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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第7章 囮都市
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第3話 安堵という罠

 違和感を感じつつも、無事に応援部隊が駆け付け。

 溢れていた全ての瘴気魔獣は討伐された。


 太陽はもう、すっかり高く昇っている。


「あー、ようやく休めます……」


 聖導士がへなへなと座り込む。


「狩人と聖導士が組めば、瘴気魔獣なんて敵じゃないぜ」


 その声は空元気だったが、自信に満ちていた。


 リオは、息をついて剣をしまい、すぐ近くにいるアレンに駆け寄った。

 アレンも剣は鞘に納めているが、尚も険しい目で裂け目の一つを見つめている。


「これ、攻撃したら消せないかな」

「いっそのこと、中に入れば……」


 若い狩人二人が、裂け目の近くでのんきに話す。


「閉じるときは一瞬だ。泣き別れになりたくなければ、やめておけ」


 アレンの短い注意に、振り返った狩人たちは体が真っ二つになる様子を想像して青ざめ、ぶるりと震えた。


「けど本当に、閉じないね。前回は大きな瘴気魔獣を倒したら閉じたんだった?」

「ああ……そうだな」


 今回はまだ閉じない。

 数も多く、視界に入るだけでも片手ほどある。

 裂け目には闇が広がり、またいつ瘴気魔獣が出てくるかわからない。


「交代するから、夜勤組は休んどけー!」

「あー、ようやく寝れるよ」


 朝の静寂に、安堵がゆっくりと広がる。


「……静かすぎる」


 アレンが小さく呟いた。

 騒がしくなっていく周りに、その呟きは掻き消される。

 だが、リオの耳には届いていた。


 先程までは、瘴気魔獣が雪崩のように溢れてきていたというのに。

 あの喧騒が嘘のようで、不気味だった。


(マスター)、休息をとりつつ、警戒を続けます」

「頼んだ」


 応援で駆け付けた狩人や聖導士が見張りに回る。

 夜勤からの戦闘で疲れた者は建物にもたれて座り込み、船を漕ぐ。


 簡易的な朝食が振舞われる。

 湯気の立つスープの匂いが漂い、疲労と眠気をわずかに和らげた。


 その時、リオの背筋に、ひやりとした感覚が走った。

 はっとして裂け目の一つを見る。

 犬に似た瘴気魔獣が、ずるりと裂け目から現れる。


「うわあ!」


 狩人が驚きつつも、すぐに対応する。

 近くの地面には、受け取り損ねて落ちたパンが転がっていた。


 瘴気魔獣は塵のように崩れ、静かに消える。


 陽は高いのに、空気が重く沈み、光が届かないような不穏な静けさが広がった。

 まだ終わっていない──まるで、休むことは許さない、と告げられているようだった。


「くそが!」


 誰かが、大声で悪態をついた。

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