないのか。

「次は首を飛ばそうか? さすがに事実上の不死でも首が飛べば『辛い』で済むとは思えないが、どうする?」

 脅しをかける。

 正直、これはそこまで制度が良いわけではない。狙えてリンダを中心に半径二メートル以内に納めることしかできない。先ほどは運がよかった。それに、これは連発もできないし、同時に時を操ることもできない。空間の断裂はそこまでに負担が大きい。

 答えはノーなのだろう。姿が消え始めた。

 無言で断裂させる。今度は左足が飛んだ。都合がいい。首でないのが残念だが、それでも十分だ。

 ―――頭の中が沸騰しているかのようだ。俺の処理能力では、空間の断裂はつらすぎるのだろう。

 またもや浮かび上がるリンダの姿、それはあまりもの痛々しく、アッシュは自問する。

 ―――これこそが俺の消し去りたい姿ではないのか? これこそ俺が最も嫌悪するものではないのか?

 その問いも消えていく。その問いは許されない。今の自分にはそんな“不必要なもの”は入れてはいけない。

 わずかな間をおいてそのまま空間を断裂。胴が真っ二つになり、血が吹き出るが、そんなものに今気を使う気がない。

 ひどい頭痛を気合で押し込んでリンダのもとに向かい、頭をつぶす。

 ふと、やわらかい空気が流れたと思ったら、同時に理解した。これが使役だと。

 リンダの身体が光に包まれ、身体を再生させる。それを見て、俺は、脱力とともにリンダめがけて倒れこんだ。



 暖かく、明るい空間。

 春の陽気のようで、とてもすごしやすい。

 光の中を見渡すと、女性が一人こちらを見ている。

 手を伸ばし、触れようとする。

 とどかない。とどかない。とどかない。

 精一杯に手を伸ばし……その女性の悲しそうな目を見て、力が抜けた。

「―――――――ぁ」

 分からない、わかる。

 わかる、分からない。

 相反する思考と理解が己の中でぶつかり合い、そのままこの空間から追い出される。

「――――――――」

 まだだ、あの人には聞かなくてはならないことがある。この聖戦の意味、この空間について……何故あんなにも悲しそうなのか。


 今適当に息抜き程度で書いているものがあるが、そっちのほうが設定とかもちゃんと考えてやっているというなぞ。

 だって、世界観がこっちのほうが簡単なんだから仕方ない。そういうことにしておく。

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