第7話 夜が語るもの
ユリウスが水魔法で配管のつまりを直してくれた。
蛇口もシャワーも出なかったらしい。
蛇口をひねると水が流れ、リオは拍手を送った。
「器用ですね」
「君に言われても、褒められた気がしないな」
真顔で言われ、リオは少し戸惑う。
「そもそも、どうやって体を流したんだ?」
「こうやって、水魔法でですね」
リオが短く詠唱すると、いくつもの水泡が周囲に浮かぶ。
さらに風魔法で水泡を動かし、体の周囲を一瞬で走らせる。
最後に炎魔法で蒸発させ、風で服ごと乾かす。
その一連の動作を見たユリウスは、顎が外れそうになるほど驚く。
「こうすると、一瞬で綺麗になれるんです。服も一緒に」
便利さを笑顔でアピールするリオに、ユリウスは言葉を失ったままだ。
「先輩?」
「君……馬鹿じゃないの」
「え、何で!」
リオは思わず悲愴な声で叫んだ。
「詠唱がおかし…いや、そもそも同時に複数発動とか、頭どうなってるの!」
「大丈夫です。理解せずに素でやる人もいますから」
「そんな例外、知らないよ!」
ユリウスが悲鳴を上げる。
「先輩も一度体験すればわかります。早い、確実、快適!ほら、騙されたと思って!」
「要らないよ!戻れなくなったら責任取れるのか!」
両掌を上に向け、指を開閉させてワキワキするリオを、ユリウスは胸の前でバツを作って即座に拒否した。
「じゃあ早く寝るんだよ。いびきが煩かったら叩き起こすからね」
「はい!ありがとうございました!」
ユリウスは頭を押さえながら自室へ帰っていく。
大丈夫だろうか、と心配になる。
リオは制服を脱ぎ、楽な格好に着替えてベッドに飛び込む。
今日の授業で聞いた内容はすでに知っていた。
もっと、新しいことを知りたい──そう思いながら、瞼は重くなっていく。
創立十三年とはいえ、この叡智の集まるグランゼリアで、誤作動がそんなに起こるだろうか?
その疑問は、やがて夢に溶けていった。




