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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第6章 真相への手がかり
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第2話 古代語の囁き

「アレン!リオ君!」


 ヴァルセリオが二人を呼ぶ。


「現在、錬環区(アルケイン)で所持している古代語の写しをすべて集めました。解読済みのものが八割ですので、残り二割を高速で終わらせてくれませんか?」


 アレンが頷くと、次から次へと書類の束が手渡される。

 紙たちは机をあっという間に埋め尽くし、やがて床にも積み上がる。


「え……これで二割?」


 リオの顔が引きつる。


「これでも、十年以上かけて……ようやく八割解読したんですよ」


 ヴァルセリオが疲れたように目元を押さえる。

 膨大な作業量に、苦労の跡がにじむ。


 時間も惜しいので、早速取り掛かる。

 リオも気合を入れて文字を追うが、アレンの速度には遠く及ばない。


「父さん、実は古代から生きてきたんじゃないの?」


 思わず口に出すと、アレンが困ったように視線を向けてくる。


「そういうわけではないが……すまない。俺はお前のように努力して覚えたわけではないんだ」

「えー……やっぱり生粋の古代人なんじゃ……」

「ほら、手を動かせ」


 リオは「はーい」と間延びした返事を返し、文字を追い続ける。


 *


 ユリウスとイリスも紙の整理を手伝ってくれている。

 その音が、静かな励ましのように聞こえた。

 視界の端にそれを捉えながら、リオは作業を進める。

 たまに軽く肩を伸ばし、深呼吸をする──それだけで少し気持ちが落ち着く。


 資料の内容は、遺物に関する情報と瘴気に関する情報がほとんどだ。

 しかし、時折、それ以外の古代の知識や技術、日常生活に関する記録も混じる。

 リオはそれらも解読しつつ、分類していく。


 そして、解読と分類が終わった資料を、ヴァルセリオや研究者たちが手早くまとめていく。

 その場は、叡智を総動員する──まるで静かな戦場だった。


 *


 母を助けるための調査だったが、解読を進めるにつれて、少しずつ古代が身近な存在に感じられるようになってきた。


「“ルミナス”、か……」


 聞いたことはないはずなのに、どこか懐かしさを感じる響きだった。

 リオは手を止め、その文字を凝視する。

 頻繁に出てくる文字は二種類──“瘴気”と“ルミナス”だ。


「“ルミナス”って何だろうね」

「音としては読めるが現代の言葉に当てはまらない。今は存在しない何かと考えるべきだろう」

「なるほど……」


 リオは小さく頷き、また文字を追う。

 だが、頭の片隅で、文字が語る古代の秘密や、遺物の設計図に潜む意図がちらりと浮かぶ。

 小さな違和感が、リオの胸奥で静かに燻っていた。


 その違和感が何を意味するのか──この時のリオは、まだ知らなかった。

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