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神々の黄昏へと至る聖戦  作者: ray
1 転生したテロリスト
6/9

+2

 遅くなりました。

 ―――俺の意識が目覚めたとき、最初に感じたのは激痛だった。

 周囲には燃え盛る火炎。

 瞬時に判断された現状。

 うごめく覚えの無い感覚。

 何をすべきか、何をなさねばならないか、それら一切を瞬時に理解した。


「―――こ……の………っ!!!」


 なれたものよりはるかに小さな身体に流れる時間を三倍に加速し、さびている鉄格子を蹴り破る。

 周囲には炎、この身体を捉えて逃さないようにしている鉄の檻。

 錆びてきていることも幸いして、子供の力でも加速しているとはいえ蹴り破れたのは運がいい。

 外に飛び出し、折った鉄の棒を左手で持ち、驚いた表情の目の前にいる老人…記憶によると村長だろう。それを殴り殺した。

 左腕には過去味わったことの無いほどの反動が加わり、大きく鉄の棒は歪むが、そんなことはどうでもいい。次には代わりとなりうるものを持つものをこれで殺してそれを奪えばいい。

 振り返って剣を振り上げる男を一瞥し、まず剣を持つ肘を殴って砕き、そのままの動きで右手を眼から突っ込み、脳を引っ掻き回す。

 曲がり、折れた鉄の棒を迫る男に投げつけて、落ちている剣を拾う。

 息が上がりきっている。この肉体の年齢が、戦闘に耐え切れていない。


 ―――ならば、もっと成長していればいい。


 簡単な話だ。この身体が耐えられないのなら、耐えられる身体を用意する。

 そこに至るまでの過程をすっ飛ばして、結果だけを得る。

 この身体の十年後…そこまで強制的に成長させる。それができるのは、本能的にわかっていた。

 白く消えていく視界、それを根性で押さえ込み、成長した身体で、強制的な成長による全身の軋みによって現れる激痛を意識から切り離す。

 ―――身体を動かす上での支障は無い。

 その変化に驚く人をさらに加速した身体で肉塊に変える。

 数人切れば剣の刃としての価値はない。そうしたら次の剣を見繕い、切り裂く。

 そこには母親、父親の姿はあったが、それらも切り裂いていく。


 ―――自分がこの世界で忌み嫌われる“エルド”を持つことはもう理解していた。


 別に、だからといって俺が人に害することのみを目的とするかと聞かれたら、俺は間違いなく違うと答える。

 ここで大量虐殺をやったのは一つだけが目的だ。

 “俺がエルドを持つと知る人を殺しつくす”それのみが目的だった。

 もちろん理由はある。

 エルドを持つと知られたら事実上生きていけない。それだけだ。



 ―――神が泣いているのか、虐殺の終わりとともに雨が降り出し、それはこの身体を焼き尽くそうとした業火を消し去るほどのものだった。


「これは青年がやったのか?」

 背後からの気配で首だけ振り返り、行動によってはすぐに殺せるように準備する。

「待った、待った。殺気を出すな。その辺の魔獣を刺激する。まだ死にたくは無いだろ……う?」

 その返答とともに右腕を切り裂く。

「用件だけ言え」

 今度は首に剣を向けると殺気をわずかに増させる。

「―――――――」

 何も言わないのを十秒確認すると剣に力を込めて咽喉を切り裂いた。


 死体を処理するのも面倒になって、雨に打たれるまま立ち尽くし、手からは剣を落とす。

「―――――――」

 何も言うことはない。

 あるはずも無い。

 他人を殺されそうになったから切り殺した。

 今の状態を整理するので精一杯だった。




 肉体的な年齢は確かに十七程度まで上がった。が、あくまでも無理やり上げたものだから元に戻し、その小さな身体にナイフを数十本忍ばせ、道を歩いた。

 雨が止むと同時に獣の遠吠えが聞こえたため、すぐに荷物をまとめて逃げ出したのだ。

 身体に残る記憶を頼りにさまざまなことを確認する。

 魔術、ステータス、スキル、レンド……知ったことは多かったが、それでも納得がいかないものがあった。

