幕間 ヴァルセリオ先生
放課後、リオは職員室に呼ばれていた。
目の前には、腕組みをして口元にだけ笑みを浮かべる担任のヴァルセリオ。
「リオ君。呼び出された理由、わかりますか?」
リオは周囲を見回す。呼ばれたのは自分だけだった。
「ヴァルセリオ先生」
「はい、何ですか?」
「呼ばれた理由はわかります。でも、俺だけが呼ばれた理由はわかりません」
ヴァルセリオがふっと笑みを消した。
少し驚いたように、リオを見つめる。
「イリスさんとユリウス君は先に呼ばれました。学生として十分な対応だったので、労いと事の詳細を聞くためです」
リオは小さく頷いた。
「リオ君だけ別で呼んだ理由は──叱る必要があるからです」
「俺は褒めてくれないんですか?」
眉尻を下げるリオに、ヴァルセリオはすぐに続けた。
「褒めないとは言っていません。あの人数の学生を守りつつ、魔獣を倒した。それは素晴らしいことです」
リオの表情が少し明るくなる。
「でも、だからこそ私は叱ります。リオ君は確かに強い。しかし、ここは学園です」
ヴァルセリオが真っすぐリオの目を見つめる。
「ここでは、貴方は守られるべき存在です。決して無理をしてはいけません」
その言葉は、すとんと胸に落ちた。
ヴァルセリオはリオを卑下しているわけではない。
先生として、生徒を思いやった言葉だった。
それがわかったから、リオは胸の重さを解かれるように、素直にうなずいた。
「頼みますよ。……貴方に何かあったらと思うと……」
「え?」
聞き取れなかったリオに、ヴァルセリオは軽く咳払いした。
「とにかく、自分の身の安全を第一に考えること。わかりましたね」
「はい、先生」
リオはぺこりと頭を下げ、職員室を後にした。




