第4話 効率の痕跡
続いて、リオたちは遺物の設計書らしきものに目を移した。
「この異常な設計や配置、わからないところだらけだけど、なんだか美しいな」
研究者の一人が感嘆を漏らす。
「確かに。無駄がない感じがすごい」
別の研究者も感心したように言った。
リオには芸術のセンスはない。
しかし、線の真っすぐさ、交わり、並行、直角の織り成す秩序には、なぜか目を奪われるものがあった。
「これ……」
リオは紙から目を離し、マグナ・オルビスを見つめる。
「設計図の線と、ひび割れのような線……似てますね」
その言葉に、周囲の研究者たちも次々と集まり、低い声で確認する。
「本当だ……」
「言われてみれば確かに……」
リオの心臓が軽く跳ねる。
興奮と少しの不安が混ざった感覚だ。
「ヴァルセリオ先生、野外訓練の時のあれ、ありますか?」
「ええ、ここに……」
リオは、野外訓練で拾った薄片を虫眼鏡で覗く。
目を凝らすと、思わず体が前のめりになる。
マグナ・オルビスのひび割れよりも細やかな線が刻まれていた。
「すごい……こんな小さなものに、何でこんな線を刻んだんだろう」
隣で机に腰を預けていたアレンが眉を寄せる。
リオは顔を上げた。ふと疑問が浮かび、眉間にしわが寄る。
「これで結界を作ったのかも、と聞きましたが……動く瘴気魔獣に結界の核──結界の中心となる装置──を持たせますか?」
「これ、瘴気魔獣が持ってたのかい?」
問われて、頷く。
「そんなことをしたら、結界の端の人は何度も叩きつけられ、ボロボロになります」
「確かに……」
「実用的じゃないな」
研究者たちは眉を寄せ、頭をひねる。
「これも、動かせなかったんですか?」
リオが問いかけると、研究者が肩をすくめる。
「色々試してみたけど、まったく反応がないんだよ」
心底残念そうだった。
リオは少し安心する。
だが、胸の奥に冷たさが残る──何か、まだ完全には理解できないものがある。
「これは、初めて確認された形状ですから。ここで推測は切り上げ、次の資料に移りましょう」
ヴァルセリオに促されて、リオは深呼吸して頷いた。