 レンドが何故神話に出てくる神の能力にとても近いのか、スキルを表示されるのもどうかと思うし、筋力などはその日の調子によっても変わるのにどうやって数値化するのか等。

 考えればきりがない。だが、それもそういうものとして納得できるだけの精神的若さはまだ彼にもあった。

「――――――――」

 かすかに聞こえる不規則な物音、こちらとの距離を一定に保ったまま周囲を旋回する獣の姿。

「――――――――」

 わずかに右手を動かし、腰のナイフを触り、いつでも抜けるようにしておく。

 大きな音を立てて獣は飛び出し、それにあわせてこちらもナイフを滑らせる。

 かすかに爪が腕をかすった以外は特に大きな怪我も無く、ナイフを獣の咽喉元に突き刺し、まだかすかに動く身体を完全に停止させるために頭蓋骨を避けるようにして脳みそをグチャグチャにする。

 今度こそ息の根を完全に停止させた獣を確認して、血抜きや毛皮を剥ぐなど、すぐにできそうなことを簡単にやってしまい、肉は簡単に持てる分を袋に、皮は使い勝手がいいので簡単に剥いだらそのまま残りを放置して道を進む。

 もう日が暮れ始めておいたので、適当に野営できそうな場所を見繕い、先ほど入手した肉を使って食事を済ませる。


 ―――監視されている気がする。


 ただの勘ではあるが、極限状態におけるこういうものは意外と当たるし、何よりこういった勘が悪い方向以外に外れたことが無い。

 いい意味で捉えるなら、最悪の事態に巻き込まれるときには事前にそれを悟れるということだが、逆に捕らえればここまで経験則で語れるほどに最悪の事態に巻き込まれてきたということだ。


 ―――………………。


 いろいろと思うことはあるが…まあ、気にはしない。そう決めた。


 気配がするのは七時の方向、監視だけが目的なのか一向に動く気配は無い。

 嫌がらせのつもりで美味そうに肉をもったいぶって食べてみたが、さして動く気配は無い。


 ―――面白くない。


 さて、面白いか面白くないかとか人生を幸せに過ごす方法はどうでもいいとして、本当に動く気配が無い。かなりわかりやすいぐらいに隙を見せているのに何の反応も無いのは逆に不安になる。

 パチパチと燃える炎を前にナイフの手入れを済ませ、一通りの武装を確認しつつ、背後への注意を怠らない。

 背負っていた荷物の中から毛布を取り出し、それに包まって眠る。


 ―――夜が明けても背後の気配は一切動かなかった。




 朝日が昇るとともに周囲に生き物の気配が満ちる。

 その中に人のものと思われる気配がいくつか点在していることにようやく気付いた。


 ―――数は六つ…それら全てが僕を警戒している。下手な行動をしたら迷わず殺しに来るだろう。


 穏やかな朝に張り詰めた空気、一時の油断が命を落とす戦場。

 隙は見せなければ即攻撃され、隙を見せすぎればそれでも攻撃される綱渡り。

 この極限状態こそ人の、生命の輝きがより強くなる瞬間。


 ―――見えないはずのものが見切れる。


 ―――動かないはずの足が動く。


 ―――処理できない状況を処理しきる。


 人の能力を超えた力を発揮するのはこの極限状態をのぞいてほかに無い。



 わずかな油断もできない時を荷物を整理するという行為に捧げ、ありとあらゆる思考を排除し、今この瞬間のためだけに行動する。


 じりじりと近づく気配、まだダメだといさめる様子、こちらの初動を見逃さないように凝らされた目、したり落ちる汗……。


 ―――その緊張に耐え切れないものが現れた。



 ガサリ、という音。

 放たれた矢のように飛び出す男をあくまで冷静にナイフを抜いて滑らせる。

 力などを除いた子供の動きの素早さと柔軟性は、やり方しだいで大人を凌駕する。


 頬に赤い線をつけた少年は、首元から多量の血を噴出す男を確認せずに駆け出した。


 ―――通常では、よくある少年漫画のように先に動いたほうが負けるということは起こりえない。

 だが、今回においてはそれが成立していた。

 仲間と合図を取ったらその瞬間に隙ができる。その隙で一人死ぬ。数のおかげもあって保たれた均衡は、一人の些細なミスともいえないミスによってあっという間にたやすく崩れ去った。


