表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第1章 ヴェルディア学園入学
6/36

第5話 昼食のテーブル

 中央広場に面した棟の大扉をくぐると、高い天井と梁が映える大食堂が広がった。

 木と石を組み合わせた温かなホールには、長い木のテーブルがずらりと並び、壁際ではランプが柔らかく灯る。

 ガラス張りの大窓からは広場が見下ろせ、昼の光が斜めに差し込み、床に淡い模様を描いていた。


 香りが誘うキッチンカウンターは半オープン型で、スープやパンの焼ける香りが漂う。


 ──Aランチ:煮込みシチュー+白パン+森のサラダ

 ──Bランチ:白鹿肉(しろしかにく)ソテー+ハーブライス(期間限定)

 ──おやつ:星砂クッキー


 カウンターに浮かぶ札を見て、リオは思わず息をのむ。

 リオはBランチ、イリスはAランチを選ぶ。


 選んだ後、自然と会話が狩猟の話題に移った。


「白鹿肉、随分珍しいわね」

「そうかな?警戒心が強いから、気配を消して近づけば簡単に狩れるよ」


 ソテーをナイフで切り分け、口に運びながら言うと、イリスが呆れたように肩を落とす。


「あなた、普通の基準が壊れてるわ。気配を消すって…白鹿は10メートル先にいても逃げられるって話よ?」

「だから、ちゃんと気配を消せば油断して、簡単に捕まえられるんだ」


 イリスがアリアと顔を見合わせてため息をつく。


「……変わってるわね」

「そんなことないよ?」


 そんな会話をしていると、同級生が自然と寄ってくる。


「リオ、首席なんだね」

「すごい!どうやってあの問題を解いたんだ?」


「最後の問題かな?あれは…」


 リオがハーブライスをかき混ぜながら簡単に解説をすると、それを聞いた同級生たちが「うわぁ」と感嘆する。


「そんな方法があったんだ!」

「よく思いついたね」


 リオはスプーンを口に運びながら、曖昧に笑った。

 実際には、基礎ばかりの筆記に、枠だけ見る実技──退屈で仕方なかったとは口が裂けても言えない。


「満点を取ったのは、13年間で君が初めてだそうだよ」


 声をかけられて、リオはライスを口に運びながら視線を向けた。

 見覚えのある先輩、ユリウスだ。


「満点!?」


 あちこちから息を呑む声が上がり、誰かの椅子がガタリと鳴った。


「筆記で!?」

「本当に!?」


 あたりが一瞬ざわつき、答えを待つようにしんと静まり返る。

 近くの席の生徒たちが目を丸くしてこちらを見ている。


 リオは微かに笑った。


「もちろん筆記で……」

「筆記と実技の両方でだよ」


 ユリウスが淡々と言った。


 何で言ってしまうかな……。困ってしまう。

 周りはそれどころではないざわめきに包まれる。


「嘘だろ!?」

「両方満点!?」

「信じられない…」


「こら、静かに!」


 カウンターからお叱りの声が飛び、生徒たちは口を噤む。

 イリスがぽかんとした顔で見てくる。

 リオは気まずくなって、もそもそと冷めたソテーをかじる。


「それで?その稀代の天才君は僕の隣室らしい。あの部屋、水道が壊れてなかったかな?」

「水道?」


 リオは思い出すように視線を上げる。


「使ってないからわかりません」

「……君、昨日には入寮したんだよね?」

「はい。トイレは使いました」


 すぐに返事は来なかった。

 沈黙の後、ユリウスがかすれた声で言った。


「……トイレって。まさか、他は全部魔法で済ませた?」

「はい」


 「ええ!?」と大きな声が聞こえ、その後周囲が小声でざわつく。

 ユリウスから返って来たのは深いため息。

 リオはまたも困ってしまう。


 別にいいじゃないか。冷たいソテーをもう一口、口に押し込むようにしてかじった。


「そういえば、今日の警報は何だったんですか?」


 話をそらせるために、別の話題を振ると、ユリウスがすぐ乗って来た。


「測定器の誤作動じゃないかと言われてる」


 ユリウスの言葉に納得する。

 設立されて13年も経てば、色んなところにガタが来るか。


 そんな考えを読んだように、ユリウスが腰に片手を当てる。


「つまり、水回りにもガタが来ているということだ。放課後見てやるから、一緒に帰るよ」

「ありがとうございます」


 リオは素直に礼を伝えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