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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第6章 真相への手がかり
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第5話 潜む意図

 最後に、古代の日常生活に関する資料を見てみた。

 だが、一か所に留まらず、転々としていたということしかわからなかった。


「なんで旅するような真似を?」

「魔獣から逃げてた……とか」

「瘴気を操れるのに?」


 確かに、矛盾している。

 戦う力があるなら、留まった方が安全だろうに。

 リオは眉をひそめ、考え込む。


「瘴気を操れるってことは、瘴気魔獣も操れる?」

「……ああ。可能だ」


 研究者の素朴な問いに、アレンが淡々と答える。

 場の空気が一瞬だけ硬くなった。


 リオはその言葉を頭の中で反芻する。


「だったら、なおのこと魔獣なんて恐れる必要ないよな」


 複数の研究者たちは揃って腕を組み、首を傾げた。


「そういえば、過去の記録を漁っていて、ひとつ気づいたことがあります」


 ヴァルセリオが、一枚の紙を取り出した。


「人々の話をまとめたものなので、信憑性には欠けますが……どうやら、四十年ほど前から、急に瘴気魔獣が増えたそうです」

「そういえば、子どものころは瘴気魔獣なんてほとんどいなかったな」


 初老の研究者が、髭を撫でつつ言った


「私も今年で五十ですが……成人した頃にはすっかり、瘴気魔獣の存在が当たり前になっていました」


 ヴァルセリオの言葉に、リオは驚いて振り向く。


「先生、五十歳なの!?」

「ええ」


 もっと若いと思っていたリオは愕然とする。

 しばし言葉を失った。


「私も、真っ当に生きていれば、恐らくもっと若く見えたのでしょうが……」

「もっと!?」


 聞き役に徹していたイリスが、思わず声を上げる。

 部屋に軽い笑いが走るが、すぐに緊張が戻る。


「お前たち、集中しろ。……瘴気と瘴気魔獣の増加に関連があることは、最近の記録でも明らかになっている」


 アレンが話を戻す。


「じゃあ、その頃から急に瘴気の量が増えた……?」


 瘴気で動くかもしれない、遺物。

 その瘴気の量が増えている事実。

 フィオナの、誘拐。


 点が繋がりそうで、でもまだ線にはならない。

 考えが交錯する。

 言葉が意味を失い、数字が形にしか見えなくなる。


 頭の奥で、何かが軋むように鳴った。

 考えるたびに、思考が砂の中へ沈んでいく。


 だめだ、わからない。

 リオは腕を組み、うつむきがちに小さく唸った。


「知識は万能ではない。だが、やはり……人類を敵とする存在がいる」


 アレンは一度、深く息を吐いた。


「そして──その敵は、恐らく俺たちの予想よりも、遥かに手強い」


 アレンの重い声が、静まり返った部屋の空気にずしりと響いた。


 誰も口を開けないまま、沈黙が長く続いた。

 紙の上の文字だけが、微かに光を反射していた。

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