 十歩の距離を一瞬でつめ、相手を叩きのめす。

 ナイフは流れるように相手の咽喉を切り裂き、咽喉を守るものの心臓を突き刺す。

 突き刺したナイフは抜かずに新しいナイフを取り出して次々と機械のように殺しつくす。


 この均衡はたやすく崩れ去った。

 ―――さらに、もう一つの当事者たちの予測していなかった均衡さえも崩した。



 四方より放たれる魔術、目に見えない風の魔術はいかに時を速めようと回避できるものではない。

 それは点や線ではなく面もしくは空間への攻撃。

 それを避けることはできないし、それについて何の知識も持たなかった少年が直撃を受けるのは当然のことであった。


 ―――そう、もう一つの均衡とはこれのこと。

 今まで最初の襲撃者のせいで手の出せなかった魔術師たちが一斉に魔術を放ったのだ。


 当然、少年は風によって切り裂かれ、吹き飛ばされて受身を取りつつも地面に転がった。

 受身を取っているだけすごいといえる。あの状況下で自分が宙に舞っていることを判断してそれに対する手を打てるのは彼がこの件が始まる前にいやな予感がすると思っていたからだ。


 吹き飛んだ少年はそのまま意識を失った。

 何の意図があってか、魔術師たちは少年を捕縛し、しっかりと縛り付けてから魔力を封じて運び出す。

 魔術師たちの向かった方角には王都があった。




 少年はいくら調べ上げてもただのレンドであることしかわからなかった。

 たまにあるのだ。レンドに目覚めた子供がよくわからないうちに処刑されそうになり、そのまま自分の力だけでその危機を脱することができてしまう子供が……。

 調べるときにあふれ出た個人的感情をどうにか押さえ込み、そのまま対談ができるようにしっかりとベッドで寝せておく。

 傍らに陣取って、思わず顔がにやけたり、手を出したりしないように細心の注意を払いつつ起きるのを待つ。


 ―――大丈夫、子供のうちから調きょ……教育しておけばいいのだ。まだダメだ、あと五年ぐらいは待たないと、本当においしい時期から外れてしまう。それまでの辛抱だ。


 頭の中でヘンタイなことを考えながらも、表面上はやさしそうな“お姉さん”を保ち続ける。

 幸いにも少年に“今は”貞操の危機が無いようだが、できるだけ早く捕まってほしいものだ。

 彼女の名をカレン・ウォーグスというのだが、どちらかというと別名のほうが知られている。


「―――ぅ、―――ぅん」

 少年は目を覚ました。

 それを感じ取ったカレンは一瞬だけあまりにも他人にはお見せできないような表情をした。

 それを少年は見てしまった。

 ―――だから少年は何かを考えたり口にしたりする前に逃げ出した。



「―――助けて! ヘンタイが、HENTAIが追いかけてくる!!」

 少年の叫びを聞いて、施設の大人たちは少年とそれを追いかける女性を見る。

 そこで反応が分かれる。一つが見なかったことにするもの、もう一つが同情の目を少年に向けて目線をそらすものだった。

「―――って誰も助けてくれないのかよ!!」

「逃げちゃダメでしょう! 別に私はHENTAIじゃありません。変態です」

 などと、否定しているのか肯定しているのかいまいちわからない答えをする女だが、少年にとっての最優先事項はこの女から逃げることであって、ツッコミを入れることではなかった。

