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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第3章 仲間との絆
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幕間 手紙 -side ヴァルセリオ-

 歴史の授業の後、職員室に戻ったヴァルセリオは、自分の机に座る。

 顔を両手で覆い、深くため息をついた。


 十六年前の話をするのは、いつも一番堪える。

 なぜなら、カルドニアの戦いを引き起こしたのは、他でもない自分だからだ。


 心の底から、竜こそが救いだと信じていた。

 だから、小さきもの、弱きものを切り捨ててでも、世界を──竜を──救おうとした。

 だが、それは誤りであり、傲慢でしかなかった。

 アレンたちが、自分を止めてくれたのだ。


「ダリオスさん……」


 机に頭を落とす。額を打ち付けても動けない。


 リオからその名が出たとき、責めるつもりではなかったことは理解していた。

 それでも、胸にずしりと重くのしかかる痛みに少し泣いてしまった。

 ダリオスの命を奪ったのは、結局自分なのだ。


 ダリオスは、マグナ・オルビスの暴走を止めるために死んだ。

 マグナ・オルビス──瘴気の力で世界を縛り、従わせる道具。

 そんなものがこの世にあってはいけない。

 ダリオスは己の命を懸けて、それを壊した。


 だが、元を正せば、マグナ・オルビスを使ったのは自分だ。

 つまり、自分がダリオスを殺したのだ。


 今でも胸が痛む。

 少しでも償えるよう、一生懸命研究に励んだ。

 新しい発見を重ね、認めてもらえるよう努力した。


 今では教師として、一つのクラスを任されるまでになった。

 それでも、今も、この胸の痛みは消えない。


「ああ……カルドニアの戦いのことを話しそびれました…」


 他に誰もいない職員室に、ヴァルセリオの反省の声が静かに響く。


 *


 しばしぼうっとしたあと、ヴァルセリオは頭を持ち上げ、引き出しを開けた。

 狩人と聖導教会に連絡を取らなければ。

 平穏の裏で、大きな何かが頭をもたげようとしている気がする。


 聖導教会の最高位、大導師宛ての手紙を書き終えると、続いて狩人の(マスター)宛ての手紙に取りかかる。

 必要事項を書き終えたが、ペンを持つ指が震える。


「アレン……」


 私は、償えているでしょうか。

 思わず震える文字でそう書き、苦笑する。

 ダリオスはアレンの師だ。

 きっとアレンが一番、自分のことを恨んでいるのに。


「すみません…少しだけ寄りかからせてください」


 謝罪しつつ、肩の力を抜いて手紙を折り、封をする。

 綺麗な夕暮れが、書いた手紙を見つめるヴァルセリオを優しく照らしていた。

ヴァルセリオには、忘れられない言葉があります。

「──理想を人に説くには説得力がいる。説得力のない理想は、ただの妄言だ」

これは、ダリオスの言葉です。


教師となった今、彼は正しいことを、間違いなく、忠実に教えることを常に意識しています。

研究と教育──これが、彼が選んだ償いの形なのです。

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