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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第3章 仲間との絆
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第3話 乱入する影

 無事に川に辿り着いたリオは、上着を脱ぎ、腕まくりと足まくりをした。


「魔法で捕まえられないの?」


 イリスに尋ねられ、リオは笑う。


「普通にとった方が面白いと思って」

「何それ…」


 イリスは額に手を当て、呆れ顔になる。


「理解できない……」

「変わった一年だな」


 ユリウスがため息をつき、二年の先輩は笑った。


 リオは川に足をつけ、水面をじっと見つめる。

 魚の影を捉えると、手を素早く払った。

 魚が宙を舞い、ユリウスが水魔法で作った水球がそれを受け止める。


「あいつ、熊?」


 二年の先輩が笑いを堪えてリオを指さす。


「人間だよ。……たぶん」


 ユリウスが死んだ魚のような目で答える。


「ひどいな、正真正銘人間だよ!」


 リオは川の中から抗議する。

 イリスは静かに火を起こし、焚火の準備を始めた。


 十分な数の魚を捕り、石で囲んだ水場に放す。

 昼になればいつでも焼き魚ができる。


 焚火の傍に腰を下ろしたリオは、ようやく小さな異変に気付いた。

 森が妙に静かだ。


「あれ?」


 何だろう、この違和感は。


「どうかした?」

「んー…」


 イリスに問われ、リオは空を見上げる。

 空が揺れている。

 まるで、こちら側と空との間に何かがあるようだ。


「これは……」


 何だろう──そう言いかけた瞬間、ピューと風を切る音がした。

 続いて小さな爆発音。

 空に赤い光がふわりと浮かんだ。


「あれは…信号弾!?」


 二年の先輩が叫ぶ。

 誰かが魔道具を使ったらしい。

 リオたちはすぐに立ち上がる。


「森を出るよ!」


 ユリウスの声で、焚火の火を消して森の中へ。

 来た道は覚えている。逆にたどればそれほど時間はかからない、筈だった。


「あ、先輩!待った!」


 リオが慌てて声をかけるが、ユリウスは振り返りながら何かにぶつかる。


「だっ」


 鈍い音がして、ユリウスは頭を抱えてしゃがみ込む。


「何?何なのよ!」


 イリスがその何かに触れた。

 透明な、目に見えない壁がそこにあった。


「結界…?」


 二年の先輩も信じられない様子で触れる。


「結界って何ですか?」

「あ…いや、耳にしたことがあるくらいなんだけどさ。最近見つかった遺物に、透明な壁で空間を隔絶できるものがあるらしい……」


 リオの問いに、先輩が答える。

 リオは壁に手を伸ばす。

 触れた指先は押しても沈まない。

 まるで空気が固まったみたいだった。


「たぶん、俺たちが入った時にはなかった」

「入った後に設置されたってことね?」


 イリスに頷く。


「少なくとも中からは出られない。外からは……どうだろう」


 信号弾を飛ばせば教師が来るはずだ。

 だが、背後で新たに空気を裂くような音。

 振り返るより早く、赤い光が空を焦がした。

 続けてもう一つ。


 リオは信号弾の方角に一歩踏み出しかける。

 しかし、頭にヴァルセリオの言葉がよぎった。

 教師が来るまでは、ここで待機するのが最善のはずだ。


 頭では理解できる、でも。

 リオはユリウスを見た。


「先輩……」


 情けない声が出る。

 しかしユリウスは笑わず、真剣な表情で頷く。


「確認に行こう、無理そうならすぐ退却。いいね」


 全員が頷いた。

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