レイニーコロシアム
最後に晴れたのはいつだろう。いつも私には雨が降っていた、みんなには降らない雨、私にだけ降る雨
前を向けない私への罰なのだろうか、人に合わせられない罰なのだろうか?誰もが私を見ようとせず私も誰も見ない。
いつも通りの校舎で私は何者でもない。
「一緒にゲームをしないか?」
今日もそんな話を周りはしている
「君だよ、無視は悲しいな」
後ろを見ると私に向かって話している男がいる。誰にでも優しく誰しもに愛される太陽のような男がそこに居た
「・・・・なぜ?」
何もかもがわからなかった、とっさに出た言葉ですら状況を把握するのに一杯だった
学年一の人気者と誰にも知られてない私の物語が始まった気がした。
雨は少し止んだようだ
私は彼についていくとそこには彼の友人が二人ほどいた
一人は大きな体形をし太っているが優しそうな男、もう一人は細身で背が高く目はきついが高潔さを感じさせるような男だ。
改めてなぜ私がこのような場にいるのか、そんな考えをしている暇もなく
「紹介するよ、彼が僕らの新たな仲間だ」
「お前には周りを振り回してる自覚はないのか?」
その言葉につい強く共感してしまった。
「びっくりさせてごめんね、僕は円堂 包見た目からもみんなからは丸って言われてるんだ。君は多分無理やり連れてこられたんだろうけど何て名前なの?」
「あ・・・k・・」
声が出ない、私はそこまで人とコミュニケーションをとるのが苦手だったのか
「緊張して声が出なくなってる、俺みたいなやつがいたら無理もねーか。俺の名前は」
「僕は光!結城 光そして彼は鳴神 宗次 (なるかみ そうじ)剣道の家出身で刀を持った時の彼はものすごくかっこいいんだよ!」
「人の言葉を遮るな、お前はいつも目立ちやがる。まぁいい話せないような奴を仲間に入れてまともにやれるのかこいつは」
「わかんない!僕の直感が彼って言ってた!」
「文句しかねーけどもうそろそろ始めるぞ」
私が話せない間に話がどんどんと進んでいく、なら私は必要ないのではないだろうか?ただの数合わせなのか簡単に呼べる人だと思われたのか?私の中で黒い思考がどんどん広がっていく。ああ、雨が降りはじめる
「大丈夫、君は必要だったから光に連れてこられたんだよ」
私が横を見ると包が私に傘を出していた。人に求められたのも、人にやさしくされたのも初めての経験だ。こんなことが起こるなら雨も悪くない
非対称型対人ゲーム「コロシアム」ーーー球場の筐体の中に入り、二つの陣営に分かれ一方は4人一組のチーム戦(戦士)、もう一方は個人戦(魔獣)で行われランダムに選ばれた戦場で与えられたスキルを駆使し互いを撃退する、現代において爆発的な人気を支持するゲームだ。
私たちは戦士側で豊富なキャラがある。どれを選べばいいか迷っている私に光は言った。
「君にはこのキャラなんてどうだい?大丈夫!僕は君を信じてるし君も僕を信じてくれ」
私はしぶしぶ光の選んでくれたキャラを選択する。
ゲームが始まった、明るい空に昔の古臭さを足したような人が居ないことを除けば完璧な町だ。
そんなことを考えていると、突如街の風景が赤に染まった。
竜が空を飛んでいる。全長3mほどの怪物、火を吐き鋭利な爪を持つ赤い竜
ただ竜は私を見ていない、視線の先には光がいた。そんな彼からのメッセージだ
「君は隠れてて、初めてでこんな化け物怖いよね!大丈夫!君の出番は必ず来るから」
なぜこんなにも明るく振舞っているかは分からないが、一つ理解した「隠れていろ」ならば隠れよう皮肉なことに私以上に上手い人はいないのだから。
場面は移り、3人は固まりながら攻撃を凌いでいる
「光、今わかっていることを整理するぞ」
「そうだね包!解析の結果を共有してもらえる?」
「相手は【赤竜】でスキルは”火球 斬撃 旋回 飛行 自然回復”と典型的な内容だね、悪い知らせに相手プレイヤーは現在【赤竜】の11位って事かな。対してこちらは相手の攻撃を防げる光の重戦士、リーチの短い宗次の剣士、僕の指揮者だね!相性最悪!!」
火の玉が飛んでくる、空から地上を焼き尽くすかのように降り注ぐ 空を飛び火を吐き、また移動しては火を吐く
傍から見れば状況は不利、光たちに勝ち目はない。「相性が悪かった、仕方がない」赤竜の勝ちを確信しているのは赤竜を除き「ただの一人もいなかった」
「バウンド・スーパーアーマーを重戦士に付与」
指揮者のスキルが発動すると同時に赤竜には重い影がかかる、火球で迎撃を始めるがもう遅い
重戦士と赤竜は地に堕ちる
燃え盛る大地に一筋の光が走る、その巨大な影に宗二の斬撃が降り注ぐ
「俺の剣は射程こそ短いが飛ばすことができるんだ。久々の試合相手にしちゃ楽勝だったな」
「ナイス!流石宗次!!」
包は宗次に駆け寄る。飛行種に対しての必勝パターン、空から堕とし地上で倒しきる、この連携で倒しきれるはずだったのだ。
竜の爪が宗次の体を切り裂いていた。
「油断したなぁ?赤竜は戦場が燃えていれば全てのステータスが上昇する!!ヒヤッとしたがアタッカーをやってあとはタンクとサポートのお前らだけだ!」
光の重戦士に有効打となり得るものはなく赤竜はゆっくりと追いつめるだけでいい、形勢は逆転していた。
「もう投降してくれよ、タンクに無駄な足搔きをされるの好きじゃねぇんだ」
赤竜の使用者から光達に伝えられるメッセージに二人は笑った。
「弱い者いじめは好きじゃねぇからやりたくねーけど仕方ないよなぁ?」
「ああ、仕方ないさ。油断したお前が悪いんだ」
致命の一撃が赤竜を貫く。そこには誰の視界にも入らず気にも留められない影があった。
「僕らのパーティーの暗殺者を君は見つけれなかった、だから君の負けだ」
何故?私が選ばれたのか。そんなことばかり考えていた、まず先にするべきことがあったのだ。
「光、ありがとう」
見つけてもらえた、それだけでよかったのだ。
晴れた空は美しいのだろう。




