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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第5章 影の訪れ
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第1話 平穏の崩れ

 リオは今日もユリウスと並んで登校していた。

 広場に着くと、待っていたらしいイリスが手を振ってくる。


「おはよう、イリス」

「おはよう。先輩も、おはようございます」

「おはよう」


 挨拶を交わし、三人は肩を並べて歩き出す。

 イリスは小さく鼻歌を口ずさみ、足取りも軽い。


「どうしたの?イリス。いいことあった?」

「ええ、そうなの!」


 イリスが腰の後ろで手を組み、くるりと一回転した。


「昨日、両親に会ったの」

「へえ、いいなあ」


 俺も──会いたいな。

 一瞬、胸の奥が締め付けられた気がして、リオは笑ってごまかした。


 その視線の先で、ユリウスの笑みがかすかに揺れる。

 その表情にはどこか影が差していた。

 リオはそれに気づき、すぐに話題を変える。


「俺も、昨日は先輩と街に遊びに行ったんだ」

「いいわね!どこに?」

市場区(マーケット)。魔道具屋に行って、屋台で買い食いして……」


 小さな騒動に巻き込まれたことを話すと、イリスは目を丸くする。


「最近、街も変よね。──そういえば、父も母もどうしてグランゼリアに来てたのかしら」

「普段はここにいないの?」


 リオが尋ねると、イリスが頷く。


「両親は竜騎士だから。普段は飛竜に乗って、いろんな場所を飛び回っているの」

「あ、そっか」


「イリスも、竜騎士になるの?」


 ユリウスの問いに、イリスは胸を張って笑う。


「もちろん!アリアと一緒に二つ名をもらうんだから」

「いいね。イリスも“紅の戦姫”みたいに呼ばれる日がくるのか」


 素敵だな。

 リオが笑うと、イリスは少しだけ眉をひそめた。


「あれは……ちょっと派手だから。私はもっと落ち着いた呼び名がいいわ」

「えぇ、格好いいと思うけどな」


 イリスは胸の前で手を組み、目を輝かせる。


「“金の狩人”とか“銀の狩人”みたいに呼ばれたいの。素敵でしょ?」

「いや、あれは……あれはさあ」


 今度はリオが微妙な顔をする。


「はいはい、続きはあとで。行くよ」


 呆れたように言うユリウスに促され、リオとイリスは慌てて返事をして、その背を追った。


 *


 教室へ向かう途中、職員室の前がざわめいていることに気づき、三人は足を止めた。


「何だろう?」


 互いに顔を見合わせるが、二人とも首を傾げる。

 そこへ、同級生の一人がこちらを振り向き、目を輝かせて手を振った。


「リオ、イリス!おいでよ、すごいよ!」


 その表情に興味を引かれ、無意識に足が前へ出ていた。

 リオは笑顔のまま、ざわめきの中心へと歩み寄る。


 そして──職員室の前に立つ影を見て、足が止まった。

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