きみとボーグ
スコップを雪の上で引きずるとジョリジョリうるさい。
俺は家出した4号を探して林の中を歩いている。
空を見るかぎりは、今はたぶん昼下がり。
4号は父さんが作った。だから4号は俺の弟。
素材は違うけど俺の弟。
愛すべき俺の弟。
ジョリジョリと鳴るたびにソリ遊びを思い出す。
独りっきりのソリ遊び。
ちっちゃい頃は4号なんか居なかったから。
まあ、4号が出来てからも独りだったけど。
冬の林は寂しい。
4号はきっとここに居る。
弟の考えることなんてお兄ちゃんにはお見通しだ。
ジョリジョリザクザクと林を歩く。
ここでは俺だけが元気だ。
居た。
4号は木の下で座り込んでいた。
俺は近づく。
4号はがっくりと項垂れている。
死んでるかもしれない。
俺は近づく。
彼は顔を上げた。
4号は、じっと俺を見つめる。
「ごめん」
4号の声は冷めていた。気温のせいだろう。
「家出するなら、もっと楽なところにしろ」
引きずってきたスコップを二人の間に突き立てた。
「………探してくれるとは思わなかったから」
「俺が、お前をほっとくわけないだろ」
4号は俯いた。
「やっぱり、俺って必要かな」
「必要だな」
4号は笑った。
「じゃあなんで捨てたんだよ」
「捨てたのはお前の方だろ」
俺はスコップを引きぬき、振り上げる。4号は顔を上げる。
「殺すの?」
「壊すんだよ」