第6話 残響
帰りの馬車の最後尾には、教師二人とリオ、イリス、ユリウス、そして二年の先輩が乗っていた。
先輩は早々にうとうと眠り始め、前方の馬車も初めは賑やかだったが、今は疲れて眠ったのか静まり返っている。
「瘴気魔獣、ですか」
ヴァルセリオが重く呟いた。
「色々な生き物を組み合わせたような見た目でした」
リオがそう告げると、二年の教師は一瞬、言葉を失った。
「それは…おぞましいですね」
姿を想像したのか、口元に手を当てて青ざめる。
「おかしいですね。瘴気魔獣は、元の原型をある程度留めているはずです。今回の魔獣を表現するなら……そうですね、合成獣とでも言いましょうか」
顎に手を当てて言うヴァルセリオの言葉を、リオは口の中でそっと反芻した。
「瘴気の腕で、見境なく攻撃してきました。アクア・シールドが破られたときは、本当にどうなるかと……」
ユリウスは自分の掌を見下ろしながら、息を漏らす。
「腕を切っても、すぐに再生するんです」
イリスも続けた。
「見たことのない魔獣、グランゼリア近郊での瘴気魔獣……不穏な感じですね」
考え込むヴァルセリオに、リオはハンカチを取り出した。
「先生。瘴気魔獣の消えた跡から、これを見つけました」
布を広げると、ヴァルセリオが驚愕に固まり、言葉を失った。
「これは……本当に、これが?」
「はい。地面に落ちてました」
ヴァルセリオが震える手で、ハンカチごと欠片を受け取る。
「この素材は……しかし形状的に破片ではない……?」
「見たことあるんですか?」
さすが先生だ。だが、ヴァルセリオの表情は硬い。
しばらく欠片を無言で見つめ、重い口を開く。
「今日の午後の授業で話すつもりでしたが……カルドニアの戦いをご存じですか?」
リオは頷く。
十六年前に、竜を信奉する“救済の環”が引き起こした戦いである。
狩人の前身である旅人と竜騎士団、さらに聖導教会が一丸となった光盟側が勝利した戦い。
「そのときに使われた古代の遺物があります。マグナ・オルビス──直径三十センチほどの円環です。それと、この欠片は、同じような素材でできています」
「古代の……遺物……」
リオは欠片をじっと見つめる。
指先でつまめるほどの小ささなのに、これで一体、何ができるのだろうか。
“古代の遺物”──本来なら胸をくすぐる響きのはずなのに、なぜか背筋をひやりと走る感覚が、ずっと付きまとう。
きっと気のせいだ。そう思いたかった。




