晴天緑国の物語
この物語のプロットなどはスイッチくん専用にチューニングした「文章クラフトモード(開発者版)」v1.53を、執筆はClaudeが行っています。
# 晴天緑国の物語
──外は真っ白に焼けるような"快晴"。雲ひとつない空が、あざ笑うように広がっている。
遠くで風鈴のような"胞子の落ちる音"がする。このジメジメでは、陰気くさいだけだが。
壁一面に這うのは、カビの花畑。
水すら不要になった今の時代、カビは空気中の湿度だけで繁殖する。剥がれかけた壁紙の中から、紫の斑点がじわじわと広がっている。
**ヨルハ・ガンジツ(主人公)**は、うつ伏せのままベッドで天井をにらんでいた。
ヨルハ(独白)
「朝から…晴れてるとか、ふざけんなよ……」
彼の頬に、胞子が一つ、ぽとりと落ちる。それを指で拭うと、皮膚にほんのり痒みが残る。
机の上、積まれたスケッチブック。
ページをめくると、そこに描かれているのは──雨。
まだ、この世界に存在しない水の夢。
ヨルハ「……水が、空から落ちる?……嘘くせぇ」
その時、カーテンの陰からフワッと光る何かが跳ねた。
フィゴ──話すキノコ型AI生命体が、今日もご機嫌だ。
フィゴ(甲高い声)
「おっはよヨルハァァ!今日もカビるほどいい天気だねぇ!!」
ヨルハは顔をしかめ、布団を被る。
「……お前の声の湿気が耳に残んだよ」
フィゴの頭のキノコ傘から、虹色に光る胞子がふわりと舞い、部屋中に漂う。
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## 第二章 カビの園
ヨルハが重い腰を上げると、アパートの廊下にも例の如くカビが這っていた。隣の部屋から聞こえる咳き込みの声。きっと胞子を吸い込んだのだろう。この国では、マスクをしていない人間など存在しない。
階段を下りながら、ヨルハは窓の外を見上げた。相変わらず空は青く、太陽は容赦なく照りつけている。だが、その光に反射して、街中の建物が緑色に光って見えた。全てがカビに覆われているからだ。
「クソ晴れが……」
街角の「カフェ・スポア」に足を向ける。店内は薄暗く、天井からは無数の胞子が舞い踊っている。常連客たちは皆、諦めたような表情でコーヒーを啜っている。
店主のオババ──年齢不詳の老婆が、カビの生えたエプロンを身につけながら声をかけた。
「よぉ、ヨルハ。今日も雨の絵を描いてるのかい?」
「……うるせぇ」
ヨルハは奥の席に座り込む。テーブルの表面には、薄っすらと白いカビが浮かんでいた。
オババが運んできたコーヒーカップにも、縁に小さな胞子が付着している。
「このカビ、実は美味いんだよ。ちょっと舐めてみな」
「遠慮しとく」
ヨルハはスケッチブックを広げ、またペンを走らせ始めた。描くのは、いつもの雨。雲から滴り落ちる水滴。この世界には存在しない、透明な奇跡。
その時、店のドアが勢いよく開かれた。
「ヨルハ!いたのね!」
振り返ると、そこには息を切らした少女が立っていた。**ミズキ・アマテラス**──ヨルハの幼馴染で、この国で唯一の気象学者を目指している変わり者だ。
「何だよ、騒がしいな」
「大発見よ!」ミズキは興奮して叫んだ。「ついに見つけたの!雨の秘密を!」
店内の客たちがざわめいた。雨──それは、この国では禁忌に近い言葉だった。
ミズキはヨルハの隣に座り込み、ボロボロの研究ノートを広げた。
「聞いて!昨夜、古い図書館で見つけたの。100年前の記録よ。この国にも、昔は雨が降っていたって!」
「馬鹿言うなよ」
「本当なの!でも、ある日突然、空から水が消えたの。代わりに湿度だけが残って……」
ミズキの目が輝いている。「そして、その原因も分かったの。国の中央にある『乾燥塔』よ。あれが空の水分を全部吸い取ってるの!」
ヨルハの手が止まった。乾燥塔──街の中心にそびえ立つ、巨大な白い建造物。政府は「湿度調整のため」と説明していたが、実際は逆だったのか。
「じゃあ、あの塔を止めれば……」
「雨が降るかもしれない!」
二人の会話を聞いていたオババが、心配そうに近づいてきた。
「おい、やめとけ。乾燥塔は政府の管轄だ。近づけば捕まっちまう」
「でも!」ミズキは立ち上がった。「このままじゃ、私たちはカビと一緒に腐っていくだけよ!」
ヨルハは絵を見つめた。雨粒が、紙の上で踊っている。
「……面白そうじゃん」
## 第三章 湿った反乱
その夜、ヨルハとミズキは街の中心部へ向かった。乾燥塔は月明かりに照らされ、不気味に白く光っている。周囲には警備員が巡回していたが、カビの生えた制服を着た彼らは、どこか間抜けに見えた。
「あそこよ」ミズキが指差す。「塔の最上階に制御装置があるはず」
二人は建物の陰に隠れながら、塔の裏口へ向かった。ドアノブはカビだらけで、触れると手にぬめりが付いた。
「気持ち悪……」
内部は予想以上に巨大だった。螺旋階段が延々と続き、壁は一面カビの絨毯に覆われている。歩くたびに、ぺちゃぺちゃと音が響いた。
「なぁ、ミズキ」
「何?」
「もし本当に雨が降ったら……俺たちは、どうなるんだろうな」
