旧側近の暴露(笑)
リオネル殿下の国外追放から数週間。王都の社交界は表面的には静かになったものの、影では未だ旧側近たちの不満がくすぶっていた。
その中でも、リオネル殿下の元側近、エルヴィン・フォン・ライナーは、私――アローナ・グランツに対して強い恨みを抱いていた。
王都の貴族会議。大理石の床に反響する声が緊張を帯びる中、エルヴィンは立ち上がった。
「皆の者、聞け! アローナ・グランツは、王太子殿下を国外追放に追いやる陰謀に関与していた! あの冷淡なる令嬢が、王族を操ったのだ!」
会議室は一瞬でざわつく。貴族たちが視線を私に集中させる。私は扇子を手に取り、口元に軽く添えて静かに微笑む。
「なるほど、エルヴィン様はそうお考えですか」
私はゆったりと立ち上がり、会議室を見渡す。
「では、いくつかお尋ねしますわ。まず第一に、王太子殿下が国外追放となった経緯は、私の個人的な感情によるものだったとお考えですか?」
エルヴィンは顔をしかめ、反論を口にする。
「そうだ! お前の策略に違いない! 殿下はアローナの言動に振り回されたのだ!」
私は扇子を打ち鳴らし、冷静に言葉を紡ぐ。
「それは誤解ですわ。十年間、私は毎朝欠かさず王太子殿下に手紙を書き、健康や政務の成功を祈り、忠誠を尽くしてきました。その記録はすべて、王宮に保存されております」
会議室の空気が一瞬静まり、エルヴィンの眉がぴくりと動く。
「十年もの間、私が個人的な感情で殿下の立場を左右できると本気でお考えですか?」
私は静かに歩み寄り、巻物を示す。
「王太子殿下の国外追放は、すべて国王陛下の御裁断によるものです。私に操作する余地など、微塵もございません」
エルヴィンは声を荒げる。
「そんな……だが、アローナは殿下に冷淡だった! それが原因で殿下は追放されたのだ!」
私はゆったりと扇子を広げ、目を細める。
「冷淡、とおっしゃいますが、もし私が冷たく愛情を欠いていたなら、なぜ王太子殿下は十年間も忍耐してお務めを果たされたのでしょう?」
「そして、十年の間、私は日々の手紙で殿下の健康を案じ、政務の成功を祈り、感謝の言葉を綴り続けました。もしそれをご覧にならなかったのは、私の冷淡さではなく、机の上の書類の山が原因に過ぎませんわね」
議場から小さなくすくす笑いが漏れ、エルヴィンの顔色は青ざめる。
私はさらに続ける。
「それに、王太子殿下が国外追放となったのは、私の意志によるものではなく、王国の秩序と国王陛下の御裁断の結果です。私が殿下に対して何か策略をめぐらせる必要など、まったくございません。事実に基づかぬ非難で、私を貶めようとすること自体が、貴族として最も愚かで無礼な行為です」
エルヴィンは言葉を失い、手に握った書類をぎゅっと握りしめる。
議員たちも、彼の挑発が完全に裏目に出ていることに気づき、ざわめきながら視線を私に戻す。
「つまり、エルヴィン様がおっしゃる“陰謀”とは、単なる誤解と妄想に過ぎません。私は十年にわたり忠誠を尽くしてきた令嬢です。王太子殿下の立場も国王陛下の御裁断も、私個人の行動で左右できる範囲ではないのです」
扇子を閉じ、静かに微笑む。
会議室には、私の理詰めの言葉が深く響いた。
エルヴィンは唇を噛み、俯いたまま動けない。
完全に赤っ恥をかき、議員たちの冷たい視線を浴びるしかなかった。
私は静かに一礼する。
「人を貶める者ほど、自らが赤っ恥をかく――その典型を、今日ここに示したまでですわ」
王都におけるザマァの連鎖は、また一つ、新たな犠牲者を刻んだ。
誰もが、アローナ・グランツの前では慢心できない――その事実を、今日もまた証明したのだ。
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