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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第5章 影の訪れ
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第8話 夜の反省と決意

 たくさん泣いて少しすっきりしたリオは、父の分までトレーに載せ、食堂から戻った。


「ありがとう」


 アレンが穏やかに受け取った。


「父さんが行ったら、大騒ぎになるからね」


 リオの言葉に、アレンが眉を寄せる。


「大げさなんだ。何故みんな、ああ騒ぐのか……」


 リオは小さく笑った。

 かじったサンドイッチは、まだ少し塩辛かった。


 *


 食後、アレンに頼まれて二人分の洗浄魔法をかけた。

 魔法が触れた瞬間、アレンがわずかに眉を上げた。


「相変わらず……不思議な感覚だな。何度受けても慣れない」

「早い、確実、快適が売りだから」


 涙で赤くなった目をこすりながら言うと、アレンは頬を緩めた。


 *


「明日は引き続き、フィオナの件を調査する。ヴァルセリオと、錬環区(アルケイン)に行くぞ」


 布団にもぐるリオに、アレンが静かに告げる。


「え?でも痕跡は何もないって……」

「そこは何とかする。今はとにかく情報が欲しい」

「学校は?」

「それどころじゃない。休め」


 ええ、俺学生なんだけどな──胸の奥で小さくつぶやきながらも、リオは布団から頭だけ出して思わずうなずいた。


 布団の中で、リオの脳裏に、漆黒の闇に沈む母の安堵した顔が蘇る。

 新たな古代の遺物、定期的に現れる魔獣や瘴気、そして裂け目──わからないことだらけだ。

 けれど、知らなければ何も守れない。


 少しでも知識を得て、母を助ける。

 リオは静かに決意を固めた。


 アレンが軽く手を振ると、部屋の灯りが消える。

 相変わらずの詠唱破棄、便利だなと思う。

 部屋に父がいるというのも、変な気分だった。

 リオは少しだけ目を開けて、アレンの姿を見つめる。


 窓から風が吹き込み、月明かりがアレンの金髪を照らす。

 カーテンがひらりと揺れて──すっと、音が止んだ。


 少しして、椅子に座っていたアレンが窓の方にゆっくり体を向けた。


 リオは小さく息をのむ。


 眉間のしわは深く、先ほどまでの穏やかさは消えていた。

 風が止み、空気そのものが硬質に変わる。

 静けさが、部屋を満たしていく。


 アレンがゆっくりと目を閉じる。

 その体から、空気を震わせるほどの魔力が立ち上る。

 部屋の温度がひやりと下がり、月光だけが鋭さを増し、室内を白く切り取った。


 布団の中からそれを見ていたリオは、ようやく気付く。

 そして息をひそめた。


 父は──怒っている。

 息を吸うことさえ、許されないような静けさだった。

 その圧だけで、リオは身じろぎもできなかった。

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