ミズキは振り返る。「きっと、生まれ変われるわよ。このジメジメした世界から、本当の青空の下で生きられるの」
階段を登りながら、ヨルハは自分の絵を思い出した。雨粒が頬を叩く感覚を、一度でいいから味わってみたい。
やがて、二人は塔の最上階に辿り着いた。そこには巨大な機械が鎮座していた。無数のパイプが天井に向かって伸び、空気を吸い込む音が響いている。
「これが……」
ミズキが制御パネルに手を伸ばした瞬間、背後から声がした。
「そこまでだ」
振り返ると、政府の役人らしき男が立っていた。彼のスーツも、当然カビまみれだった。
「君たちが何をしようとしているか、分かっているぞ」
「邪魔しないで!」ミズキが叫ぶ。「この国の人たちは、みんな苦しんでるのよ!」
「苦しんでいる?」男は冷笑した。「湿度98%の環境で、我々は完璧に適応している。雨など、混乱をもたらすだけだ」
ヨルハが前に出た。「テメェ、本当にそう思ってんのか?」
「当然だ。この国の秩序を守るのが、我々の使命だ」
その時、フィゴがどこからともなく現れた。
「ヨルハ!」甲高い声で叫ぶ。「みんな、下で待ってるよ!」
窓の外を見ると、街の人々が塔の周りに集まっていた。オババも、カフェの常連客たちも、皆が空を見上げている。
「諦めろ」役人が言った。「君たちに味方する者など……」
その時、群衆の中から声が上がった。
「雨を降らせろ!」
「もうカビは嫌だ!」
「本当の青空が見たい!」
役人の顔が青ざめた。
ミズキが制御パネルのスイッチに手をかける。
「みんなの願いよ。止めるのは無理よ」
彼女がレバーを引いた瞬間、機械が停止した。パイプから吸い込まれていた空気が、ゆっくりと逆流し始める。
## 第四章 空の奇跡
最初は、ほんの小さな変化だった。
空の端っこに、薄い雲が現れた。それは次第に大きくなり、広がり、厚みを増していく。
「来る……」ミズキが呟いた。
街の人々が一斉に空を見上げた。雲は暗さを増し、ついに最初の雨粒が落ちた。
一滴、二滴、三滴……
やがて、それは本格的な雨となった。
ヨルハの頬に、冷たい水滴が当たった。今まで感じたことのない、透明な感触。
「これが……雨……」
街中の人々が、雨に打たれながら歓声を上げた。カビまみれの服も、建物の壁も、雨によって少しずつ洗い流されていく。
「気持ちいい……」
ミズキが両手を広げ、雨を受け止めている。
「ヨルハ、私たちやったのよ!」
雨は激しさを増し、空気中の湿度を洗い流していく。カビの胞子も、雨粒に混じって地面に落ちていく。
役人は呆然と立ち尽くしていた。
「こんなはずでは……」
「オッサン」ヨルハが振り返る。「今どんな気分だ?」
役人は、自分の手を見つめた。雨に濡れた手の平が、初めて清潔に見えた。
「……気持ち、いいな」
彼も、ついに微笑んだ。
雨は一晩中降り続いた。朝が来ると、街は見違えるほど美しくなっていた。建物の壁は本来の色を取り戻し、空気は透明で爽やかだった。
ヨルハのアパートの部屋も、すっかり変わっていた。カビの花畑は消え、壁紙の本当の色が現れた。
「おっはよヨルハァァ!」
フィゴが跳ね回っている。だが、彼の体も雨に洗われて、以前より鮮やかな色になっていた。
「今日は、どんな絵を描くの?」
ヨルハはスケッチブックを手に取った。もう、雨の絵を描く必要はない。
窓の外を見ると、雲が晴れ始めていた。
## 第五章 新しい朝
数日後、ヨルハは「カフェ・スポア」を訪れた。店内は驚くほど明るく、オババも生き生きとしていた。
「よぉ、ヨルハ。今日は何を描いてるんだい?」
「これだよ」
ヨルハがスケッチブックを見せると、そこには街の風景が描かれていた。だが、以前とは全く違う。
青い空、白い雲、そして雨上がりの虹。
「綺麗だねぇ」オババが感心する。「本当に、この国も変わったもんだ」
ミズキが店に入ってきた。彼女は今、新しい気象観測所の設立準備に忙しい。
「ヨルハ!天気予報の準備、順調よ!」
「天気予報?」
「そう!明日は晴れ、明後日は雨、その次は曇り……素敵でしょ?」
ヨルハは笑った。変化のある毎日。それが、どれほど贅沢なことだったか。
「なぁ、ミズキ」
「何?」
「明日の天気、教えてくれよ」
ミズキは空を見上げた。「明日は……快晴よ。でも、良い快晴。湿度も50%くらいで、とても爽やか」
「そっか」
ヨルハは新しいページを開き、ペンを走らせ始めた。
今度描くのは、青い空だった。
カラッとした、本当の青空。
雲がふわりと浮かび、風が頬を撫でていく。
この国の名前も、そのうち変わるだろう。
**晴天爽快国**
そんな名前が、きっと似合う。
ヨルハは窓の外を見上げた。空は澄み切った青色で、雲が気持ちよさそうに漂っている。
湿度計は、快適な60%を示していた。
「……いい天気だ」
彼は心からそう思えた。
──空は青く、風は爽やかに、そして人々の心には希望が宿っていた。晴天緑国は、ついに本当の青空を手に入れたのである。
完
タイトルの原題は「晴天黴国の物語」でしたが、難解なので、修正しました。