「たーすけてー!!!!」

「まってー」

 あまりにも端から見る分にはほほえましい追いかけっこはとうとう施設の外にまで及び、逃げるものは半ば本気で命を懸けて走り、追うものは自らの欲望のために走った。

「―――出たぞ! こいつが“白髪のHENTAI”だ!」

「違う、“ショタコンのHENTAI”だろ!?」

「いや、俺は“自称お姉さんのHENTAI”って聞いたぞ!」

 そういって少年を守ろうと立ちふさがる男たち三人。

 だが、こいつはなんていうのかという点でなんとも変な言い争いをしていた。

「結局こいつは“HENTAI”なんだからどうでもいいだろう!!」

「違う、私は変態だけどHENTAIじゃない!!」

 心底どうでもいい言い争いだが、本人たちは真剣だった。

「警吏隊の皆さん、お願いだからその子を渡して頂戴。あまり手荒なことはしたくないの」

 そういうカレンはどう見ても悪役、実際やっていることも悪といえるが、ここに正義の味方はいなかった。

「我々は貴様のようなHENTAIには屈しない……。

 子供たちの貞操と純粋な心を守るために……行くぞ!!!!」

「「うおおぉぉぉぉぉ!!!!」」

 勇猛果敢にカレンに突撃する警吏隊の三人、今だけはこの三人がまるでヒーローのようであった。

「―――僕は…この場合そのまま逃げ出していいのだろうか?」

 そんな少年の呟きをかき消すように一人の男が吹き飛んだ。

 男はこちらに手を伸ばし、絞るような声で言った。

「―――しょ、少年……逃げろ………」

 そのままガクリと倒れ、その背をカレンが踏みつけた。

「はっはっは、正義は勝つ」

 その豊満な胸を張って高笑いをするカレンを一瞥し、心の中で男たちの冥福を祈りつつ少年は逃げ出した。



 ―――まさに喜劇である。




 少年の逃亡劇はまだ続く。

 大きな城壁を見た少年は近くの木から城壁にレンドを使いつつも飛び移り、中への進入に成功する。

 その後タイミングよく現れたカレンはどこかの劇のように周囲を一度見渡してもう一度走り去る。

 それを城壁の上から見ていた少年はようやく一息つき、そのまま城壁から落下した。

「―――――――!!」

 よほど痛かったのか、少々涙目になりつつも周囲を見渡す。

 城の裏庭、日の光がやさしく差し込み、なんだか眠くなってくるほどにのどかである。

「ふぅ―――――」

 そのまま寝転がると目を閉じる。

 数秒後、静かな寝息が聞こえてきた。


 少年が寝ているところに一人の女性が現れる。

 背後には少年よりも少し小さいぐらいの女の子と、そこに控える侍女であった。

「あらあら」

 すっかりと眠ってしまっている少年は、殺気も何もない女性たちの接近に気付くことはできなかった。

 彼女たちにあるのは殺気でもなんでもないただの好奇心である。


 ―――故に彼には気付けない。彼が気付くことができるのは殺気と悪いことが起こることだけだ。別に見られても特に悪いことが起きるというわけでもないこの状況下でただ見られている彼が気付けるはずもない。


「お母様、この方はどうなさったんでしょうか?」

 少女が母親に問いかける。

「そうね、きっと疲れていたんでしょう」

 母親は微笑み、娘とともに少年を見る。

 まだ小さな子供、五歳程度であろう。自分の娘と同じぐらいの年というだけでかわいく見えるし、実際のところ寝顔はかわいい。

 しかし、わからない。

 ここにいるとしたらそれなりの地位のある子供か使用人たちの子供だが、使用人たちの子供がこんなところにいるはずもないし、それなりの地位があれば一度は娘の遊び相手として見ていてもおかしくないが、見たことが無い。

