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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第2章 日常に潜む違和感
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第2話 三人の初協力

 教師の言いつけを守って、リオはユリウスと二人で登校していた。

 中央広場に生徒が集まっていて、不安げに話している。


「リオ、おはよう」


 イリスが声をかけてくる。


「何かあったの?」

「男子寮の近くで魔獣が出たんだ」


 イリスの表情が強張る。


「大丈夫だった?」


 リオは頷いた。


「先生が討伐したって。でもまだ残っているらしいから、気を付けろって」

「ああ、それで……」


 イリスがユリウスを見る。


「先輩、おはようございます」

「おはよう」


 互いに会釈を交わす。


「女子寮の方では何も聞いていないから、知らない子も多いと思う。大丈夫かしら…」

「教師が総出って言ってたから。大丈夫だとは思うけどね」


 ユリウスが気楽に返す。

 リオはユリウスに同意しようとしたが、はっとして森の方に視線を走らせる。


「リオ?」


 イリスが声をかけてくる。

 だが、リオは森から目をそらさない。


 ガサリと木の葉が揺れ、影が生徒に飛び掛かる。

 生徒は気付かず、背を向けていた。

 リオは息を止め、素早く駆け出し、剣を抜いてその影を受け止めた。


 猿型の魔獣だ。

 ギラリと光る爪とリオの剣がぶつかり、金属音のようにギリリと鳴る。


 視界の端、あちこちで悲鳴が上がる。

 剣を振り払い、魔獣を後ろへ弾く。

 着地した魔獣は生徒たちを品定めするように眺める。


「魔獣!?」


 ユリウスが杖を構える。

 その隣でイリスも槍を構えた。


 リオはわずかに息を整え、目の前の状況を頭の中で整理する。

 生徒を守りつつ、魔獣の動きを封じる必要がある。


「誰か、教師を呼んできてくれ!」

「は…はい!」


 ユリウスの指示で、生徒の数人が駆けていく。


「時間を稼ぐよ!」


 ユリウスが叫び、詠唱を始める。

 リオは瞬時に読み取り、水球で封じる魔法だと理解する。

 目の前の魔獣の動きを素早く見極め、次の行動を考える。


「イリス、ユリウスを守って」

「わ…わかった!」


 リオは軽く肩の力を抜き、魔獣と生徒たちの間にゆっくりと移動する。

 魔獣はリオを見ると、不快そうにその顔を歪め、飛び掛かってくる。


 落ち着いた動きでまた受け止め、弾き返す。

 短く詠唱し、魔獣を包む炎が地面に円形に燃え上がる。

 魔獣が焦り、空へ飛ぶ。

 リオは見上げた、想定通りだ。


 ユリウスが詠唱を終え、手を突き出す。


「──アクアプリズン!」


 水の牢が魔獣を閉じ込める。

 それを見て、リオは全身の力を少しずつ解放した。


 魔獣の動きが完全に封じられたことを確認すると、息をつき、視線を後ろに向ける。

 教師を呼びに行った生徒はまだ戻らず、教師も来ていない。

 胸の奥に緊張の名残がチクリと残る。


 ユリウスが額に汗を浮かべる。

 手先がわずかに震えるが、視線は魔獣を見据えている。

 それを見て、リオは訊く。


「先輩、持続時間はどのくらいですか?」

「ごふ…10分だ!」


 なるほど、持続は5分。

 それなら、倒した方が早い。


 リオは剣を水平に構えた。

 短い詠唱、剣がぶわりと風を纏う。

 心臓の鼓動が高まる。

 剣を握る手の感覚に集中する──。


 剣を振ると、斬撃が飛んだ。

 ユリウスの魔法ごと魔獣の首は真っ二つになり、広場の石畳に水と共に落ちる。


「え……」

「は……」


 イリスとユリウスがそろって抜けた声を出す。

 リオはふう、と息をついて振り返る。


「急に出てこられたら、驚くよ」


 広場は沈黙で静まり返っていた。

 向けられる尊敬の眼差しに、リオは「あ」と小さく呟く。


「子どもの魔獣だったみたいだ。弱くてよかったー」


 言葉が棒読みだったことに、リオだけが気づいていなかった。

 ユリウスが汗を拭いながら、微妙に拗ねた目を向けてくる。


 リオは少し照れ笑いを浮かべ、視線を逸らした。

 守れてよかった。


 イリスが頭痛を押さえるように額に手を当てた。


 リオは剣を鞘に納めると、完全に肩の力を抜き、ゆっくりと息を吸う。

 まだ胸の奥で鼓動が早いが、守りきった余韻が体を温かく巡った。

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