第3話 偶然か工夫か
広場に来たあの一匹が最後で、逃げ出した魔獣はすべて捕獲または討伐されたとのことだった。
学園内がようやく穏やかさを取り戻し、授業も再開される。
今日は魔法担当の教員による実技の時間だった。
「詠唱で属性に繋げて現象を顕現させます。その時、体内の魔力が変換されるので、ゆっくり詠唱して揺らぎを体感してください」
生徒たちは掌で小さな魔力の揺らぎを感じていた。
リオもゆっくり詠唱する。掌の上に集まった魔力が、揺らぎながら形を変え、つむじ風になる。
「この揺らぎが大きくなりすぎると、現象につながる前に魔力が散ってしまいます。気を付けましょう」
リオは敢えて揺らがせてみる。つむじ風が掌の上でくねくねと踊るように動く。
近くの同級生が吹き出して、掌の水泡を弾き飛ばした。頭から滴る水に、少し情けなさそうな表情を浮かべる。
「……揺らぐと、こういうことになります。注意しましょう」
先生の注意が飛ぶ。
「リオ、どうしたら揺らがせるだけで留められるの?」
イリスがリオ同様、つむじ風を両手で作りながら尋ねる。
リオは少し考えて答える。
「少しだけ気を抜いて、すぐにシャキッとすればいいよ」
「少しだけ……」
イリスが難しい顔でつむじ風を見つめる。
「逆だよ、逆。あ、ほら──アリアがすごく可愛い」
「えっ?」
イリスが、端で大人しくお留守番しているアリアに目を向けると、意識がそちらに逸れてつむじ風が揺れる。
「イリス、手元を見て」
「あっ」
視線を戻すと、つむじ風はまた綺麗に形を保つ。
「わかった?」
「うーん…なんとなくわかったような…?」
リオは、右手につむじ風を維持したまま、左手に小さな火の玉を出す。
そしてつむじ風の上に火の玉を乗せた。その瞬間に揺らがせる。つむじ風が炎を纏い、柔らかく舞った。
「すごい、そんなこともできるのね」
「うん。なるほど、揺らがせる。便利だね」
自然と口元に笑みが浮かぶ。
先生は鼻を鳴らし、偶然の産物だと軽く笑った。
リオとイリスの様子を見ていた同級生たちは、好奇心に瞳を輝かせた。
「あ。火だと危ないから、風か水にしようね」
すぐにリオが声を飛ばす。
その後の授業は、同級生たちが“つむじ風または水球を踊らせる”という謎の目標を持つ展開に。
試行錯誤の末、意図的に揺らがせる技術を取得した同級生から歓声が上がった。
もはや教師が何を言っても、生徒たちは聞く耳を持たず、目も合わせてくれない。
しかも「あとにして」と言われる始末。
教師は思わず空を見上げる。その目じりに涙が光った。