「―――ん……」

 寝返りを打ち、丸くなる。

 その顔は至福に満ちているようであったが、なんだか微妙に曇りがあってこその至福の顔と言えた。

 闇あってこその光、この子の中にはこれほど幼いのにこの日常を天国のように感じることができるほどの地獄を味わったということが何となくだが、母親には予想がついた。

「どこに行ったのかなー? 早く出てこないと、お姉さんちょっと何するかわからないなー?」

 地獄からの亡者のごとき声、ちょっとというレベルでなく子供には聞かせたくない声だ。

「―――っ!!!」

 飛び起きる少年。

 その反応にはさすがに母親も驚く。


 ―――熟練の者でもこれほどまでに害意に敏感なものは少ない。

 先ほどの声は声から判断してあのカレンだろう。この少年が彼女に出会い、襲われかけていたら……全て納得できる。

 恐らく城壁のところにある木を上ってこちら側に入って気が抜けたのだろう。そしてそのままここで眠ったと……。

 考えられなくはない結論だ。そしてそれと同時にこの少年の正体に気がついた。

 ―――わずかこの年でレンドを使いこなしていた少年。誰に対しても敵対行動を続け、先日魔道師団の活躍で捕縛。そのときに特務部隊を一つ壊滅させている。


「きゃっ!!」

 急に起き上がった少年に驚く少女、少年は取り合えず周囲の警戒を済ませると、なにやらおかしいことに気付き、ぽかんとしている。

「―――えーと、こんにちは?」

 疑問形なのは許してあげるべきだろう。

「はい、こんにちは」

 母親はまるで何もないかのように挨拶を済ませる。

「―――あ、こ、こんにちは」

 少女も少々遅れながらもきちんと挨拶を済ませる。

 だが、背後の侍女はそうも行かない。

 彼女たちにとっては少年は不法侵入者であって、寝ていたから近くにいるのもある程度見逃したが、起きたのであれば話は別だ。

 武器は隠し持っているが、そんなものはこんな子供には必要ない。

「―――――」

 少年はその様子をちらりと見て確認すると、決断した。


 ―――殺すか。


 決断は早かったし、その後の行動も早かった。


 ―――だが、それはその前に声で止められた。


「やめなさい。殺意を持てば殺されるのはこちらよ」

「ですが……」

「あら? 私の言うことが聞けないの?」

 数秒の空白の後に、

「―――かしこまりました」

 侍女が手を出さないのであれば彼にこの人たちを殺す理由は無い。わずかに落としていた重心を元に戻し、こちらも殺気を消す。

「?」

 すぐそばの少女は首をかしげている。

 どうやら今何が起きたのか、わかっていないようだ。

「―――ねえ、あなたカレンから逃げているんでしょう?」

 いつの間にか気付かないうちに近づいていた女性に少年は驚きつつ、うなずく。

「―――そう、それじゃあ私がカレンから守ってあげるから、この子の護衛と遊び相手をやってくれないかしら?」

「奥様!」

 間髪いれずに侍女が口を挟もうとするが、

「黙ってて頂戴」

「―――かしこまりました…………」

 すぐに黙らされる。

 そして母親はもう一度こちらを向いてじっと目を見て言った。

「お願い、この子の為に」

「――――――」

 少年は思案した。

 現実の時間としては一秒無かったが、彼は十分程度悩んだ。


 ―――この話の裏、メリットとデメリット、護衛対象の性格、自分の今の立場……。

 ありとあらゆる面において、彼はそれを判断することができないほどに情報が足りなさすぎた。

 わかることは、この女性が身分の高いものであり、少女も当然身分が高く、その護衛にいきなり何の考えも無くこんなガキを採用するはずも無い。

 つまり、この女性はこの少年が何かしらの能力を持っていることを知っているということ。だが、それが理由で害するつもりはなさそうだということ。

 害するつもりであれば、一度大きな声で恐らく城壁の向こう側にいるであろうHENTAIを呼べばいい。そいつが来なくてもここがそれなりの場所なら兵士が来るはずだ。

 こちらの戦力をどの程度だと思っているかはわからないが、HENTAIから逃げている地点である程度まで下げられているだろう。それでもそれをしないのは本気で護衛として使う気だから? それと見せかけて隙を突いて捕縛する? ダメだ。疑心暗鬼になってきた。


 彼はそこまでの思考を終えると元に戻してから答えを口にする。

「かしこまりました」



 そうして、少年アッシュは王女カスミの護衛となった。


 ―――それと同時に、本人の気付かぬまま特務部隊に見習いとして所属させられていた。


 HENTAIと変態は別物です。

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