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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第3章 仲間との絆
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第1話 朝陽に差すささやき

 この日は、リオが寮の食堂に入ると、ちょうどユリウスが食事をしていた。

 湯気を立てるパンとスープの香りが、窓から差し込む淡い陽光に溶け込む。

 リオは自分の食事を受け取ると、笑顔で駆け寄った。


「先輩、おはようございます」

「ん、おはよう」


 向かいに腰を下ろし、温かなスープをひと口。

 まだ眠たげな体が、じんわりと目覚めていく。


「野外訓練の内容、どのくらい聞いてるの?」


 ユリウスに聞かれて、リオは首を横に振った。


「昨日、説明があったかもしれないんだけど……ちょっと上の空で、耳に入ってこなかった」

「瘴気のこと?」


 リオは頷く。


「確かに、僕も少し気になる。でも僕たちの本分はなんだ?」

「……学ぶこと」


 わかってはいる。

 それでも胸の奥がざわつき、リオはコップを持ったまま考え込んだ。


「何、稀代の天才でもわからない問題があるの?」

「もう、俺だってわからないことくらいあるよ」


 ユリウスは真顔のまま、小さくつぶやいた。


「……天才ってところは否定しないんだ」


 その呟きを気にせず、リオはコップを置く。


「それで、野外訓練って何?」

「……簡単に言えば、生き抜く術を鍛える訓練だね」


 ユリウスが指先でスプーンを弄びながら続ける。


「この学園を出た生徒の進路は大きく三つ。グランゼリアに残る道、狩人に入る道、聖導教会に入る道」


 立てた三本の指を順に折りながら説明してくれた。


「戦いたいなら狩人、慈愛を持ってたら聖導教会に行くといい」

「グランゼリアは?」

「残りの道を選ぶ人向けかな。街を出て旅をすることも多い。だから当然、生き抜く術が必要になる」


 リオは相槌を打って、ユリウスの説明に耳を傾けた。


「だからこその野外訓練。……ということになってる」

「え?」


 最後の言葉に、リオは思わず聞き返す。


「いや、僕も入学時はすごい!って思ったんだ。でも、今の時代にそんな本格的な生き抜く術を磨く必要、ある?」


「ある……かも?」

「ない、ない」


 ユリウスが笑って肩をすくめた。


「先輩は?将来、どの道に行きたいか決めてる?」


 純粋な好奇心から尋ねたその一言で、ユリウスの表情がふっと曇った。

 ユリウスの手が止まり、わずかに震えた。

 カチャン──リオの手からスプーンが滑り落ち、皿に当たった。


「あ、俺……ごめん」


 咄嗟に謝るリオ。

 ユリウスは落ちたスプーンを見つめ、弱々しく笑った。


「いや、僕の方こそごめん。……でも、聞かないでくれると嬉しい」


 リオは何度も頷き、ユリウスが拾い上げたスプーンを受け取った。

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