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託されたお願い
部屋に、小さな子どもがいた。
淡い夕光が窓から差し込み、影が長く伸びている。
遊びに夢中になっていると、ひそやかな足音が近づいてきた。
父がやって来て、いつものように頭を撫でる。
「今日はどんな一日だった?」
問いかけは穏やかで、空気に溶けるようだった。
子どもは、見たこと、気づいたことを一生懸命話した。
微笑んだその人は、ひとつ──頼みごとを口にした。
それは、子どもには少し難しく、けれど──
遠くまで届くような響きがあった。
「うん、やってみる」
子どもは迷わずうなずき、父の手を握り返す。
その温もりを確かめながら、静かな夜が訪れる。
子どもは安心した顔のまま、眠りへ沈んでいった。
──目が覚めると、部屋はひどく静かで、父の気配がどこにもない。
理由がわからないまま、子どもは小さな声で父の名を呼び続けた。
答えはなく、やがて再び眠りへと沈んでいく。
*
永遠とも一瞬ともつかぬ時が過ぎたのか。
ある日、ふと再び目を覚ます。
父はまだ帰ってこない。
ただ──あの日の頼みごとを思い出した。
そばにあったおもちゃを手に取る。
小さな手が、静寂の中で動き出した。




