第8話 夜の振り返り
「古代の遺物って、なんかこう、くすぐるものがありそうでないよね」
「そうかな?」
「どっちかというと、俺は瘴気の方が興味ある」
「うわ、本気で言ってる?それ」
今日もまた、リオは隣室を訪れていた。
昨日と違うのは、ベッドにくつろぐユリウスと向かい合って話していることだ。
「“知って理解すれば、恐れる必要はない。”」
リオは心の中でヴァルセリオの姿を思い浮かべながら呟いた。
ユリウスが首を傾げる。
「何それ?名言?」
「うん、俺は名言だと思う」
リオは椅子の背を両手で持ち、ぐるりと回りながら続ける。
「瘴気って、まさにそれだと思うんだ。正体がわからないから恐れられていた。でも、それが何か理解できれば、人は立ち向かうことができる」
「ふーん…まあ、確かに」
「けど不思議だよね。ただの人の想いなのに、どうしてそんな力を持つんだろう」
「力?」
リオは頷く。
「見たでしょ、今日の瘴気魔獣。魔獣も強いけど、瘴気魔獣に変化した途端、戦闘力が飛躍的に上がるんだ。それって、瘴気の力がすごいからじゃない?」
ユリウスは難しい顔をする。
「でも、ただの人の想いでしょ?」
「うーん」
リオは考えながら、椅子ごとくるくる回る。
目が回ってしまった。
「難しいことは錬環区の学者や研究者に任せておけばいいよ」
ユリウスが慌てて椅子を止める。
目が回ったリオは床に倒れた。頭を打つ。痛くてリオは呻く。
「ばか、これ以上頭がよくなったらどうするんだよ」
ユリウスが手を引いて起こしてくれる。
「そしたら、世界の真理でも解き明かそうかな」
「何だ、それ」
二人はひとしきり笑いあった。
「明日、授業は午前だけだからね。午後は街に行ってみるか?」
「本当!?行きたい!」
「どこに行きたいか、考えときなよ」
リオは元気に頷く。明日も楽しみだ。
でも、今日は疲れた。
リオはあくびをしながら、人差し指をくるくる回して詠唱を紡ぐ。
さっさと身綺麗にして寝よう。
ついでにもう一人分、ユリウスも綺麗にしてあげよう。
「リオ!?」
ユリウスの焦った声。
リオは無視して指をくるくる。
「リオォォオオオ!」
今日も学園は平和だった。




