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一条戻り橋  作者: yukko
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孝子

朝露が葉を煌めかせている瑞々しい季節。

朝の日差しが優しく御簾を通して部屋に入ってきている時間には、既に公達は宮中へ出仕するために屋敷を出ています。

公家の朝は早く、皇居の門が開かれる時間に門が開くときに太鼓が鳴るため、それを合図に公家は起床しています。

門が開くのは、丑四つ時(午前3時頃)。

出仕の為に家を出るのは、卯三つ時(午前6時頃)。

そして、卯四つ時(午前7時頃)から仕事を始めました。


このお話は、そんな平安の醍醐天皇の御代に生きた女性の話です。

彼女は藤原氏ではありましたが、大きな役職に就けるような身分ではない藤原氏に生まれました。

そして、彼女は自分の生家より、嫁いだ先の藤原氏より上の身分の藤原氏へ乳母として働きました。

働いている間の彼女の子ども達は、彼女より下の身分の女性が乳母になって育てたのです。



さぁ、ここから先は乳母の仕事から解放されて自宅に戻った彼女のことをお話します。

彼女の名は藤原孝子(よしこ)、夫の名は藤原公廉(きみやす)です。


「孝子、其方(そなた)は、もう何方にも仕えないのか?」

「公廉様、もう疲れました。

 残りの日々は貴方様と共に過ごしたいと願っております。」

「そうか……。」

「子らにも会えまする。」

「そうだな。」

「公廉様、お願いがございます。」

「うん。なんじゃ? 申してみよ。」

「はい。私……物語を書きとうございます。」

「物語とな!」

「はい。今まで見聞きしてきたことを元に書いてみたいのです。

 成りませぬか?」

「いいや、好きにすれば良い。

 ただ……其方は若い頃より書き物をしていると時のたつのを忘れる。

 夕餉を摂らぬようなことが無いようにせよ。」

「はい。」

「それから、書き物に夢中になって……顔を見れぬのは……困る。

 部屋からは出る時間を決めよ。」

「はい。そう致します。」

「ふむ。」


それからの孝子は部屋に籠って書いたのです。

夫は少し不満でした。

話す時間を取れないからです。

夫に通う女性が居たかどうかですか?

勿論! 居ました。

……と、申したいところでございますが、通うにも物入りで……妻が乳母で過ごしていた頃に一人だけおりましたが、その方とも疎遠になったのです。

ですから、今は妻の孝子一人です。


孝子は筆を走らせます。

どんなお話か……それは次の機会にお話しましょう。

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