表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第7章 囮都市
54/58

第4話 異形の足音

 警戒を続けること数時間。

 時折出現する瘴気魔獣への対応にも慣れ、太陽は真上に差し掛かろうとしていた。


「一時間で交代をしましょう」


 そんな声が聞こえ、あちこちで食事の用意が始まる。


 リオも、神経を研ぎ澄ますのに疲れ、今は建物の陰で壁にもたれて座っていた。

 隣のアレンは腕を組み、立ったままじっと周囲を見つめている。


「父さん、お腹空いた……」


 そういえば、朝食も食べそびれていた。

 配布のパンは、夜勤組に優先して配られたからだ。


「昼食の準備ができたら、食べに行こう」

「うん……」


 全部、あの裂け目のせいだ──リオは恨みがましい目で見てしまう。


 ──ずるり、と音がした。


「え?」


 音のした方向に目を向ける。

 アレンがリオの傍に膝をつく。


 裂け目の一つから、何かが出ていた。

 先のとがった、脚のようなもの。

 動くたびに黒い液体をまき散らし、足元をぬらしていく。


 ずるり、ずるり──引きずるように姿を現したのは、多脚型瘴気魔獣。

 (たこ)のようだが、まったく異なる。


「戦闘準備!」


 アレンが叫ぶ。

 休んでいた者たちも立ち上がり、各々武器を構える。


 その瘴気魔獣は一体ではなかった。

 複数ある裂け目から、一体、また一体と姿を現す。

 視界に入るだけでも片手を超えている。


 食事用の台が瘴気魔獣に押され、倒れる。

 皿の割れる音が響いた。

 現場が混乱する。


 黒光りする多脚は、流動的にねじれ、通路の隙間を滑る。

 壁や天井を縫うように伸び、どこから襲ってくるか、目で追い切れない。


「くそっ、どこから来る!?」


 狩人の剣が届きそうで届かない。

 触れる瞬間、脚は水のように形を変え、空振りに終わる。


「このままでは、食事どころか補給もできません!」


 悲鳴交じりの声が上がる。


 影のように蠢く多脚が、通路を縦横無尽に這い回る。

 リオは必死に目を凝らすが、脚の形は瞬時に変わり、どの脚が自分に向かうのか判断できない。


 ──足元で液状の脚が跳ねた。

 瘴気魔獣が間近に迫ったことを告げる合図。

 考えている暇はない。

 リオは本能的に剣を振るった。


 アレンが瘴気魔獣の頭を斬り飛ばす。

 だが脚はなおも蠢き、攻撃を続ける。

 リオの耳に、父の小さな舌打ちが聞こえた。


 瘴気魔獣の体は、更なる追撃で細かく切り刻まれた。

 ようやく動きを止め、塵となって消える。


「学園にも緊急要請を!戦える者を少しでも増やすんだ!」

「はい!」


 アレンが近くの狩人に指示を出す。

 辺りがまた、喧騒に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