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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第1章 ヴェルディア学園入学
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幕間 早い、確実、快適! -side ユリウス-

 ユリウスは、自室に戻って扉を閉めた。

 扉が背後でカチリと閉じた瞬間、空気が一気に重く沈んだ。


 リオの声が、頭の中で反響する。


『先輩も一度体験すればわかります。早い、確実、快適!ほら、騙されたと思って!』


 振り払うように頭を振る。

 あれは魔獣の誘惑だ。


 シャワーを浴びて、頭と体を洗って、タオルで水気をふき取る。

 風魔法で髪を乾かしながら、まだ指先に湿りを感じて、思わず洗面台の縁を拳で叩いた。


 水魔法は得意なのに。どうしてただ水を出すだけで精一杯なんだ。

 風で操ろうとしたら、意識が途切れて水が崩れる──そんなの当たり前なのに。

 あいつの頭の中はどうなっている。

 まるで魔法用の思考がもう一つあるみたいだ。


 あの無邪気さに今更ながら腹が立つ。

 尻尾。

 背中に一筋だけ伸ばし、紐でまとめたあの尻尾みたいな髪を掴んで、振り回してやりたかった。


 複雑な怒りに震える拳を、しばし抑え込む。

 ユリウスは深く深く深呼吸する。


 腹が立つほど完璧な魔法──ほとんど芸術だ。

 隣室はとても静かだった。

 もう寝たのだろうか、あの生き物──リオは。


 あれは突然変異だ。

 あれを普通と思ってはいけない。

 あれは異常なのだ。

 けれど。


 もう一度、息を整える。

 訪れる静寂。

 その静けさが、心の奥の声を押し出した──


「……うらやましい」


 ぽつりとした呟きは、誰にも届かず闇に溶けていった。

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