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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第8章 襲撃
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第4話 粉塵の戦場

 リオは、建物の壁を蹴って跳び上がった。


 生き物の弱点と言えば、決まっている。

 屋根を蹴り、瓦を砕きながら竜の眼前へ迫る。


 捻った腰から解き放つように、剣が一直線に走る。

 狙いは──赤い瞳。


 刃は、確かに捉えた。


 竜が、唸り声を轟かせる。

 振り払う動きに、リオは吹き飛ばされた。


 目の傷は、すぐに塞がる。


「目は弱点じゃない!」


 光る瞳が、リオを捉えた。


 着地した瞬間、竜の顎が迫る。

 身を捻る──牙が、すぐ脇で空を噛んだ。


 心臓が、跳ねた。


 アレンも瓦礫を利用し、跳躍。

 振り下ろした一撃が、竜の腕の付け根に食い込んだ。


 切り落とされた腕が宙を舞い、塵と化す。


 竜が絶叫の咆哮を上げる。


 断面が盛り上がるように、再生が始まる。

 だが、その速度は明らかに鈍い。


 ──効いている。


「関節だ!関節が弱点だ!」


 アレンが叫ぶ。


 その間に、武器庫の前では大型武器の準備が整う。


 狩人が、大型弩(おおがたど)を発射。

 別の狩人が矢を風で押し、威力を上げる。


 翼を貫いた。


 だが、肉が矢を拒むように蠢き、押し出す。

 裂け目は、瞬く間に消えた。


 効いているのに、意味がない。

 焦りが、戦場全体に走る。


 もっと威力の高い攻撃が必要だ。


「地の利を利用する!西へ誘導するぞ!リオ、避難支援を!」

「了解!」


 アレンが中心となり、竜を西の外周まで引き離す作戦が即決される。


 リオは学生たちとともに、西門へ続く周辺の人々を避難させる。


 ユリウスの作った、透明な水膜の盾が瓦礫を受け止める。

 光を反射しながら、それは微かに波打っていた。


 その揺らぎに、リオも思わず目を奪われる。

 そして、ユリウスの手に握られた、見慣れぬ杖に視線を向けた。


「その杖……」


 ユリウスは、嬉しそうに笑う。


「僕の新しい相棒だよ」


 その言葉に、リオも笑みを返す。


 ユリウスが守る間に、リオとイリスは声を張り、人々を誘導する。

 粉塵に包まれ、息は荒く、喉も焼けるように痛む。


 それでも──一刻も早く、安全な場所へ。

 焦りに背中を押され、声を震わせながら叫ぶしかなかった。


 その間も、攻めの手は緩まない。


 攻撃の方向を一意に定め、投石や、魔法で操る鎖で通路を封鎖する。

 竜を、強引に誘導する。


 やがて、竜はゆっくりと、西へ押されて動き始めた。

 周囲の建物が崩れる。


 アレンが崩れかけた屋根の端で踏ん張り、息を整え、次の攻撃を狙う。


 竜が、抗うように首を仰け反らせた。


「来るぞ!」


 アレンの声が響く。

 リオの背筋を、緊張が走った。


 竜が再び、黒い瘴気を含んだ咆哮を放つ。


 狩人たちが崩れた瓦礫や石柱を、その進路へ投げ込む。

 瘴気は瓦礫にぶつかり、四方へ散った。


 それでも一瞬、呼吸が詰まる。


 膝をつく狩人。

 咳き込む学生。


 しかし、詠唱を終えた聖導士の魔法が、瘴気を払い散らした。

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