表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第7章 囮都市
52/61

第2話 裂け目が描く網

 それは前触れもなく、夜明けとともに起こった。


 まだ眠りに包まれたグランゼリア全域、街のあちこちに黒い裂け目が出現する。

 監視役の狩人たちはそれを見つけ、警鐘を鳴らした。


 *


 突然のけたたましい音に、リオは飛び起きた。


「何!?」


 寝ぼけながら部屋を見回すと、アレンが窓から外を睨んでいる。


「動けるか?」

「うん」


 急いで身支度を整え、アレンとともに窓から飛び出す。

 警鐘は鳴りやまず、あちこちから同時に響いていた。


「一番に鳴ったのは錬環区(アルケイン)だ。あそこを狙われるとまずい、急ぐぞ」

「うん!他は大丈夫なの?」

「ああ、対策は打っている」


 リオは少しだけ安堵するが、心臓は早鐘のように打つ。

 父の背を追いながら、掌に汗がにじんだ。


 *


 錬環区(アルケイン)はヴェルディア学園から近い。

 区画に辿り着くと、狩人や聖導士たちはすでに瘴気魔獣と戦闘中だった。


 夜が明けて間もないため、皆眠気に抗いながら戦っている。

 足取りや攻撃にもわずかなぎこちなさが混じっていた。


「何があった?」


 アレンが尋ねると、若い狩人が驚きで固まる。


「え!?あ、はい……突然、黒い裂け目が複数確認され、そこから瘴気魔獣が現れました!」


 リオは視線を狩人たちの先に送る。

 三日前に見たのと同じ漆黒の裂け目があった。

 胸がぎゅっと締め付けられ、息が詰まった。


(マスター)、想定内だ!瘴気魔獣自体も一般的なものばかりで、応援が来るまでの対処には問題ない!」


 別の狩人からも報告が飛ぶ。

 アレンの言う通り、対策が効いているようだ。

 リオはほっとした。


「……盤の遊戯をしているようだ」


 アレンの声は低く、その目はどこか遠くを見ているようだった。


 裂け目から瘴気魔獣が次々と這い出すが、前回と違う点があった。

 建物には触れず、逃げ惑う研究員などの非戦闘者は傷つけることなく、目もくれない。


「こいつら、俺たちだけを狙ってる……?」


 また別の狩人が声を上げる。

 武器を持つ者だけに向かうかと思えば、支援に回る聖導士には襲いかかろうとする。

 慌てて近くの狩人が魔獣を切り伏せる。


 瘴気魔獣は、リオとアレンにも向かってくる。

 小型から中型の影が次々と這い出す。

 すぐに対処できるとはいえ、リオの手は自然に震え、背筋を冷たい汗が伝う。


 人を見れば襲いかかってくる。

 それが、瘴気魔獣の特徴のはずなのに。


「なんだ、これ……」


 ぞわりと背筋に悪寒が走る。


 疲労で目が覚めきらない中、近くで眠気まじりの怒声が飛ぶ。


 リオは思わず足を踏み止め、目の前で戦う父と狩人たちを見つめた。

 心臓が喉まで跳ね上がる感覚──恐怖と緊張が全身を支配していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