幕間 イリス
午後の休みを使って、イリスはアリアとともに、グランゼリア中央の王冠区を訪れていた。
中央には大きな広場や噴水、重厚な尖塔建築が立ち並ぶ。
壁や屋根には金や銅の装飾が施され、広場周辺は白や明るい石材で清潔感と威厳を演出している。
並木道や街灯も整備され、昼夜問わず都市の華やかさを感じさせる。
ここは行政や商業、儀式の拠点で、制服姿の官僚や学者、警備が行き交う。
祝祭の際には広場に旗や紋章が掲げられ、まるで区域全体が“王冠”をかたどっているかのようになるそうだ。
その中央の広場が、イリスの目的地だった。
白銀と紅を基調にした竜騎士甲冑を纏う二人が目に入り、イリスは駆け寄る。
「お父さん、お母さん」
二人が振り返る。
父は赤茶の短髪をオールバックにし、焦げ茶の瞳だ。
母は真紅の長髪を高く結んだポニーテールで、瞳は金色に輝く。
「イリス!アリア!元気にしてたか?」
父親に持ち上げられ、イリスは顔を赤くする。
「やめてよ、お父さん!恥ずかしいわ!」
母親は苦笑し、後ろにいた飛竜に目を向けた。
飛竜がアリアに顔を寄せ、アリアも嬉しそうに応じる。
「ジーク、イリスももう十四なんだ。子ども扱いはほどほどにしないと、嫌われるぞ」
ジークはショックを受けたように固まり、そそくさとイリスを下ろす。
「イゼリアだって、今日をすごい楽しみにしてたくせにさ」
「ちょっと、イリスの前で言わないで!」
耳まで赤くなったイゼリアがジークの腕を叩く。
ジークが笑い、相変わらずの両親の様子に、イリスも自然と頬を緩める。
「友達はできたか?」
ジークに問われて、イリスは頷く。
「同級生の友達もできたし、先輩とも知り合えたのよ」
興奮しながら、両親に伝える。
「特に仲がいいのが、リオっていう子なの。だいぶ変なんだけど、面白くてね……」
「リオ?」
父がリオの名前を繰り返す。両親の笑顔が一瞬止まる。
だがイリスは興奮のままに続ける。
「先輩はユリウスっていって、落ち着いてて頼りになるの」
「……ユリウス?」
今度は、母がユリウスの名前を繰り返す。
イリスは話し終えると、両親の反応が少しおかしいことに気づく。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと待ってな。今頭の整理を……」
父は額を押さえる。
「ふふ……友達ができてよかったな」
先に立ち直った母に頭を撫でられ、イリスは首を傾げる。
今日の両親は、少しだけ変だった。




