第4話 粉塵の戦場
リオは、建物の壁を蹴って跳び上がった。
生き物の弱点と言えば、決まっている。
屋根を蹴り、瓦を砕きながら竜の眼前へ迫る。
捻った腰から解き放つように、剣が一直線に走る。
狙いは──赤い瞳。
刃は、確かに捉えた。
竜が、唸り声を轟かせる。
振り払う動きに、リオは吹き飛ばされた。
目の傷は、すぐに塞がる。
「目は弱点じゃない!」
光る瞳が、リオを捉えた。
着地した瞬間、竜の顎が迫る。
身を捻る──牙が、すぐ脇で空を噛んだ。
心臓が、跳ねた。
アレンも瓦礫を利用し、跳躍。
振り下ろした一撃が、竜の腕の付け根に食い込んだ。
切り落とされた腕が宙を舞い、塵と化す。
竜が絶叫の咆哮を上げる。
断面が盛り上がるように、再生が始まる。
だが、その速度は明らかに鈍い。
──効いている。
「関節だ!関節が弱点だ!」
アレンが叫ぶ。
その間に、武器庫の前では大型武器の準備が整う。
狩人が、大型弩を発射。
別の狩人が矢を風で押し、威力を上げる。
翼を貫いた。
だが、肉が矢を拒むように蠢き、押し出す。
裂け目は、瞬く間に消えた。
効いているのに、意味がない。
焦りが、戦場全体に走る。
もっと威力の高い攻撃が必要だ。
「地の利を利用する!西へ誘導するぞ!リオ、避難支援を!」
「了解!」
アレンが中心となり、竜を西の外周まで引き離す作戦が即決される。
リオは学生たちとともに、西門へ続く周辺の人々を避難させる。
ユリウスの作った、透明な水膜の盾が瓦礫を受け止める。
光を反射しながら、それは微かに波打っていた。
その揺らぎに、リオも思わず目を奪われる。
そして、ユリウスの手に握られた、見慣れぬ杖に視線を向けた。
「その杖……」
ユリウスは、嬉しそうに笑う。
「僕の新しい相棒だよ」
その言葉に、リオも笑みを返す。
ユリウスが守る間に、リオとイリスは声を張り、人々を誘導する。
粉塵に包まれ、息は荒く、喉も焼けるように痛む。
それでも──一刻も早く、安全な場所へ。
焦りに背中を押され、声を震わせながら叫ぶしかなかった。
その間も、攻めの手は緩まない。
攻撃の方向を一意に定め、投石や、魔法で操る鎖で通路を封鎖する。
竜を、強引に誘導する。
やがて、竜はゆっくりと、西へ押されて動き始めた。
周囲の建物が崩れる。
アレンが崩れかけた屋根の端で踏ん張り、息を整え、次の攻撃を狙う。
竜が、抗うように首を仰け反らせた。
「来るぞ!」
アレンの声が響く。
リオの背筋を、緊張が走った。
竜が再び、黒い瘴気を含んだ咆哮を放つ。
狩人たちが崩れた瓦礫や石柱を、その進路へ投げ込む。
瘴気は瓦礫にぶつかり、四方へ散った。
それでも一瞬、呼吸が詰まる。
膝をつく狩人。
咳き込む学生。
しかし、詠唱を終えた聖導士の魔法が、瘴気を払い散らした。




