論破王、最終決戦
宮廷の広間は、いつになく重苦しい空気に包まれていた。普段は豪華な祝宴の場として人々が賑わう広間も、今は緊張で張り詰めていた。アローナ・グランツは中央に立ち、陰謀者たちを冷静に見渡す。老伯爵二人と若き野心家の貴族。いずれも経験と権力に自信を持ち、顔には余裕の笑みを浮かべている。しかしその笑みの裏には、微かに焦りが見え隠れしていた。
玉座に座る王の目が、広間全体を覆う静寂を切り裂くように動く。誰もが王の裁定を待っている。その静けさの中で、アローナは深く息をつき、手に握った証拠の書類をゆっくりと広げる。
「皆様、これらをご覧ください」
アローナの声は柔らかく、それでいて一語一語が重みを持って広間に響く。「書簡、財務記録、密談の証言……すべて、王政を私利私欲のために操作しようとした証拠です」
老伯爵の一人が言い訳をする。
「我々は、国のために行動したのだ……!」
アローナは微かに眉を上げ、冷静な声で返す。
「国のため? それならなぜ、すべてを秘密裏に行ったのですか。王国のために、民のためにという言葉で自己正当化を試みる者は多いですが、事実は裏切りと策謀に満ちています」
若い貴族は声を荒げる。
「君ごときが何を知るというのだ!」
「知っています」
アローナは一歩前に出て、書類を順に示す。「私は王都の空気を十年にわたり観察し、王族や民衆の動きを見続けてきました。あなた方の計画は、単なる自己顕示と利己の行為であり、秩序を破壊する愚行に過ぎません」
観衆の視線が陰謀者たちに注がれ、空気は凍りつく。老伯爵の顔は青ざめ、若き貴族は手の震えを抑えられない。
アローナはさらに踏み込み、論を述べる。
「皆様は力と富だけを信じ、他者の信頼や尊敬を軽視しました。真の権力は、人々の心を動かす誠意と正義の上に築かれるものです。陰謀は一時的な成果をもたらすかもしれません。しかし、それは必ず自らの破滅を招きます」
伯爵の一人が額に手をあて、絞り出すように言う。
「しかし……力は必要だ……国を守るためには……」
「力だけでは、真の秩序を維持できません」
アローナは冷静に指摘する。「財務の不正操作、密談の痕跡、政策への不正干渉……これらはすべて、民と国家を欺いた行為です。王国のためなどではなく、自己中心的な利得のために行ったのです」
若き貴族はついに声を荒げる。
「俺たちは……王家を守ろうとしただけだ!」
「守ろうとした? ならば、なぜ秘密裏に操作し、他者を操ろうとしたのですか。真の守護者は、恐怖や陰謀に頼らず、誠意と正当性で民を導きます」
「もうこれ以上話すことはありません。裁定を」
アローナは一歩下がり、書類を整えながら広間を見渡す。陰謀者たちの言い訳は完全に論破されていた。老伯爵たちは目を伏せ、若き貴族は額に汗を滲ませ、言葉が出ない。
玉座の王が静かに立ち上がる。王の声は低く重厚だが、明確に広間に響く。
「リヒャルト、クラウス、フェルディナント。お前ら陰謀者達の行いは、国家を危うくし、民を裏切った。ゆえに裁定を下す」
陰謀者たちは動揺し、顔面蒼白になる。
「ま、待て……王よ!これは……!」
「お、おい、やめろ!」
王は静かに手を挙げ、従者に合図する。
「従者たち、連れて行け。鉱山での強制労働とし、考えを改めよ」
従者たちは一歩ずつ進み、老伯爵二人と若き貴族に手をかける。彼らは無力さを露わにし、足元で石畳の音が響く。アローナは広間の端で静かにその様子を見守った。
陰謀者たちは従者に押されながら、玉座の間を出て、王宮の長い廊下を歩く。老伯爵は何度も言い訳を試みるが、声は震え、無力感に飲まれている。若き貴族は、鉱山送りという現実の重さに押し潰されそうになり、視線を床に落としている。
アローナは微笑みを浮かべ、夜風に髪をなびかせながら静かに告げた。
「さて……次は誰を論破しようかしら」
広間に戻った観衆は、アローナの知恵と冷静さに深く感嘆し、王国に秩序が取り戻されたことに安堵する。陰謀者たちは今後、鉱山で己の過ちと向き合うだろう。
アローナ・グランツの挑戦は一つの区切りを迎えた。しかし、その知略と論理は、まだ次なる戦いの準備を整えている――王都に平和を守り続けるために。
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