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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第5章 影の訪れ
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幕間 飛竜語

「次は飛竜語か」


 ある日、父が突然そんなことを言い出した。


「飛竜語?」

「ああ。飛竜の言葉だ」


 それから数日後、訪問者があった。

 赤茶の短髪に焦げ茶の瞳をした男は、ジークと名乗った。


「いやあ、でっかくなったな。リオも」


 頭をかき混ぜるように撫でられ、首がもげそうになる。


「で?ラブレターが来たと思ったら、なに、何かあった?」

「飛竜を借りたい」


 アレンの言葉に、ジークは隣に立つ飛竜を抱きしめる。


「ダメだ!いくらお前でも、ダメに決まってるだろ!この子は俺が卵から孵して……」

「誰も奪うとは言っていないだろ」


 アレンが眉を寄せる。


「リオに飛竜語を教えたいんだ」

「はあ?飛竜語?」


 アレンを見て、目を丸くしたジークは、やがて腹を抱えて大笑いする。


「おま……飛竜語って。無理に決まってんだろ」

「リオならできる」


 ジークがリオを見る。

 リオは首を横に振った。


「ほら、リオの方が頭がいい!」

「やってみなくては、わからないだろう」


 アレンが少しすねたように言った。

 その表情が珍しく、リオは少しやる気を出す。


「俺、やってみる!」


 こうして、飛竜語の特訓が始まった。


 *


 結論から言おう。無理だった。


 飛竜の言葉は特殊で、発音が難しい。

 人は耳では聞き取れるが、声帯の構造的都合上、表現することはできないのだ。


 だから、竜騎士たちも普通に話しかける。


「いいか?キュウ、がおはよう。キュウ、がおやすみだ。やってみろ」

「わかんないよっ!」


 ジークの相棒の飛竜が、どこか呆れたような目を向けてくる。

 父はズレている。

 そのことに、初めて気づいたリオだった。

リオの幼い頃からの特訓は、いつもこんな調子でした。

まずは全部やってみる。できなければ、潔く諦める。

その厳しくも愛のある英才教育とスパルタぶりは、アレンとリオだからこそ成り立ったものかもしれません。

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